
■New Album『VOWS』インタビュー(1/3)
いろんな曲のどんなあり方にも対応できるようになりたい。
歪ませた曲だって、キレイなバラードだってやりたい。
ひとつのライブでもそれをちゃんと操りたい。
堂珍嘉邦が、ニューアルバム『VOWS』をリリースした。原哲夫の原作コミック『義風堂々!!』とタッグを組んだ作品であり、当作品の2015年公式応援ソングである「Halo」「You&I」を始めとして、「誓い」をテーマに堂珍が思いを綴った5曲である。1曲目「Halo」のオルタナテイスト全開で全英語詞という痛快さから、4曲目「evergrey」のまさに“ロックバラード”とも言うべき叙情性まで、現在の堂珍のロックモード、バンドモードが幅広く、かつストレートに出た作品である。3年前、「耽美エントロック」というスローガンを掲げてスタートした堂珍ソロだが、いつしかロックは耽美もアンビエントもすっかり飲み込んだ。シンプルなロックアルバムと言える。だからこそ、ここからもっと自分は自由になれる――そんな堂珍の確信に満ちたアルバムでもあるのだ
(取材・文/柳憲一郎、撮影/キセキ)
1曲ずつ顔の違うものにできました。でもまぎれもなく自分の歌です
――ニューアルバム『VOWS』は5曲入りですがフルアルバムに匹敵する聴きごたえですね。
堂珍嘉邦(以下、堂珍):「5曲って少ないんじゃないかな?」とはちょっと思ったんですが、マスタリングして曲順を並べて聴いてみたら、ちゃんと音と言葉、歌がしっかりした粒ぞろいのものができたと思って。「ちょうどいいじゃん、このお腹いっぱい具合」と思いました。作品感のあるものができな、と。
――ロックであり、バンドであること、その意味がこの5曲に凝縮されていると思います。
堂珍:いい意味で力が抜けたのかもしれません。1枚目、2枚目のアルバムまでは「こうじゃなきゃいけないんだ」と、自分の理想に基づいて、肩肘張ってた部分はもしかしたらあったのかな、と思います。今回に関して、それはなかったので、1枚目2枚目の経験……リリースしてツアーやって、お客さんの顔を見てっていうのが、この作品の中に溶け込んでいって、「誓い」っていうテーマとして出てきたんじゃないかなと思います。

――そうですね。
堂珍:かつ、1曲ずつ顔の違うものにできました。でもまぎれもなく自分の歌です。「Halo」なんて本当に楽しんでレコーディングできたなあ……。
――「Halo」のイントロなんて凄まじいですよね。「オルタナだからなコノ野郎!」みたいな痛快さが気持ちいい。
堂珍:はははは、本当に。ブンブン言ってますよね(笑)。
――サポートメンバーではありながら、どんどんサポート以上の存在になっていく?
堂珍:ええ、いろんな方向から繋がれているな、と思います。

何が起こるか分からない出会いって本当に魅力的
――今作が誓いのアルバムになったのは、それゆえなのかもしれません。ソロになったからこそ、繋がりと絆というものをあらためて見つめることができた?
堂珍:そうですね。だからこそいろいろ冒険していこうと思えるというか。ちなみに自分のファンクラブの名前は「Drunkboat」、酔いどれ船っていう意味なんですけど、たどり着いた先々でみんな愉しんでいこうぜ、みたいな思いを込めてるんですよね。何が起こるか分からない出会いって本当に魅力的だっていう感じです。1曲1曲を聴かせる状態まで作り上げるのもそのひとつですよね。
――1作目、2作目と比べるとその辺が違いますよね。「絶対聴いたことがないような音を作るぞ、聴かせるぞ」っていう志が凄まじい作品でした。
堂珍:ありがとうございます。
――それを経て、ロックやバンドとシンプルに向かい合う今作なわけです。「Halo」と「You&I」は『義風堂々!!』の公式応援ソングということもありアグレッシブに攻めつつ、あとの3曲はぐっと聴かせるというか、ロックバラードのアプローチが濃くなっていきます。このバランス感はどのくらい意識したことなんでしょうか。
堂珍:最近はみんなで一緒にライブの曲順とかも考えるので、その中で「こういう曲って足りなくないか?」みたいな話になって「Time to fly」ができた。さらにはバラードやりたいからってバタくさいバラードやってもしょうがない、日本的なというか情緒あるバラードをやってみようと「evergrey」ができたり。「evergrey」は、Aliと曲を作るとどうしてもオルタナ感が出るので、あえて「Aliと日本を意識したバラードを作ってみよう」って作ってみた曲ですね。

