
ざっと1巻を振り返ると、主人公アグニはベヘムドルグ兵ドマに妹や村など全ての物を焼き払われてしまう。再生能力を持ったアグニは消えない炎を纏った炎人間になり、ドマに復讐を果たすため旅に出る。途中、みなしごのサンと仲間になるが、二人はベヘムドルグ兵ユダの手によってバラバラに。アグニはドマに復讐するチャンスを得るも、返り討ちにあって消し炭になってしまった。
桐島、部活辞めるってよ
ダークファンタジーなどと言われているが、復讐が物語のメインになっている。では、ジャンルが変わるというのは一体どういうことなのだろうか?単純にバトル漫画だったのが、ギャグ中心になったり、恋愛要素が絡んできたりとか、そういうことなのだろうか?しかし、それでは話が散らかってしまってメリットは特にないような気がする。
そこで気になるのが、8話に唐突に出てくる映画大好き少女トガタの存在だ。集録は二巻以降になるが、このトガタの登場回数は今後どんどん増えていく。つまり、ジャンルが変わるというのは目線が変わるということなのではないだろうか?
おそらく、二巻からはトガタを中心に物語が展開していくはずだ。トガタは映画の主人公としてアグニを見ている。一巻ではアグニの復讐物語だったがトガタの目線を通すことによって、映画製作物語に変貌している。
だとしたら次の中心人物は誰になるのだろう。現在登場している人物の中から考えてみた。
追われる者ドマ
罪の無い人々を殺してしまった罪の意識と、王への忠誠心の間に揺れる兵士の物語。自分を殺そうとするアグニに対峙し、自分と向き合っていく。
神と崇める者サン
命を助けてくれたアグニを神と崇める世間知らずな少年の奮闘記。何もわからない。どこにも行く場所がない。そんなサンは、アグニの為に生きることによって自分の存在価値を見出していく。
全てを悟る者ユダ
130歳と作品内で最も高齢なユダは、再生能力のおかげで死ぬこともなく、全てを悟ってしまっている。生きていて楽しいことなんてもちろんない。ただただ責務を全うすることで日々を過ごしていく。
まだ登場していない人物が中心になることもありえる。しかし、この三人はある程度掘り下げないといけない立場の人物に思える。今後、なんらかの形でスポットライトを浴びることは間違いないだろう。
予想の斜め上を行く超展開を見せる「ファイアパンチ」。だが物語を読み解くヒントはこの第1巻に詰まっているはずだ。
(沢野奈津夫)