この世で起こる不可解な出来事は、すべて妖怪のしわざ……でおなじみ、アニメ『妖怪ウォッチ』。「セカンド・シーズン的な展開」がアナウンスされ、2015年7月10日から放送が始まった。

「妖怪ウォッチ」セカンド・シーズンに正直不安だらけ
『妖怪ウォッチ DVD BOX3』(KADOKAWA メディアファクトリー)
2015年9月25日 発売

これまでのメインキャラクターである凡人小学生「ケータ」、ネコの地縛霊「ジバニャン」、ケータに常に帯同する妖怪執事「ウィスパー」らの出番が減る?と目されていたわけだが、それから2ケ月ほど経過した現在どうなっているのか。

新キャラ「未空イナホ」「USAピョン」


ケータらとメインの役割を二分することとなったのは、オタク気質で少々周りから浮いた小学生「未空(みそら)イナホ」と、宇宙服を着たウサギのような姿の妖怪「USA(うさ)ピョン」。

USAピョンは、宇宙工学の第一人者・ヒューリー博士に飼われていた動物だったが、宇宙船の事故で死亡、妖怪になる。その失敗から完全に意欲を無くした博士のために、自ら宇宙船を作り、かつての意欲を取り戻してもらうことがその目的だ。

USAピョンの宇宙船というのが、妖怪版デアゴスティーニ的な代物で、送られてくるパーツを組み立てていくのだが、それを稼働させるのに妖怪の力が必要となる。そんなわけで、イナホは妖怪ウォッチを手に、妖怪探しに奔走することになるーー。

というわけで、ストーリーやオープニングを見る限り、セカンド・シーズンのテーマは「宇宙」のようである(ゲームも連動しているのかもしれないが、そっちはまったくやったことないので分からない)。



例えば、言葉遣い。USAピョンは、怒ると宇宙服の顔部分が黒くなる「ベイダーモード」に入る(言うまでもなく、「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーが元ネタ)。そして、「テメー!」と叫びながらイナホを追い回すのだが、回を進めてある程度関係性ができてからならいざ知らず、いきなり「テメー!」はなくないか。とぼけた風貌のウサギが豹変して暴れるところに面白みがあるのかもしれないが、こうしたギャップが、どうにも悪い方に転んでいるように感じられるのだ。真面目そうなルックスの子が不良役を演じた時に感じる「無理している感」とでも言おうか。

「ともだち妖怪」から「お助け妖怪」へ


今後、2人の間に関係性ができてくれば、こうした違和感は払拭されるかもしれない。しかし、一緒にテレビを見たりおやつを食べたりと、ケータ・ジバニャン・ウィスパーの関係がゆるく日常をベースにしているのに対して、イナホ・USAピョンは、現状では「宇宙船完成まで」という期間限定の、言うなれば非日常な関係にある。また、イナホのディスコミュニケーションなキャラ設定からも、ケータらほど関係が深まりそうな気がせず、不安だ。

考えてみれば、ケータが妖怪と「友達になる」のに対して、イナホはUSAピョンを助けるために、妖怪に「助けを求める」だけで、特に友達になるという手順は踏まない。イナホ・USAピョンパートに上滑り感があるのは、これまであった「妖怪と友達になる」という大前提が弱まったことに起因しているのではないだろうか。

先に「マンネリにさせるものか、という制作側の攻めの姿勢には敬意を表する」と書いたが、友達関係というものは長く続けば当然マンネリにもなるわけで、「友達」が重要なファクターである『妖怪ウォッチ』という作品においては、むしろそこから先が問われるように思える。

とはいえ予想外だったのが、出番が大幅に少なくなると思われたケータらが、意外とこれまでと変わらず出続けていて、イナホたちのエピソードがワンコーナー的な扱いになっていることだ。
以前から「コマさん」や「じんめん犬」などの妖怪をメインに据えたコーナーはあったわけで、これなら別にこれまでと一緒だ。安心するやら拍子抜けするやら、である。

もっとも、遠からずUSAピョンのロケットは完成することになるはずなので(1回で20%ずつ仕上がっていく。8月21日放送、83話の時点で60%完成済み)、問題はそこからの展開だ。だいたいケータとイナホのまともな接触もこれからだし、年末に公開される『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』との絡みもある。

不安は尽きぬが、これからに期待したい。
(辻本力)