今週末には日本シリーズが始まるが、各球団では来季に向けて指導陣の交代などがぼちぼち進められている。きのうは巨人の原辰徳監督の退任が正式に発表され、横浜DeNAは中畑清監督に代わりラミレスが新監督に就任することになった。


わが中日ドラゴンズも昨日、谷繁元信監督が白井文吾オーナーにシーズン終了の報告を行なった。その冒頭、谷繁監督から成績不振をわびる発言があったとか(「日刊スポーツ」10月19日付
中日ドラゴンズの悲壮感あるある。だがまったく希望がないわけではない
『中日ドラゴンズあるある3』(大山くまお著・河合じゅんじ画、TOブックス)。巻末にはドラゴンズOBの小田幸平のインタビューを収録、谷繁監督や山本昌の裏話も色々と明かされている

今季のセリーグは混セといわれるほど各チームの順位が乱高下したが、ドラゴンズはそこからいつのまにか離脱、結局5位に終わった。一昨年と昨年は4位と、3年連続のBクラスはじつに45年ぶりらしい。45年前のドラゴンズといえば、水原茂監督の時代だ。当時の人気マンガ『巨人の星』で、星一徹コーチが米メジャーリーグの強打者オズマを招聘し、巨人のエースである息子・飛雄馬を打倒しようとしていたころだから、そうとうな昔である。逆にいえば、これほど長きにわたって成績が低迷することは、いままでドラゴンズにはあまりなかったというわけだが。

チーム低迷の時期だからこそ「あるある」を!?


さて、ここへ来て『ドラゴンズあるある3』(大山くまお著・河合じゅんじ画)という本が出た。これは2013年1月に出たパート1、同年8月に出たパート2に続く第3弾である。チームがこんな状態なのによく出たなと思う一方で、こんな時期だからこそ「あるある」で現実を見つめ、来季へつなげようという著者の心意気も感じた。

思い返せば、今回の『あるある3』が出るまでにはさまざまなことがあった。『あるある2』のカバーには笑顔の谷繁のイラストが使われていたが、その谷繁は昨シーズンより兼任監督を務めてきた。それも今季をもって現役を引退、来シーズンは監督に専念することになる。本書には《立浪監督はアリかナシか、ファンの間でもいまだに議論中》との「あるある」が出てくるが、谷繁監督が長期政権となるか、それとも“ミスタードラゴンズ”立浪和義監督が満を持して誕生するのか、それもひとえに来シーズンの成績しだいだろう。


さすがに低迷の真っ只中に出た本だけに、初っ端から《「勝った!」と思ったら、負けている》と悲壮感ただよう「あるある」が登場する。だが、まったく希望がないわけではない。《まさかこんなに若返るとは思わなかった》という「あるある」には、多くのファンがうなずくことだろう。

当該のページでは《26歳の亀澤、遠藤、24歳の杉山らがスタメンに名を連ね、20歳の若松もマウンドで躍動! 21歳の高橋周平も頑張れ!》と若手の台頭が強調されていたが、今シーズンの終わりがけには和田一浩、小笠原道大、そして山本昌とベテランがあいついで引退を表明して、チーム内の世代交代をさらに印象づけた。

ペナントレースは終わったけど、日本シリーズでのあの人の活躍に期待!


正直に言えば、後半の失速ぶりにここしばらくドラゴンズの試合をほとんどチェックしていなかった(山本昌が最終登板した広島戦はさすがにラジオで聴いたけど)。そんな私のようなファンからすると、本書は若手の情報などもきっちりおさえられているのでありがたい。来季を展望するうえでも参考になりそうだ。

9月発売の本書には《このまま最下位で終わるのは絶対にイヤだ》という「あるある」もあった。はたしてペナントレースが終わってみれば、何とか最下位はまぬがれたわけだが。ちなみに前回の3年連続Bクラスのあとの71年には、前出の水原監督が引き続き指揮をとり2位にまで浮上している。この先例を踏襲して、来年こそはAクラスに復帰し、最後まで優勝を争いたい! とはファンの誰もが思っていることだろう。

今週土曜には福岡ソフトバンクと東京ヤクルトによる日本シリーズが開幕する。
パリーグのクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージ第3戦(10月16日)では、ソフトバンクの中田賢一が勝ち投手となり、CSでは歴代最多の通算6勝目を達成した。これは中田が中日時代から積み上げてきた記録である。《他球団に行っても中田賢は中田賢ちゃん呼ばわり》してしまう古巣のファンとしては、日本シリーズでも中田の活躍を期待せずにはいられない!
(近藤正高)
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