2011.02.23(WED) at 神奈川県民ホール
(※画像8点)
ついさっき一緒に再登場したバンド・メンバーは、なんと全員が会場の客席通路に立ち、お客さんと一緒に舞台を見つめている。その上では秦 基博だけがひとり、「鱗(うろこ)」を唄っていた。
3時間にも及ぶトータル23曲は、バンドとともに音を出す秦の喜びがあふれているかのようであった。なにしろ彼はこの1年半ほどを最新アルバム『Documentary』の制作~録音とこのツアーに費やしてきたのだ。その曲作りからサウンド面、さらに秦の精神的な支えとしてずっとタッグを組んできたのが、先述の久保田。ムードメーカーといえるキーボードの伊東ミキオは、アルバムではかせきさいだぁが担っていた「猿みたいにキスをする」でのラッパー役も見事に務めた。ドラムは的確なリズム・キープを聴かせる矢野博康。ベースの松田“FIRE”卓己はルックスともどもファンキーな低音が最高だ。そう、ふくよかなファンキー感を持つこのバンドは、秦の音楽の裾野を一気に拡大する役割を果たしている。鳴りものがにぎやかだった「Selva」あたりはその好例である。
とはいえ、今夜のライヴではこちらが緊張した一瞬もあった。後半、「ドキュメンタリー」での秦は声を出しきることができず、会場全体が固唾を呑んだのだ。考えてみれば前日も長丁場を唄っていて、そこで迎えたツアーの楽日だけに、ノドのスタミナも厳しい局面だったのではないか。しかしそれは杞憂に終わった。直後の本編ラスト「朝が来る前に」をしっかりと唄い終えた彼は、そのままアンコールにもたくましく臨み、見事に唄いきったのだ。デビューから4年半を迎えようとしている現在の秦には、ヴォーカリストとしての苦境を乗り越えるだけの底力がついていたのである。
すべて唄い終え、メンバーが消えたあと、手を挙げて去っていった秦。こんなにまで歌と音が濃密に一体になった日々を過ごした今、彼は何を思い、考えているのだろう? 満員だったお客さんが吐き出される会場出口で、頭の中で「今日もきっと」の<今日もきっと 探し続けていく 今を 明日を ずっと信じているから>というフレーズを巡らせながら、僕は帰路についた。
(取材・文/青木 優)
≪セットリスト≫
1. 今日もきっと
2. SEA
3. Halation
4. 29番線
5. 青い蝶
6. Selva
7. 風景
8. 猿みたいにキスをする
9. dot
10. アゼリアと放課後
11. 虹が消えた日
12. oppo
13. パレードパレード
14. 夜が明ける
15. 透明だった世界
16. キミ、メグル、ボク
17. アイ
18. ドキュメンタリー
19. 朝が来る前に
<ENCORE>
1. My Sole, My Soul
2. 花咲きポプラ
3. メトロ・フィルム
4. 鱗(うろこ)
≪関連リンク≫
エキサイトミュージック レポート掲載記事一覧
excite music official Twitter
excite music official Facebook
excite music official YouTube channel