――あえてハードルを高くして(笑)。
堂珍:ただ、そこにとどまらずにいい感じに転がっていくんですよね。
――ですね。
堂珍:ただオープニングのオルガンはAliがこだわっていて。プロコル・ハルムの……。
――「青い影」だ。
堂珍:そう。Aliくん、「堂珍くん、プロコル・ハルムっぽい感じで歌ったらいいと思うんだよね~!」って。「そうお?」とか言って。
――その口調を活字で反映できないのが残念なんですが、Aliさんらしい感じで。
堂珍:はははは。でもそんな感じで、みんなが意欲もってやりたいと思うことは全部受け入れていったんですよ。譲れないことっていうのも基本、ほとんどないし。

やっぱりまだ「自分にしかできないこと、歌えないこと」をやろうっていう自負はある
――アンビエントとか耽美のハイブリッドというテーマを掲げずとも、人間と人間のやりとりの中で作り上げていけば、それは自ずとハイブリッドなロックになるんだってことですよね。堂珍さん、今やスピリット的には相当バンドマンなのでは?
堂珍:いやいやいやいや(笑)。全然っすよ、まだまだ。自分の声が唯一、誰にも真似できないものだっていう思いはありつつ、自分の曲、自分の歌、もっともっと歌い切れないとダメなんだって思うんです。やっぱり「自分にしかできないこと、歌えないこと」をやろうっていう自負はありますよ。地に足付けてドーン!って歌いきる、それにはツアーを重ねていかないとダメだよな、と思っています。
――リリースして終わりじゃない、ライブで成長していく曲でもある。それもまたバンドとして作った曲、っていう感じですよね。変化していってこそ。
堂珍:それもまた自由ですよね。いろいろ試します。パフォーマンスしたければするし、しないでドッシリやろうと思えばドッシリ構えるし、頭振りたいなと思ったら振りますし。誰でも来てよ、来ている人で一緒に楽しもうよ!っていう思いですよね。

――どんな曲でもそれをやりきれる自信がある。
堂珍:そうですね。聴き手に「この曲好きだけど、この曲は全然わからない」とか、そのくらいのメリハリがあってもいいんじゃないかな、と思っています。最初嫌いな曲でも、聴いていて好きになったら一生好きじゃないですか。
――ははは。その通りですね。
堂珍:そういうことってありますよね。だからアルバムごとに毛色が変わっていくのもありなんだな、とあらためて思っています。シューゲイザー、次はインダストリアル、次は何故かフォーク・エレクトロニカ!とか(笑)
――(笑)。どれにチャレンジしても、自分というか、自分のバンドらしい曲にできるんじゃないかっていう自信があるのでは?
堂珍:そうですね。今回肩肘張らずに向かい合えたし、次も自然体で変化していけそうです。若い頃って、例えば声が枯れたらどうしようって慌てていたものですけど、今だったら「じゃあそれを活かした歌い方すればいいんじゃない?」とか考えられるんですよね。ミュージカルやったり、ハードな歌も随分こなしフィジカル的にも強くなってますし、少々のことでは今や別に声は枯れない。枯れたところでそれを活かすことができる、そういう強さが自分にはあると思います。
――まさに今の堂珍さんの強みなんだと思います。
堂珍:そう、もっともっと、いろんな曲のどんなあり方ににも対応できるようになりたい。歪ませた曲だって、キレイなバラードだってやりたい。ひとつのライブでもそれをちゃんと操りたい。その思いをもってやってきたいと思います。
――インタビュー2へ

≪リリース情報≫
New Album
『VOWS』
2015.10.21リリース
KIZC-337~38 / ¥2,176(税抜)
[収録曲]
1. Halo
2. You&I
3. Time to fly
4. evergrey
5. Reflexion
<DVD>
1. 「Halo」Music Video
2. 「Halo」Music Video(義風堂々!!ver.)
3. 「You&I」Music Video
4. 「You&I」Music Video(義風堂々!!ver.)
≪ライブ情報≫
【Yoshikuni Dohchin official fanclub“Drunkboat”&“堂珍嘉邦モバイル” presents
「Jack Frost ~request live 2015」】
2015年11月21日(土)東京・恵比寿ガーデンルーム
2015年11月22日(日)大阪・クリエイティブセンター大阪 STUDIO PARTITA
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