■20th L'Anniversary Live
2011.05.28(SAT)、29(SUN) at 味の素スタジアム
(※画像11点)

「最後に虹が掛かります」―― 雨を“演出”に変えた、20周年記念ライヴ初日
20周年記念ライヴ【20th L'Anniversary Live】が東京 味の素スタジアムにて5月28日(土)、29(日)の2日間に渡って行われた。あいにくの雨にも関わらず、瞬時に完売した10万枚のチケットを手にしたファンの想いはやはり熱く、両日とも、カッパに身を包んだお客さんで座席はびっしりと埋め尽くされていた。


まず初日は、初期の懐かしい映像や写真のコラージュがスクリーンに映し出された後、鐘の音が鳴り響き始めた。すると、スタジアム後方から黒のハマーリムジン2台が出現。ステージ向かって右後方からはhydeとyukihiroが、左からはkenとtetsuyaが、大歓声の中レッドカーペットを練り歩き、前方のステージに向かう。特別なセレモニーが始まるような高揚感に包まれながら、メジャー1stアルバムの1曲目収録の「In the Air」でゆったりと幕開けた。

「今日の雨は、演出なんで。最後に虹が掛かるようになってます」とユーモラスに切り出したhydeは、インディーズから1998年(5thアルバム『HEART』まで)の曲を披露する、というこの日のコンセプトを改めて語り、「かなりコアな5万人が集まってるってことですよね? 隅々までマニアが見えます!」と煽った。10数年ぶりの披露となった「As if in a dream」、当時の映像を織り交ぜながら疾走感漲るバンドサウンドで魅せた「Dune」、そして説明不要の大ヒット曲「winter fall」、どの曲もイントロの一音目が鳴るだけでどよめき、歓声が沸き起こる。また、「winter fall」をyasu(Janne Da Arc)やDAIGO、マオ(シド)ら著名人が歌い繋ぐ豪華映像をブレイクで映し出す、といった遊び心を忘れないところもL'Arc~en~Cielらしい。

再びメンバーが登場し、透明なギターアルペジオがこの上なく美しい「ガラス玉」、幻惑的なメロディ展開と渾身の絶唱との対比がドラマティックな「fate」へと続けたシークエンスは圧倒的で、まるで呪文を掛けるように、抗いがたい耽美的な空気で会場を覆い尽くしていた。

「flower」「I'm so happy」といった若々しい生命力を感じさせる楽曲も織り交ぜ、ライヴは終盤へ向かった。全ての楽器が“全開”の音をぶつけ合う「Shout at the Devil」では、最後、一人残ったyukihiroが全身全霊を込めたドラムソロを披露し、稲光のように明滅するライトの中渾身の一撃を下し、去って行った。この圧巻の幕切れには呆然とし、鳥肌が立った。


サイリュームの色とりどりの光が揺らめく中、再び鳴り始めたピアノの旋律は至高のバラード「あなた」。ファンたちの清らかな合唱が重なって、まるで心が鎮められてゆくような神聖な場が生み出されていた。「White Feathers」は艶めいた音色を爪弾くkenのギターが曲の入り口をまずは立ち上げ、やがてその世界の奥深くへと誘ってゆく。ステージ上方から白い羽根が舞い降りてくる中、hydeは、優しいファルセットと雄々しい声と緩急の付いたヴォーカリゼイションで魅了した。

「今日は泣かずに済みそうやな、と。(でも、)車で出て来た時に、『あっ! 皆いる』と思ったらウルッと来ちゃった」と感動を伝えつつ、「古い曲をやってると、あまりにも暗くて後ろ向きでびっくりします(笑)。『夏の憂鬱[time to say good-bye]』とか、怖いもんな。『何あったん?』って」との感慨を語り、笑わせた。

また、この2日間の収益が全て義援金として被災地に送られる旨を改めてファンに報告、「止まない雨はない。最後に『虹』、聴いて下さい」と告げて歌い始めると、大写しになったhydeの瞳は潤み、煌めいていた。全22曲、約3時間のステージは、深い感動と充実感を残して幕を下ろし、2日目への期待をいやがおうにも高まらせた。

「未だに新しい発見がある」 ――20周年記念ライヴ2日目、踏み出した“次の一歩”
初日以上に強い雨に見舞われ、メンバーにも観客にも過酷な環境となった【20th L'Anniversary Live】公演2日目。
ステージに一番乗りで登場したyukihiroがリズミカルなイントロを刻み始めると、順にメンバーが合流。1曲目は「READY STEADY GO」で会場はもちろん狂喜乱舞、初日とは違いのっけからアップチューンで弾けるセットリストで、スタジアムはみるみるうちに熱気で覆われていった。

この日はアルバム『ark』『ray』~『KISS』の楽曲を中心に選ばれた曲を披露することが予め告知されていた。「成人式へようこそ。二十歳になりました」と挨拶したhydeは、このライヴが世界中の映画館に生中継されていることを告げ、掛けていたサングラスを持ち上げて「ハロー、アンニョンハセヨ、ボンジュール、ニーハオ、コンニチハ」と世界へ語り掛けた。

「HEAVEN'S DRIVE」では、小気味よいギターカッティングと、高低を激しく自在に行き来するtetsuyaのベースラインが絡み合い、しなるようなうねりを生み出してゆく。異国情緒漂う「ALONE EN LA VIDA」では郷愁と孤独を滲ませながら空気をしっとりと塗り替えて、大写しになったhydeの瞼が閉じてはまた開く、その一連の様子すら、異空間へ誘う演出として機能していた。

