山崎まさよしのデビュー20周年を記念し、山崎まさよしを全面フィーチャーした今年のオーガスタキャンプ。杏子、COIL(岡本定義)、あらきゆうこ、元ちとせ、スキマスイッチ、長澤知之、秦 基博、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、竹原ピストルといった個性際立つアーティストが出演。
山崎が他の出演アーティストを順に呼び込み自らの名曲をセッションする第一部、各アーティストのステージに山崎まさよしがギターはもちろん、ドラムやハーモニカで参加する第二部、そしておなじみの山崎のスリーピースバンドによる第三部という三部構成で行われ、15,000人の観衆が山崎まさよしのデビュー20周年を祝福した。

前日の雨も上がり、熱気を帯びる横浜赤レンガパーク野外特設ステージ。定刻の14時、ステージ両側のビジョンに映し出されたのはギターケースを片手に横浜の街を歩く山崎まさよし。20年前、住んでいた桜木町界隈をまわり、今日の会場である赤レンガ倉庫にたどり着く。

そして、まるでそのムービーから飛び出してきたかのような演出で、同じシャツを着てギターケースを持って山崎まさよしがステージに登場。ギターケースからおもむろにアコースティックギターを取り出し、爪弾いて始まったイントロで早くも客席から拍手が湧く。なんと一曲目は1999年、主演ドラマ『奇跡の人』の主題歌として大ヒットした「僕はここにいる」でスタート。秋めいた横浜の空へ、山崎の声とギターの音色が気持ちよくとけていく。

「どうも、山崎まさよしです。オーガスタキャンプへ、ようこそ」といつも通りに気負わないあいさつに続いてさっそく最初のアーティスト浜端ヨウヘイを呼び込み、ギターを彼に任せると山崎はジャンベを叩きハーモニカを吹きながら「六月の手紙」を披露。続いて浜端と入れ替わりに登場した長澤知之のエレキギターと山崎のアコースティックギターで「妖精といた夏」をセッション。竹原ピストルとの「ア・リ・ガ・ト」では山崎がピアノ、竹原がギターで弾き語る。
アイコンタクトをとりながらの弾き語りからは、山崎と彼らがお互いにリスペクトしあっていることが伝わってくる。

続いて、ベースを持ったCOILの岡本定義が登場、敬愛する名ギタリスト・西慎嗣がドラムをたたき「花火」を歌いあげた。次々に披露される新旧の名曲に観客はステージに釘付けだ。二人と入れ違いに、秦 基博がやってくると、山崎はそのままピアノで「ツバメ」をセッション。

このバラードの後に、秦に呼び込まれたスキマスイッチの常田はなんとギターを持って山崎まさよしのコスプレで登場。山崎も知らなかったようでこれには大爆笑。「衣装も本物を借りて、眉毛も描いたのに、どうしても似ないんです!」と客席からも爆笑を誘ったのちに、ギターをメロディオンに持ち替えて三人で「セロリ」を披露。ラップの部分は山崎と大橋卓弥が息の合ったハーモニーを披露し、会場をひときわ湧かせた。

拍手のなかをスキマスイッチが去って、エレキギターに持ち替えた山崎が呼び込んだのは、さかいゆう。山崎まさよしのライブでは定番のファンクナンバー「Fat Mama」をいつも以上にファンキーにアレンジしてセッション。オーディエンスは手拍子しながら体を左右に揺らす。

この曲が終わると、山崎の「でてこいや!」を合図にオフィスオーガスタのアーティストが全員登場。
今日はこれが初登場となる女性陣の杏子、あらきゆうこ、元ちとせの3人を山崎が紹介。山崎が「オーガスタって、みんなでこうやってオーガスタバンドができるでしょ? だからこの曲を第一部の最後に、やりたいと思って」と曲紹介し、全員で「Let's form a R&R band」をセッション。曲名の通り、オーガスタ所属アーティストだけで結成されたロックンロールバンドが、音楽はこんなに楽しいというメッセージを体現するステージだ。早くもイベントは最初のクライマックスを迎えた。

