原作 小田ゆうあ 脚本:安達奈緒子

禁断の恋ドラマが何作もあった4月期。7月期にもまたありました。
「ふれなばおちん」です。
「触れられただけで恋に落ちてしまう女性の様子」という意味のちょっと風変わりなタイトルを冠した漫画を原作に「リッチマン、プアウーマン」「失恋ショコラティエ」「その男、意識高い系。」などを書いた安達奈緒子が脚本化し、1話30分、全8回で見せる。
ふたりの子持ちの平凡な主婦・上条夏(長谷川京子)は家族が何よりも大事だったはずなのに、ある時、引っ越してきた若い男(成田凌)によろめいてしまう。
第1回「隣の男」では、開始早々、いきなり薄暗がりのドメスティックな部屋で、家族が大事、恋(不倫)なんて考えられないと全力で拒絶する主人公夏。
「いくつになっても女とか、美容院で見る雑誌やテレビの中のお話ですよ。恋なんてほんとうはもうそんなに大事じゃない」などと言いながら、結局、男に抱きしめられてキスされてしまう。
そこから話は1ヶ月前へと遡る。
夏は、年頃の娘にがっかりされるような、見た目に全然構わない“おばさん”。
ある日、夏は、知り合いの主婦・小牧さん(戸田菜穂)が夫と子供を置いて恋人と家を出てしまったことを知る。
そういえば、小牧さんの下の名前を知らない、ケータイには、小牧さんの子供の名前しか書いてないという主婦でお母さんである女の寂しいリアル、乾くかなと思いながら夜に部屋干しているリアル描写の後、小牧さんから電話。
なんかごちゃごちゃ言う夏に、「私が男の人といるのわかってて、そういうこと言うの。なんかそういうの ちょっとやだった」と言う小牧さん。
「この電話は助けてほしくてかけてるんじゃないの、今の私を誰か知ってよってそういう電話」と言う。小牧さんはすっかり解放されているようだ。
「あのね私もうね今最高なのめちゃくちゃに」「好きな人と愛しあってるの、今も」
のろける小牧さんに「愛? やだ小牧さん、何言ってるの そんな人じゃないでしょ 結婚してるのよ もうそんなんじゃないでしょ 家族守るのが責任でしょ」とかまととぶった言い方で責める。
対して小牧さんは「責任で満たされるの?」と反論。「女としてほんとうに満たされるのってこういうことなんだって」と自慢し、最後に「私の名前・・・なっちゃん、私の名前覚えてないんだね」と捨て台詞。
つまり、妻で母になった女は名前がなくなってしまう(「名前をなくした女神」っていうドラマありましたね)
ことから小牧さんは抗ったのだ。
それに比べて夏は、娘に「お母さんつまらない」と言われてしまう残念さ。
アラフォーにもかかわらず、20代の男と愛の逃避行をした小牧さんと比べ、夏は「男の人の前で裸になれる時点でわたしとは住む世界が違う」と言い、お風呂に入れば、天井にカビを見つける完全なる主婦。夫(鶴見辰吾)との夜はなーんもないようだ。
……とここまでで15分。
おーーーーーい! ハセキョウ(長谷川京子)が綺麗過ぎて、現役感あり過ぎで、かまととおばちゃんに全然見えない! こんなに唇に主張の強い奥さんがいたら、社宅がインモラルな空気に満ち満ちてしまうので、警報発令ですよ。
原作ではほんとうにおばさんキャラなのに、いったいどうしてハセキョウはこんなにもくっきりメイクなのか。
とまるで感情移入できないでいると、舞台が夫の会社に移行。冒頭、夏にキスした男は、役者もやっているモテモテの派遣社員・佐伯龍(成田凌)であることがわかる。その会社には夏の夫(鶴見辰吾)も勤めていて、その流れで、龍は社宅に越してくることに。
「女の人はみんな一緒ですよ。種類が違うとか、課長、それはダメですよ」とニコリとする佐伯。
「ああいうやつなんだろうなあ うちのが堕ちた男」「まあ、ああいうのならあるか」と小牧さんの旦那(菅原大吉)と夏の旦那は納得し、たそがれる。
成田凌はメンズ・ノンノの専属モデル。同じくメンズ・ノンンのモデル・坂口健太郎が活躍しているので彼にも期待できそう。首が長くて、無地のTシャツをさらっと上品に着こなしている。こんなセンスのいい劇団員実際はなかなかいないと思う。
この劇団員派遣社員、引っ越しの最中、いきなり階段から落ちた夏を抱きとめて、あたふた〜。
「嘘のようにドラマチックに私たちは出会った」とドラマチックな夏のモノローグで1回は終了した。
あっという間の30分。まだ禁断の粘りっけは微量でかなりさらっとしていたが、第2回から、冒頭のようにねっとりしてくるんだろう。
でも、恋を知ったハセキョウ(役名は夏)がこれ以上色っぽくなったらどうしたらいいのか。それが気になって2回目も見守りたい。
(木俣冬)