
50話は、こんな話
現場のみんなに、働いたらその分いい暮らしができる希望をもってほしいと、
炭坑の改革をしようと考えるあさ(波瑠)。
そのためには、坑夫と経営者の間に入っている納屋頭を通さないやり方を行うことが最適だが、それはなかなか困難で・・・。
萬田久子の敵役演技
納屋頭サトシ(長塚圭史)がやたらとダーティー感を漂わせるので、あさの正義感と理想主義も激しく燃え盛るようだ。
あさの言葉に一瞬惹かれるカズ(富田靖子)だったが、すぐ「太く短く生きてる坑夫たちには、夢や希望はまぶし過ぎる」と諦めの境地に。
いろいろな事情があって、誰かにとって良いことが、必ずしも誰にでも良いこととは限らない。
眉山家でも価値観の対立が起っていた。
和歌山の土地で農業をはじめたいという惣兵衛(柄本佑)に、菊(萬田久子)は大いに嘆き、憤る。
ふふふ、ふふふ、ははは、ははは! と絵に描いたような高笑いで、敵役感を出すのはいいが、「山王寺屋を守って来た」って、守ってないだろー。どこまで自分の都合のいいふうにばかりの思考回路なのか、と深いため息がでる。
そうは言っても、「知らん土地に流れて落ちぶれて死ぬよりも、息子に刺されて死んだほうがご先祖さんに顔向けできる」という誇り高さはむしろ興味深い。
生きていくことが大事だと、よかれと思って提案しても、こんなふうに意固地になられては辛いばかりだが、自分の考えに捉われて頑として動かない(動けない)ひともいる。現代でいうとゴミ屋敷に住むご老人などがそうだろう。
古典だと、チェーホフの「桜の園」(没落した家の夫人が過去の栄華を忘れられないまま破産に向かっていく話)が思い浮かぶ。
おりしも、柄本佑が新国立劇場で「桜の園」に出演中。さらに、「まれ」の文さんこと田中裕子も出演しているという、朝ドラファンには気になるキャスティングだ。
「桜の園」を見ても、「あさが来た」を見ても、惣兵衛の言うように、「世の移り変わり」に人生を左右されてしまう人間たちがやるせない。
(木俣冬)
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