
“おかあちゃん”の愛は倫理を超える
龍太郎による突然の財産分与宣言は、「すべてを託したいというのはつまり、治療を頼みたいってことですよね」という育生の切り返しで一件落着。しかし、楓の父親・恒三(岸部一徳)は「できすぎだな」と、冷ややか。一方、育生の母親・華子(岸本加世子)も(「河村家の連中はサイアクだよ。金をちらつかせて、人を試すようなことをして!」と腹を立てる。
しかし、そんな華子も、育生が資産目当てでムコ入りを決めたと信じて疑ってない。育生が否定しても聞く耳を持たない。「将来のことを考えたからでしょ。自分の病院を持つときの資金を出して貰おうって」と決めつける。「俺はもっと、大きなことを考えてるんだ……」という育生に、「ちゃんと目的があるってこと?」と問いただし、イエスの答えが返ってくると「なら、いいわ〜」と満足げ。資産目当てもありなのか。母の愛は倫理を超える。

遺産を渡したくない、それぞれの理由
裸一貫で葬儀屋を立ち上げ、財をなした龍太郎。苦労して築き上げた財産を、娘たちにやりたくないのには理由がある。まず、長女・陽子(余貴美子)に渡すと、「ムコの恒三のものになるから」。どうやら、体よく会長職に追いやられ、会社を乗っ取られた意識もあるようだ。次女・月子(室井滋)は早くに夫を亡くしたことを気の毒に思い、息子ともども会社役員にしてが、働かずに浪費ばかりしている。さらに三女の凛子(板谷由夏)は「米国に行ってカメラマンになる!」というものの、40歳になっても目が出たというウワサを聞かない。