
■YUKI/New Single『tonight』インタビュー(1/2)
優しさと強さを併せ持った情感溢れるロッカバラード
『好きってなんだろう…涙 / となりのメトロ』以来、約3ヶ月半ぶりにシングル『tonight』をリリースするYUKI。表題曲は、人気小説家・伊坂幸太郎の小説を原作にした映画『グラスホッパー』(生田斗真主演)の主題歌として書き下ろした楽曲だ。
(取材・文/松浦靖恵)
今のYUKIだからこその歌唱
――2015年第2弾シングル『tonight』には、映画『グラスホッパー』の主題歌として書き下ろした「tonight」、ソウルフルな匂いがするポップナンバー「Night & Day」、昨年9月にリリースしたアルバム『FLY』のラストに収録されていた「fly」のライブ・バージョンが収録されました。まず、映画の主題歌として書き下ろした「tonight」は、どのように制作していったんですか?
YUKI:以前から私は伊坂幸太郎さんの小説を何作も読んでいたので、伊坂さんの物語に主題歌という形で少しでも自分が参加できることがとても嬉しかったです。原作小説はハードボイルドな男の世界を描いた物語なので、男たちの物語の主題歌をなぜYUKIに?と、最初は不思議に思いましたけれど、私にお話が来たということは、きっとYUKIに何かを期待して下さっているのだろうなと思い、お引き受けしました。
――制作に入る前にこの映画を観たそうですですね。
YUKI:はい。すっかり映画の世界に入り込んでしまいました。哀しくて辛いことばかりが起こる映画でしたけど、私にはすべてが辛さばかりではないようにも思えて。暗闇の世界で辛そうに生きている人たちに、辛い時はもう過ぎたんだよ、もう雨は上がったんだよ、と肩を優しく抱いてあげるような曲にしたいと思いました。映画を観終わったあとに、“雨はもう上がったよ”という言葉をメモに走り書きしていたんです。歌い出しの<雨は上がった>が見事にこの曲にはまったので、そこからは一気に最後まで歌詞を書くことができました。
――作曲を手がけたAlbatoLuceさんはYUKIさんとは初顔合わせの方ですね。
YUKI:そうです。それぞれの登場人物が辛くて重い気持ちを抱いている物語のラストに、自分だったらどんな歌が流れてほしいだろう、もし私が歌うのであればどんな曲がいいだろうと思いを巡らせている時に、八分の六のリズムでロッカバラードを歌いたい、それをスリーピースの生演奏でやりたいという曲のイメージが浮かんできたので、後日、そのイメージをお伝えして、作家さんに曲を作っていただきました。
――スリーピース(ドラム・ベース・ピアノ)にサックスを加えたシンプルな編成から生まれる生音とYUKIさんの歌は、始まりの一音から引き込まれてしまいます。
YUKI:まず、みなさんの演奏が本当に素晴らしくて。人力から生まれた音の中に、私も入り込んで歌うことができました。バンドの頃は「tonight」のようなスタンダードな音楽の中での遊びが上手にできなくて、どう自分らしく歌えばいいのかわからなかったし、大人びた歌は自分には似合わないと思い込んでいたような気がします。きっとこういうタイプの楽曲を歌うのが照れくさかったのかもしれないですね。でも、今の自分なら大丈夫だ、歌える、と思ったんです。ソロになって13年経って、シンプルでスタンダードなものを自由に歌い、YUKIの作品として世の中に出せるようになったんだなと思いました。人は年齢を重ねていくと身体や声も変化していくので、私の声や歌い方、身体や心も常に変化し続けているんです。「tonight」は今のYUKIだからこその歌唱ができました。

――<暗闇は孤独を奪い去るの>や<暗闇が全てを隠してしまうの>などは、『グラスホッパー』の登場人物たちがいたからこそ書けたフレーズなのでは?
