脚本:西田征史 演出:岡田健

34回は常子(高畑充希)の“泣き”に尽きるでしょう。
「嬉しくて」と言って泣き、「悲しい」と言って泣く。ここは名場面でした。
ついに常子は、君子(木村多江)と滝子(大地真央)の確執の原因を知ります。
遠州浜松染工の杉野社長(田山涼成)に話を聞いて、滝子の元へ走る常子。仕事中に店内で座り込むのはどうかという気もしますが、その熱意に負けて滝子と話し合うことができました。
その結果、すべての真相を知り涙するのです。
滝子(大地真央)に「忙しい子だねえ」と面食らわれたその涙は、君子(木村多江)が、常子のことを思いやってくれていたことが嬉しいこと、でも滝子と清子の喧嘩が自分のせいであったことが悲しいこと。
常子が感情に素直であることで、涙ひとつとっても、一面的でなく幾重にも感情が折り重なっているのだと教えてくれた涙でした。
宇多田ヒカルの主題歌の歌詞“涙色の花束”の涙色も、哀しみだけでなくいろんな色が混じっている気がします。
ところで、常子が泣いた34回の放送日・5月12日、演出家・蜷川幸雄が80歳で亡くなりました。高畑充希は、2015年8月、音楽劇「青い種子は太陽のなかにある」(作・寺山修司)のヒロインで、蜷川の演出を受けています。その時の役は、60年代、高度成長期に生きる健気で純真な女の子役でした。
(木俣冬)