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作家になったのは永六輔を見返すため? 野坂昭如『マスコミ漂流記』

       
《八方に手をのばしていなければ、なんとなく安心できないのだ》と『マスコミ漂流記』に書いている。

野坂がこの12月9日に亡くなったあとで、私が一番好きだったのは、作家・野坂昭如よりもむしろ歌手・野坂昭如だったことに気づいた。彼のアルバム「絶唱!野坂昭如 マリリン・モンロー・ノー・リターン」は20代からいまにいたるまで愛聴盤(正確に言えばデータをパソコンに入れているのだが)である。

野坂は1971年にシングル「マリリン・モンロー・ノー・リターン」をリリース、そのB面に収録された「黒の舟唄」はフォーク歌手の長谷川清にカバーされたこともあり、じわじわと人気を集めていった。

後年にいたっても「ザ・平成唱歌集」というアルバムを出し、ゲスト出演した「笑っていいとも!」でその収録曲「チンタマケの唄」の一節を口にしたところ、卑猥な歌詞ととった司会のタモリからさえぎられていたのを思い出す。まあ、チンタマケとは沖縄の言葉で鎮魂歌のことらしいのですが。

日本武道館、東京宝塚劇場、日本劇場、国際劇場と歌手として大舞台も踏んでいる。となれば、いちどでいいから紅白歌合戦でうたう野坂昭如というのを見たかった気もする。美輪明宏が「ヨイトマケの歌」で出たのだから(今年もこの歌で出場する)、野坂が「黒の舟唄」で出場してもおかしくはなかったのではないか。

いや、ファンとして本音をいえば、「マリリン・モンロー・ノー・リターン」で出てほしかった。「この世はもうじきおしまいだ」で始まるあの歌は、大晦日に浮かれる茶の間にきっと警鐘として響いたに違いないから。
(近藤正高)

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