YUKI:そうですね。次から次へと辛いことが起こり、哀しみや怒りが連鎖していく暗闇の中で生きている彼らが、私には戦うことで癒されているように見えたんです。戦うことが生きている証のように楽しいなんて感情は、普段の私にはないものなので、あの言葉が出てきたのは映画の中にいる登場人物たちがいたからだと思います。
――星の光、窓辺の花、キスなど、暗闇の世界を照らしてくれるような言葉が、景色に色をつけています。
YUKI:歌詞を書いているとき、夜が明けていない街、その街に雨が降っている絵がイメージとして浮かんできました。光が届く場所よりも暗闇にいる方が孤独や辛いことを忘れさせてくれるなんて、悲しいですけど、そんな暗闇の世界にも彼らにとっての星や花のような存在があるんだろうなと思いました。
――「tonight」のミュージック・ビデオは、生演奏で歌うYUKIさんの顔を、一台のカメラのみで一発撮りしています。
YUKI:映像のテーマの中で、演じる部分が多いミュージック・ビデオでは、曲に合わせてリップシンクをしているんですけど、「tonight」のミュージック・ビデオは、YUKIがどんな顔をして、どんなふうに歌うのかを見てほしかったので、私の姿そのものをさらけ出したいと思いました。1曲のためにコンサート・ホールを押さえて、プレイヤーの方たちに会場まで足を運んで頂いて、そこで一発撮りするという特殊な状況だったので、撮影当日は朝からライブ以上に緊張していました(笑)。
――歌い終えた時のホッとした表情が印象的でした。
YUKI:歌っている最中は歌だけに集中していて必死だったので、撮り終えた映像を後から見るのは怖かったです(笑)。

私の日常的な感じがよく出ている歌詞
――2曲目「Night & Day」は、「tonight」から一転、軽やかなポップナンバーですね。
YUKI:実はずいぶん前に作っていた曲なんですけど、気に入っていたのでいつか世に出したいと思っていた曲です。この曲が持っている軽やかさが、「tonight」のカップリングにいいなと思って、今回のシングルに入れることができました。
――絆創膏、浮腫んでいる足、ペディキュア、フラットシューズなど、日常感のある言葉が歌詞に並んでいますね。
YUKI:私の日常の中にあるものや、使いたい言葉をいくつも入れました。例えば、最近はフラットシューズばかり履いていて、ヒールの靴を履かなくなったなと思っていたことや、ペディキュアを即効で乾燥させても、急いでストッキングを履いたらペディキュアがけっきょく引っ掛かってしまったとか。私の日常的な感じがよく出ている歌詞だと思います(笑)。
――3曲目は、今年行った全国ホール・ツアー【YUKI concert tour“Dope Out”’15】の東京国際フォーラム公演(6月28日)で収録した「fly」のライブ・バージョンです。
YUKI:“Dope Out”ツアーの前にやった“Flyin’ High”(YUKI concert tour“Flyin’ High”’14~’15)ツアーでは、この曲をアルバム収録のオリジナルと同じ1分ほどの尺でやっていたんですけど、“Dope Out”ツアーでは、「fly」のその先のストーリーを紡ぎたいと思って、ツアーを一緒に回っていた沖山優司さんにライブ・アレンジをお願いしました。アルバム収録時にはなかった2番の歌詞は、沖山さんのアレンジに合わせて、ライブで歌いながら作っていきました。
――この約1年間で50本ものライブをやってきた歌声が、この「fly (ver. dope out)」に、しっかり刻まれていますね。
YUKI:はい。1年かけてライブをやり続けたのは、ソロになって初めてだったので、ツアーで歌い込んだ声や歌唱、演奏を積み重ねてきたバンドの音を感じてもらえると思います。
――インタビュー2へ
≪リリース情報≫
New Single
『tonight』
2015.11.04リリース
【初回生産限定盤】(CD+DVD)
ESCL-4546~7 / ¥1,574(税抜)
【通常盤】(CD)
ESCL-4548 / ¥1,111(税抜)
[収録曲]
1.tonight
2.Night & Day
3.fly (ver. dope out)
<DVD> ※初回生産限定盤のみ収録
tonight -Music Video-
≪ライブ情報≫
【YUKI LIVE dance in a circle '15】
公演日:2015.11.07(土)
会場:大阪城ホール
開場/開演:17:00 / 18:00
問い合わせ先:清水音泉 06-6357-3666
公演日:2015.11.08(日)
会場:大阪城ホール
開場/開演:15:00 / 16:00
問い合わせ先:清水音泉 06-6357-3666
公演日:2015.11.18(水)
会場:日本武道館
開場/開演17:30 / 18:30
問い合わせ先:ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999
公演日:2015.11.19(木)
会場:日本武道館
開場/開演:17:30 / 18:30
問い合わせ先:ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999
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