世界中で増えている「グルテンフリー」とは
グルテンとは小麦や大麦などの胚乳から生成されるたんぱく質の一種で、グルテンフリーとはグルテンを含まない食事のこと。もともとはグルテンを消化できない人(セリアック病)やグルテンに反応する人(グルテン過敏症など)のために開発された食事だが、最近はベジタリアン同様、思想的にグルテンフリーを選ぶ人が増えている。
ラーメンをグルテンフリーにする難しさとは?
グルテンフリーをラーメンで実現する難しさは2つある。1つめは、小麦粉を使った一般的なラーメン用の“麺”が使えないこと。2つめはタレや味付けに“醤油”が使えないこと。醤油の原料のひとつが小麦粉だからだ。
グルテンは、食物に弾力や粘り気を出す働きがあり、麺の歯ごたえをだすには欠かせない要素といわれる。いったい、グルテンフリーでどんなラーメンができるのか?
小麦粉を使わない味噌ダレを新規開発「無垢ツヴァイテ」

新横浜ラーメン博物館では、館内の2店舗でグルテンフリーラーメンを提供中。1つはドイツに本店を構える無垢ツヴァイテの「グルテンフリーラーメン(味噌)」だ。
同店の味噌ラーメン用の味噌ダレには醤油が使われているため、今回は小麦粉を使わない特製の味噌ダレを新たに開発。塩味は醤油のかわりに塩でつけ、8種のスパイスをブレンドしたドイツの調味料「ジーベン」で風味をプラスしたという。
清水店長いわく「ちゃんぽんに味噌を足したような感じ」というこのラーメン。実際に食べてみた。
麺は米粉のストレート麺で、思ったより弾力がある。
「ちぢれ麺というチョイスもあったのですが、ストレート麺も案外スープとのからみがよくて。見た目やすすり心地を考えて、ストレート麺にしました」(清水店長)

ほんのりとろみのあるスープは、味噌のやわらかな甘さとまろやかなコクを感じるやさしい味。それに、ニンジンやもやし、玉ねぎなど野菜の旨みが加わり、さらに鶏油で香りづけしたドイツの郷土料理“ザワークラウト”(キャベツの酢漬け)の酸味がアクセントになって、奥の深い味わいを作り出している。
「一番大切にしたのは、“ラーメン”というかたちに仕上げること。グルテンフリーラーメンだからといって、そこに違和感を残したくない。“これはラーメンじゃない”っていわれたら作り手としては残念ですから。いかにラーメンらしいニュアンスを出すかにこだわりました」(清水店長)
食べてみると、作り手の本気がよくわかる。
熊本の郷土料理でグルテンフリーラーメンを実現
もう1軒は、熊本の人気店「こむらさき」。こちらのグルテンフリーラーメンは、地元熊本のご当地グルメ「太平燕(たいぴいえん)」をこむらさき風にアレンジした「こむらさき風 太平燕(とんこつ)」だ。

麺は緑豆春雨。太平燕は、もともと緑豆春雨が使われることが多いのだ。スープはこむらさきのマイルドでクリーミーなとんこつスープに、グルテンを含まない塩ダレを使用。上にはこむらさき名物のニンニクチップがたっぷりかかっている。

ラーメンのひとつのスタイルとして楽しんでほしい
新横浜ラーメン博物館広報担当の八巻さんは、「訪日外国人のお客さまが増えるにつれ、食が制限されるお客様も増えています。グルテンフリーはとくに欧米の人から問い合わせが多くありました」と話す。
ただ、今回のグルテンフリーラーメンは、麺をゆでる鍋は別だが、グルテンを含む食品を扱う厨房で調理しているため、セリアック病やグルテンアレルギーの人は各自で判断する必要がある。どちらかというと志向的な理由でグルテンフリーをチョイスする人向けといえるだろう。
新横浜ラーメン博物館がラーメンのグローバル化を推進するのは、インバウンド観光客の増加や2020年の東京五輪などが背景にある。「グルテンフリーも含めていろいろなラーメンを楽しんでほしいですね」と八巻さん。新横浜ラーメン博物館の先駆的な挑戦はまだまだ続きそうだ。
(古屋江美子)