今井美樹 デビュー30周年。52歳になってもなお輝き続ける理由 ／ライブレポート

■今井美樹 30th Anniversary CONCERT TOUR 2015 “Colour”
2015.10.23（FRI）at 東京国際フォーラムホールA
（※画像10点）

デビュー30周年の記念ツアーから、今井美樹の魅力に迫る

今井美樹はことさら派手なアクションで髪を振り乱して歌うわけではないけど、聴き手の心の奥深くへ歌を届ける力量においては、日本でトップ・クラスの人なんだと改めて思う。そもそも彼女の音楽は、いつの時代もギミックの効かない“ポップ・ミュージック”であり、それを貫いていくにはその時々において最高のスタッフとの共同作業が必要なのだけど、ブレずにやってのけた上でのデビュー30周年なのだから凄い。そんな彼女の節目ともいえるツアーに行ってきた。セットリストは新作アルバム『Colour』を軸に、これまでの集大成的な内容。ずっと彼女を応援してきた人にも、最近彼女を知った人も、ともに満足のいくものだったのではなかろうか。オープニングは新作からの「Anniversary」。何気ない一日の中にも、その瞬間にしかない生きる喜びがあることを教えてくれる曲。心地よいグルーヴが会場を満たしていく。デビューして間もない80年代後半の楽曲は、ノビノビとした生命力に満ちていて、彼女がそのまま歌の主人公であっても違和感のない、作品との近い距離感こそが魅力であった。それが90年代になると、“シンガー”としての揺るぎない今井美樹も前に出てくる。この夜も歌った「Blue Moon Blue」は、そのなかでも代表的なもので、虚飾を排したボーカル・スタイルは、ポップスでありつつもジャズ・シンガーの佇まいを感じさせる（特にこの日は、胸にしみる名唱が聴けた）。





00年代以降は、歌の視野が広がって、登場人物目線より俯瞰となり、作品によっては人間愛へも届いていく。さらに新作の『Colour』には、現在、家族とイギリスのロンドンに居を構える彼女ならではの景色をみせてくれる一方で、自分が好きなスタイルは時代を超えて好きといい続けようという意識も垣間見られるのだった。その新作から「あなたがおしえてくれた」が演奏された場面は、この日の白眉と言えただろう。言葉一つひとつが丁寧に歌われ、少しづつ、確かに想いが満ちていくのだった（実は今回のツアー、この歌の作者である川江美奈子がコーラス&キーボードで参加していて、歌う前には彼女の紹介も）。





バンドのメンバーたちが、実にニュアンス豊かに歌の世界観を支えていたことも書いておきたい。曲のアウトロの、最後の一音の余韻までも丁寧に描くその姿勢があってこそ、彼女のライブの質の高さが保たれる。そしてアンコールの「PIECE OF MY WISH」では、ついウルウルしてしまった。この歌のサビに、とても印象的なフレーズがある。そう。＜信じていて　あなたのことを＞。決して押しつけではないこの言葉に、これまで何人の人が励まされたことだろう。そしてこれからも……。（ なお、このライブは一部、二部に分かれていて、さらにアンコールも含め、彼女のステージ衣装にも大注目だったと思うのだが、わたしには解説不能なのでお写真でお楽しみくださいませ）
（取材・文／小貫信昭）



≪セットリスト≫
●第1部
1. Anniversary
2. Time Goes By
3. ふたりでスプラッシュ
4. Boogie-Woogie Lonesome High-Heel
5. Candle Night
6. Lullaby Song
7. Blue Moon Blue
8. Miss You
9. 野性の風
10. Goodbye Yesterday
●第2部
1. PRIDE
2. 瞳がほほえむから
3. 微笑みのひと
4. SATELLITE HOUR
5. 再会
6. あなたがおしえてくれた
7. A PLACE IN THE SUN
8. DRIVEに連れてって
9. 彼女とTIP ON DUO
10. 幸せになりたい
＜アンコール＞
1.卒業写真
2. PIECE OF MY WISH

≪リリース情報≫
Best Album
『Premium Ivory -The Best Songs Of All Time-』
2015.10.07リリース

【初回限定盤】（CD＋DVD）
TYCT-69087 / ￥4,860（税込）

【通常盤】（CD）
TYCT-60071 / ￥3,218（税込）

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