続く「叙情詩」はサビの独唱から、という意表を突くスタートで圧倒的な表現力を浮き彫りにしたし、声と声の間に響いていた雨音は、じっと聴き入っている会場の静けさを際立たせていた。打って変わって、瑞々しい息吹を感じさせるような新緑の映像が流れると、「NEO UNIVERSE」で快活なムードに転じる。メンバーも表情をほころばせ、心からのこの時間を楽しんでいる様子が伝わって来た。

折り返し地点を過ぎ、不朽の麗しいメロディで陶酔させた「花葬」、強靭なバンドアンサンブルで圧倒し、ダークなライティングと炎の演出が効果的に映えた「浸食-lose control-」、そして、初日に続き豪華キャストがリレーで歌う演出で映像化された「HONEY」を挟んで、本人たちが登場し同曲「HONEY」を披露するという展開で盛り上げた。1998年に同時リリースされた上記3曲に代表されるように(もちろん、単純に3パターンに分けられるわけでは決してないが)、比類なき叙情性を宿す繊細な楽曲、耽美性とハードさとが融合した幻惑的な楽曲、疾走感と躍動感が文句なく痛快な楽曲、どのタイプにもL'Arc~en~Cielにしかない魅力の刻印があり、こうしてキャリアを一望できるセットリストだと、その楽曲群の多彩さ、バリエーションの豊かさに改めて感嘆させられた。


リズムに乗って繰り広げられたユニークで茶目っ気のあるkenのMCから「SEVENTH HEAVEN」になだれ込み、花火も打ち上げられて、会場のボルテージは高まるばかり。「STAY AWAY」ではhydeがtetsuyaの肩を抱き寄せて歌い・歌わせる場面では大歓声が起き、その熱はピークに達した。tetsuyaはMCで、「明日5月30日は二十歳の誕生日。1991年の5月30日に初めて(L'Arc~en~Cielが)ライヴをやったんですよ」と明かし、このライヴの意味を改めて噛みしめていた。

圧巻の広音域を豊かに響かせた「瞳の住人」で一度ステージを後にし、再びスタジアム後方にメンバーが白のハマーリムジンで登場。傘を手にレッドカーペットを進み、ステージに上った。スクリーンには「ありがとう 我々は新たな未来へ向かいます 次への一歩を踏み出します 共に乗り越えよう これからも一緒 I Love You」(一部を抜粋)というメッセージが映し出され、マーチ風のドラム音が鳴り始めて、奏でられたのは「forbidden lover」。歌詞とリンクして“燃え上がる炎”がその姿に重なって映し出される中、hydeの瞳からは、一滴の涙がこぼれ、頬を伝う。それは、残像がいつまでも脳裏から離れないような、美しい情景だった。

kenの真骨頂である歌心溢れるギターソロでスタートした「MY HEART DRAWS A DREAM」では再び開放的なムードへ変わり、大合唱が起きた。雨は弱まるどころか激しさを増していたが、濡れることを厭わず積極的に花道へ歩み出し、客席へと身を乗り出すメンバーたちの姿にも胸を打たれる。hydeは改めて20年を振り返り、「長かったようで短かったような…やっぱり長かったと思うんだけど、未だに新しい発見がある」「20年経っても楽しいライヴっていうのはできるんだな、と思いました」と語り、「皆口下手なので、演奏で気持ちを伝えます」と告げた後、「BLESS」を披露。
紙吹雪が舞い散る中、壮大なスケール感と未来へ繋がる光を感じさせて、記念すべき夜の幕を閉じた。

お互いに似たところはなく、むしろ掛け離れた強烈な個性を持つ4人がL'Arc~en~Cielという多面体として音を重ねた時、奇跡的に美しい調和が生まれ、強い吸引力を持つ唯一無二の世界が立ち上がる。メンバー全員がL'Arc~en~Cielに誇りを持ち、美学と熱量を高いレベルで維持しながら進み続けているからこそ、その特別な世界に私たちは魅了され、圧倒されるのだろう。

終演後の会場では、9月10日(土)のさいたまスーパーアリーナ公演を皮切りに【20th L'Anniversary Tour】がスタートすること、また、2012年にはWorld Tourも決定したことが発表された。L'Arc~en~Cielが進む新たな航路は、ますます眩しく光り輝いたものとなる――そう確信した2日間だった。
(取材・文/大前多恵)

≪セットリスト≫
●5月28日(土)
1. In the Air
2. Caress of Venus
3. Vivid Colors
4. the Fourth Avenue Caf(e)
5. 夏の憂鬱[time to say good-bye]
6. 風の行方
7. As if in a dream
8. Dune
9. winter fall
10. ガラス玉
11. fate
12. Floods of tears
13. Blurry Eyes
14. Lies and Truth
15. flower
16. I'm so happy
17. Shout at the Devil
18. あなた
19. milky way
20. Voice
21. White Feathers
22. 虹
●5月29日(日)
1. READY STEADY GO
2. Pretty girl
3. NEXUS 4
4. HEAVEN'S DRIVE
5. LOVE FLIES
6. snow drop
7. ALONE EN LA VIDA
8. 叙情詩
9. NEO UNIVERSE
10. Driver's High
11. REVELATION
12. DRINK IT DOWN
13. 花葬
14. 浸食-lose control-
15. HONEY
16. SEVENTH HEAVEN
17. STAY AWAY
18. Link
19. 瞳の住人
20. forbidden lover
21. MY HEART DRAWS A DREAM
22. GOOD LUCK MY WAY
23. BLESS

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