Jazztronik野崎が発表した新音楽ビジネスモデル「MUSIC BANK(仮)」/インタビュー3

■Jazztronik/New Album『Keystone』インタビュー(3/4)

――インタビュー2より

ライブをちゃんとやっているアーティストや、信念を持って活動しているアーティストは生き残っている

――「The City Beyond -幻(maboroshi)」は10分を超える曲で、和風ミニマルというような感じですが、どんなイメージで作ったんですか?

野崎:この曲のデモについていたタイトルは「東京」だったんです。僕は散歩が好きで、夜の東京の街を歩いている感じを音楽にしたいなと漠然と思いながら作っていったら、こんな感じの曲になって。


――途中には琴の音が入っていますね。

野崎:昔から純邦楽とか雅楽が好きで、その熱が再燃していたときに、たまたま外仕事で吉崎明日佳さんという琴奏者と知り合ったんです。しかも、いろいろ話して行くうちに彼女が僕の家の裏に住んでいることがわかって。彼女も新しい音楽をやりたいということだったんで、お誘いして演奏してもらったんです。

――偶然の出会いが必然に変わったわけですね。

野崎:そう。
あと、彼女に純邦楽と雅楽の演奏はまったく違うと言われて。それを聞いたら雅楽に俄然興味が出てきて、中間部分に僕なりの雅楽っぽいブレイク部分を作ってみたんです。さらに、そういうフレーズを外国人が弾いたら面白いんじゃないかと思って、ロンドンの弦楽器チームに弾いてもらったんですよ。

――いろんな実験と化学反応が詰まっている曲なんですね。

野崎:雅楽って、いろいろ調べていくと、半音と半音の間の微分音が多いんです。それをロンドンの弦楽器チームに説明するのが超大変で(笑)。
微分音を表示する記号はあるんですが、それって現代音楽で使うので、オーケストラのように大人数ではあまりやらない。しかも、今回は25人編成だったので、その人なりの半音と半音の間の音を25人ぶん揃えなきゃならないっていう。彼らは最後の最後まで「ここは合ってるの?」って言いながら帰っていきましたけど(笑)、このレコーディングは実に面白かったですね。

――お馴染みのロブ・ギャラガー(ガリアーノ〜トゥー・バンクス・オブ・フォー〜ダイアボリカル・リバティーズ)がヴォーカルで参加した「WARP 〜The warp riders adventures on the dance floor〜」は、1曲の中にいろんなダンスミュージックが飛び出してくる曲ですね。

野崎:これは『Dig Dig Dig』よりもっと前に土台を作っている曲なんです。その頃から、いろんなダンスフロアに誰かが飛んでいっちゃう曲にしたかったんですけど、当時はコンピュータのパワー不足でイメージしているものが再現できなかったんです。
でも、そこから7、8年経って機材が進化したのでやってみようと。実はこの曲、全部で140トラックくらい使っているんです。それをスッと動かせるようになったので、やっとイメージしているものが作れました。

Jazztronik野崎が発表した新音楽ビジネスモデル「MUSIC BANK(仮)」/インタビュー3

――それにしても、次々に顔を出すトラックが80年代後半から90年代中盤にかけてよくクラブで流れていた感じのものなんですよね。野崎さんのルーツ、大開放だなって思いました(笑)。

野崎:そうなんです。
この曲はもう完全に僕の趣味、丸出しですね(笑)。

――ところで、昨年、「MUSIC BANK(仮)」という新しい音楽ビジネスモデルを発表されました。プロミュージシャンが手掛けた楽曲をストックしておき、企業のニーズに合わせて販売するという事業ですが、今、そちらはどんな感じで進んでいるんですか?

野崎:現状は、ミュージシャンにどんどん曲を作ってもらい、どんどん録っているところです。先日は、あるベーシストがストックしていた曲に弦を入れていたところ、たまたまその曲を聴いた企業の人が「そういう曲を探していたから」と購入していただけました。何にもしてなかったら、その曲はベーシストのコンピュータの中で眠っているだけ。でも、そうしてアクションして売れた金額を参加してくれた人に分配してあげる、っていうのがいいんじゃないかと。
今年は溜めた曲を業界内で聴いてもらってサービスの存在を知ってもらい、なるべく早くサイトを立ち上げて一般の方も使えるようにしていきたいなと思ってます。

――そういう新しい事業を始め、年齢も40歳を迎えましたが、ご自身の中で、今後どんなふうに音楽と向き合っていきたいと思っていますか?

野崎:「CDが売れない、音楽が売れない」と言われて久しいですが、ライブをちゃんとやっているアーティストや、信念を持って活動しているアーティストは生き残ってるんですよね。僕は、録音物は録音物ですごく重要視しているし、こだわりを持っていますが、年を取るにつれてライブの重要性をすごく感じるようになりました。たとえば今までだったら1ステージのためにアレンジはしなかったんです。でも、この1、2年くらいは「今回はこういう編成だから」と、大小問わずその時々のライブ用に楽曲を全部アレンジし直しています。それが音楽家の仕事であり、お客さんへのサービスだと思うんです。
なので、そういう心掛けで音楽をきっちりやっていきたいと思っています。

――インタビュー4へ

≪リリース情報≫
『Keystone』
2016.06.08リリース
WPCL-12396 / ¥2,778(税抜)
[収録曲]
1. Now
2. Metamorphosis
3. Lost melody
4. DGA
5. PeachBoy
6. The City Beyond-幻(maboroshi)
7. WARP ~The warp riders adventures on the dance floor~
8. Parade!
9. Splash the Blue
10. A New Phase of Life

≪ライブ情報≫
【New Album「Keystone」Release Live】
2016年7月4日(月)赤坂BLITZ
2016年7月22日(金)ビルボードライブ大阪
2016年7月23日(土)福岡スカラエスパシオ
2016年7月24日(日)鹿児島 指宿白水館・薩摩伝承館

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