休憩の後、杏子が登場し「二部が始まります!」と宣言。ステージにハウスバンドのメンバーを順番に呼び込む。そして、なんと「オン・ドラムス! 山崎まさよし! でてこいや!!」と本日の主役を呼び込み。あらきゆうことのツインドラムに、エレキギターには長澤知之を迎え、長澤が杏子に書きおろした「ねぇ、もっと」を妖艶に歌いあげた。杏子は、長澤と入れ替わりにさかいゆうを呼ぶと来週9月30日に発売される新曲ダンスナンバー「Flamingo Rose」で一気に赤レンガパーク特設野外会場をダンスホールにしてしまう。ドラマー、山崎まさよし、これもオーガスタキャンプならではだ。

そのままステージに残ったのは、キーボードのさかいゆうと、山崎まさよし。山崎まさよしはエレキギターに持ち替え、スティービー・ワンダーの「Superstition」をカバー。
ファンキーにうねるバンドのグルーヴで会場を巻き込む。続けて山崎がレコーディングにも参加したさかいゆうの「僕たちの不確かな前途」をセッション。エレキギター・ソロでは、山崎まさよしのマルチプレーヤーぶりが光る。さかいは「山崎まさよし!」とシャウトで送り出すと、10月21日にリリースする新曲バラード「ジャスミン」を披露。オーディエンスはその甘い声にぐっと引き込まれているようだった。

セットチェンジをはさみ、COILの岡本定義と山崎が肩を組んで登場。山崎と岡本、二人がリスペクトしそのトリビュート盤にもユニット“さだまさよし”として参加している仲井戸“CHABO”麗市の「ホームタウン」をカバー。続けてCOILの名バラード「バス待ち」、そして盟友・ギターの西慎嗣を呼び込み、山崎は再びドラムセットに座り、ジャムセッションから西の「Sunset Blues」になだれ込む。山崎まさよしのルーツ・ミュージックの一つであるブルースを堪能できる一幕だった。

ここでもう一度短いセットチェンジを経て、ドラマーのあらきゆうこが登場。あらきのボーカル、山崎、COIL岡本定義で「Sonnet #9」と「Train run」を演奏。ディープな世界から明るい世界へとまるで旅をしているような感覚を味わえる。


バンドメンバーがステージに戻ると、青い衣装に身を包んだ元ちとせが登場。7月にリリースして話題になっているカバーアルバム『平和元年』から、1967年ベトナム戦争時にアメリカでピート・シーガーが発表した反戦歌を中川五郎が日本語に訳した「腰まで泥まみれ~Waist Deep In The Big Muddy~」の熱唱で客席を圧倒する。続いて山崎まさよしを呼び込むと、ビートルズのカバー「We Can Work It Out」、山崎まさよしの初期の名曲であり、元ちとせもデビュー前からカバーしてきた「名前のない鳥」をセッション。ノスタルジックなメロディーは秋が訪れた横浜の空気にマッチして奇跡のような瞬間を作り出す。

次に登場した長澤知之とはビートルズの「Lucy In The Sky With Diamonds」をセッション。二人のエレキギターで、暮れゆく野外会場の空気をがらりとサイケデリックに染めた。続いての浜端ヨウヘイとは、彼がデビュー前に山崎の全国ツアーにオープニングアクトとして帯同していた師弟関係。浜端の「大男のブルース」「MUSIC!!」と2曲続けて息の合ったセッションをみせた。

セットチェンジを挟み、すっかり日が暮れたステージに登場したのは山崎まさよしと、秦 基博。二人きり、アコースティックギターの弾き語りと美しいハーモニーできかせたのは秦の代表曲「アイ」。そして二人ともがエレキギターに持ち替え、バンドを再び呼び込んで秦のポップナンバー「FaFaFa」を披露した後は、山崎をいったん送り出す。

