原作である漫画版もアニメ版も大好評の『僕のヒーローアカデミア』。原作の1話分がアニメでは2話分で放送されたことも話題になった。
だが、もしかしたら、アニメの2話までを見て少し疑問を覚えた人もいるかもしれない。
「オリジン」を知って「僕のヒーローアカデミア」をもっと楽しむ
僕のヒーローアカデミア(堀越耕平 集英社)第1巻。
表紙にも書かれている第1話「緑谷出久:オリジン」が収録されている

内容に文句があるわけではない。台詞は原作に忠実だし、それでいて原作を補うような細かいカットが追加されている丁寧な描写はよくぞここまでやってくれた! という気持ちでいっぱいだ。詳しくは大山さんの書いたレビュー1話2話も参照して欲しい。原作を読み返したいという人は、こちらから無料で1話だけを読める。

アニメを見逃してしまった! という人は、ニコニコチャンネルで今なら無料公開1話と最新話(1週遅れ)で2話を見ることができる。
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どこに疑問があるかというと、アニメ第1話のタイトル。「緑谷出久:オリジン」は、第2話のタイトルにふさわしかったのではないか、という点だ。

「オリジン」回とは?


アメリカンコミックスには「オリジン(origin)」という用語がある。辞書を引いてみると意味は「起源、発端、源泉、源、原因、生まれ、素姓」とある。

その名の通り「あるキャラクターがいかにしてヒーローもしくはヴィラン(敵役)になったのか、または能力を得たのか」を描く回。それが「オリジン」だ。


緑谷出久のオリジンは、主人公である緑谷出久がヒーローになることを決意した時のことだ。具体的には、無個性に生まれついてしまったために、どんなに焦がれても母親からも言ってもらえなかった言葉。人生で一番言って欲しかった言葉を、憧れであるNo.1ヒーローオールマイトから『君はヒーローになれる』と言ってもらった瞬間に他ならない。

このシーンは原作1話(単行本1巻)の最後に収録されているため、アニメ版では2話に登場する。ところが、アニメ版2話のタイトルは「ヒーローの条件」。確かにそれも話の筋として非常にマッチしており、間違ったタイトルとまでは言わないが、「緑谷出久:オリジン」にして欲しかったところだ。
もしくは、第1話を「緑谷出久:ビギンズ」で、第2話を「緑谷出久:オリジン」にするとか。

その他の「オリジン」回


『僕のヒーローアカデミア』では「オリジン」回を非常に重要視している。例えば1巻の表紙に書かれている、その巻を代表するタイトルには「緑谷出久:オリジン」とある。

次にあるのは第39話の「轟 焦凍:オリジン」単行本5巻収録)。
「オリジン」を知って「僕のヒーローアカデミア」をもっと楽しむ
第39話「轟 焦凍:オリジン」が収録されている第5巻

出久のクラスメイトでもありライバルの轟 焦凍が、出久の「君の! 力じゃないか!!」という叫びに心を動かされ、「俺だって ヒーローに…!!」と、自らの原点を思い出し、全てを受け入れる。

そして、第62話の「爆豪勝己:オリジン」だ(単行本7巻収録)。

「オリジン」を知って「僕のヒーローアカデミア」をもっと楽しむ
第62話「爆豪勝己:オリジン」が収録されている第7巻

こちらも出久のクラスメイトでもあり、ライバルでもあり、幼なじみでもあり、超えるべき壁として憧れすら抱いている爆豪勝己が負けそうになったとき、出久の「勝つのを諦めないのが君じゃないか」という言葉で自分の信条である「いちばんすげえヒーローは最後に必ず勝つんだぜ」を思い出す。

どのオリジンも、オールマイトや出久の言葉によって自分の原点を思い出し、プロヒーローとしての一歩を心の底から踏み出している。話的にも重要だし、それぞれが収録されている単行本では表紙に記載されている回だ。

ちなみに、第63話では「八百万:ライジング」単行本8巻収録)がある。優等生だが自信を喪失していた八百万百が自らの殻をやぶって飛び立つ回だ。

このように、『僕のヒーローアカデミア』では「キャラクターの名前:オリジン」がタイトルについている回が、いくつか登場する。
アニメの第1話では若干ズレがあったが、そこに注目をすることで、より作品を楽しむことができるだろう。
(杉村 啓)