「山崎まさよしというシンガー・ソングライターは、常に僕の遠い先にいて、同じようにはできないけれど、僕なりのやり方で目指したいと思わせてくれる存在です。
その偉大な先輩がすぐそばにいて、そして同じステージに立つことができて、とても幸せです」と語った秦がソロで歌ったのは昨年夏の発売から一年以上ロングヒットを続ける「ひまわりの約束」。客席からは感動の溜息とさざ波のような拍手が湧きおこった。

続いての登場はスキマスイッチ。大ヒットナンバーの「ガラナ」に山崎まさよしがエレキギターで参加。大橋卓弥が客席をあおり一気に盛り上げた。スキマスイッチの二人が、オーガスタ所属前に大橋が山崎まさよしのライブビデオを実際に擦り切れるくらい見ていたほどのファンだったエピソードと、そこから始まって今日山崎の20周年記念ライブに立ち会えている幸せを語ると、照れた山崎が「曲にいこう!」と促す。ここではスティングの名曲「Englishman In New York」をセッション。稀代のボーカリスト二人の美しいハーモニーと、ブルージーに絡む常田のメロディオンが客席を魅了する。そして山崎を送り出したあとスキマスイッチが披露したバラード「マリンスノウ」は夜の横浜の海に切なく響いた。

第二部のラストに登場したのは、竹原ピストル。登場するなり、13年前の山崎とのエピソードや感謝の気持ちをつづった手紙を、力を込めて朗読。そして「まるで自分の曲のように愛着を持って歌っている曲です」と紹介すると山崎のピアノに乗せて「未完成」を熱唱した。


3時間以上に及んだ第二部、山崎まさよしは第一部も含め、ここまで代名詞のアコースティックギターはもちろん、ガッドギター、エレキギター、ハーモニカ、ピアノ、ドラム、ジャンベにパンディエロと、実に多彩な楽器を演奏してミュージシャンとしての実力を余すところなく発揮している。記念のライブにおいて自身の代表曲を歌うだけではすませないところが、山崎まさよしというミュージシャンのすごいところだ。

海風が涼しい19時35分。いよいよ第三部が始まる。ここからは山崎まさよしがいつも全国ツアーをともにまわっているベース/中村キタローとドラム/江川ゲンタとのトリオ・バンドによるステージ。アッパーなロックチューン「アドレナリン」からスタートし、「アレルギーの特効薬」で恒例のコール&レスポンに続いては、「晴男」。ブレイクでの万感の「ありがとう!」に客席も両手を挙げて応える。

スピーディーなロックチューン「ガムシャラ バタフライ」、早口言葉で客席をあおる「パンを焼く」、疾走感あふれる「ド ミ ノ」、温かいメッセージソング「Flowers」と、ライブ後半の定番曲をMCも挟まずにたたみかける贅沢なラインナップで、また客席をヒートアップさせていく。様々なジャンルを行ったり来たりするのも山崎らしい。

ここで初めて「ありがとうございます。こんなに祝ってもらえるとは思っていませんでした。続けてこられたのはファンの皆さんのおかげです。オーガスタキャンプも17年目、こんなに続くとは思っていませんでした」と話し、バラード「振り向かない」。続くイントロは代表曲の「One more time, One more chance」。山崎の知名度を一気にひろめたこの曲は、山崎にとってだけでなく今日、ここにいるファンにとってもとても大切な曲だろう。舞台となっている横浜で、いつも以上にサビのリフレインに力がこもって、聴く者の胸に突き刺さってくるような特別なパフォーマンスだった。鳴りやまない拍手の中、最後はデビュー曲「月明かりに照らされて」。「天才よりも凄いヤツ」というキャッチコピーでデビューした山崎まさよしの真骨頂を見た。

アンコールの拍手が鳴りやまぬ中、山崎まさよしに続いて、本日の出演者全員が登場。オーガスタキャンプ恒例のオールスターセッションが始まる。まずは23日にリリースしたばかりのシングル「21世紀マン」を披露。オーガスタの仲間はコーラスで盛り上げる。そして今年、オーガスタファミリーが参加して新たにレコーディングもされた「根無し草ラプソディー 2015」は皆でリードボーカルを歌い継ぎ、ネタポイントではガヤを入れたり、ソロ回しで盛り上げる。

そして杏子が第二部のハウスバンドのメンバーとオープニングアクトのアーティストも呼び込み最後の曲が始まったところで、花束贈呈のサプライズ! 「ありがとう! これからも歌っていきます!」という宣言を受けて、改めて1999年のオーガスタキャンプから歌い継がれてきた定番曲「星のかけらを探しに行こう Again」を演奏。この曲のコール&レスポンスでいよいよこの記念ライブもフィナーレ。山崎まさよしをフィーチャーしたオーガスタキャンプは幕を閉じた。

≪セットリスト≫
■Opening Act
○シンバシ
M1. 港のキリン
M2. ワケアリ・ブッケン
M3. 北品川ひとりきり

○松室政哉
M1. モノローグ
M2. オレンジ
M3. Happy Prime Day

○NakamuraEmi
M1. YAMABIKO
M2. 台風18号
M3. 使命

■第一部
○山崎まさよし
M1. 僕はここにいる
M2. 六月の手紙 with 浜端ヨウヘイ
M3. 妖精といた夏 with 長澤知之
M4. ア・リ・ガ・ト with 竹原ピストル
M5. 花火 with COIL
M6. ツバメ with 秦 基博
M7. セロリ with スキマスイッチ
M8. Fat Mama with さかいゆう
M9. Let's form a R&R band with ALL CAST

■第二部
○杏子
M10. ねぇ、もっと with 山崎まさよし / COIL / あらきゆうこ / 長澤知之
M11. Flamingo Rose ※新曲 with 山崎まさよし / COIL / あらきゆうこ / さかいゆう

○さかいゆう
M12. Superstition (オリジナル:Stevie Wonder) with 山崎まさよし
M13. 僕たちの不確かな前途 with 山崎まさよし
M14. ジャスミン ※新曲

○COIL
M15. ホームタウン(オリジナル:仲井戸“CHABO”麗市) with 山崎まさよし
M16. バス待ち with 山崎まさよし
M17. Sunset Blues(オリジナル:西 慎嗣) with 山崎まさよし

○あらきゆうこ
M18. Sonnet♯9(オリジナル:杏子) with 山崎まさよし / COIL
M19. Train run with 山崎まさよし / COIL

○元ちとせ
M20. 腰まで泥まみれ~Waist Deep In The Big Muddy~
(オリジナル:Pete Seeger/日本語詞:中川五郎)
M21. We Can Work It Out (オリジナル:The Beatles) with 山崎まさよし
M22. 名前のない鳥 with 山崎まさよし

○長澤知之
M23. Lucy In The Sky With Diamonds (オリジナル:The Beatles) with 山崎まさよし
浜端ヨウヘイ
M24. 大男のブルース with 山崎まさよし
M25. MUSIC!! with 山崎まさよし

○秦 基博
M26. アイwith 山崎まさよし
M27. FaFaFa with 山崎まさよし / あらきゆうこ
M28. ひまわりの約束 with あらきゆうこ

○スキマスイッチ
M29. ガラナwith 山崎まさよし
M30. Englishman In New York (オリジナル:Sting) with 山崎まさよし
M31. マリンスノウ

○竹原ピストル
M32. 未完成 with 山崎まさよし

≪第三部≫
○山崎まさよし
M33. アドレナリン
M34. アレルギーの特効薬
M35. 晴男
M36. ガムシャラ バタフライ
M37. パンを焼く
M38. ド ミ ノ
M39. Flowers
M40. 振り向かない
M41. One more time, One more chance
M42. 月明かりに照らされて

■All Star Session
M43. 21世紀マン
M44. 根無し草ラプソディー 2015
M45. 星のかけらを探しに行こう Again

■YAMAZAKI MASAYOSHI in Augusta Camp 2015“20th Anniversary” オフィシャルサイト
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