本当に大変なのは普通の子育てよね
実の親に虐待を受けてきた子と特別養子縁組して里親になるに当たっての試練「試し行動」「赤ちゃん返り」という問題行動も終わり、ようやく本当の子育てがスタートした『はじめまして、愛しています』(テレビ朝日系・木曜21:00〜)第5話。

……でも、本当に大変なのは普通の子育てなのだ。
それまで「試し行動の時にはこうして」「赤ちゃん返りの時にはああして」と、児童相談所の堂本(余貴美子)から言われた通りに対処していればよかった美奈(尾野真千子)&信次(江口洋介)の夫婦。
しかし、ようやく問題行動が収まり堂本から、
「これからは、アナタたちがハジメくんをどんなお子さんに育てるか決めないと。アナタたちはどんな人間になってもらいたいんですか?」
と問われ、「とりあえず、この子をウチの子にしたい」「里親になりたい」という気持ちで突っ走ってきた美奈と信次は「そういや教育方針とか、何にも考えてなかったわ」と気づくのだ。
ひどいよ、この夫婦の子育て……
ハジメ(横山歩)を猫かわいがりし、過剰に甘やかす信次に対し、「ハジメがわがままで人に迷惑をかけるような子になったらどうするの!?」と思う美奈。
一方、やたらと口うるさくしつけていこうとする美奈に対し、「オレたちがちゃんと愛情を伝えていれば、問題を起こすような子にはならない」と考える信次(でも、父親を新聞紙を丸めた刀でボコりながら「殺すぞ〜死ね! 死ね! 死ね!」と言っている子どもは、さすがに注意した方がいいと思うよ!)。
この辺は、実際の夫婦間でもありがちな教育方針のすれ違いなんでしょうな。
結局、またしても児童相談所の堂本に相談しに行くのだが、堂本からは逆に「どのような愛情を受けて育ったんですか、親御さんから」と聞かれる。
しかしこの夫婦、「自分は親から愛されていない!」と考えているふたりなのだ。
父親は、自分や母親よりも音楽のことを愛しており、そのせいで母親は自殺したと考えている美奈。
旦那&長男を交通事故で亡くしたショックからアル中になって、残された自分たち兄弟を顧みなくなった母親を恨んでいる信次。
そんなふたりには「自分の親のようにはならないぞ!」「虐待をしていたハジメの実の親のようにもならないぞ!」という、反面教師的なビジョンはあっても、「こんな風に子育てしたい」というビジョンがないのだ。
実際、この夫婦の子育ては結構ヒドイ!
お箸の正しい持ち方を練習しようと、ひとりで煮豆を箸でつかんでいるハジメを、盗み食いしていると勘違いし、怒鳴り散らす美奈。
そんな、なにかと口うるさい美奈に対してハジメが「お母さんなんて大嫌い」とキレると、
「だったら出てけ! お母さんはお父さんの大切な宝物なんだ! その人を傷付けるような子はウチには入れない! 施設に戻ればいいだろ!」
と、さらにブチギレる信次。
実の親から捨てられた子に、それは言っちゃダメでしょ!
でも結局ハジメくんのけなげさに涙を持ってかれました
そんな、ヒドイ里親・美奈&信次に対し、
ハジメくんは(色々問題を抱えてはいるものの)ホント、けなげでいい子!
「施設に戻ればいいだろ!」と言われて家から閉め出されたハジメは、児童相談所の堂本のところに行くのだが、それは施設に帰ろうとしていたわけではなく、美奈と信次に手紙を書くために、堂本に文字を教わろうとしていたのだ。
その手紙がホント泣ける!
「おとうさんおかあさん ごめんなさい すてないでください」
覚えたての、汚い字なのがまたいい感じでねぇ。実の親に捨てられた子どもに「すてないでください」なんて言わせるなよ……。
さらに、ハジメは自分の口から「愛しています」と伝えて、視聴者の涙をしぼりとるのだ。何歳だよ、この子!
こんなハジメを見て美奈は、
「子育てなんて、何が正解か一生分からないのかも知れない。でも、諦めないで続けていけばきっと子どもは分かってくれる」
と考えるが、でも、大人になっても親の気持ちを分かってくれなかった子どもが、美奈&信次なんだと思うけど。
ハジメくんの抱えている問題はひとつひとつ解決していっているものの、結局、美奈&信次の親に対する嫌悪感が解消されない限り、本当の親子関係は築けない……という展開になっていくんでしょうね。
第6話では、ハジメくんが幼稚園に入園。またハジメくんが問題を起こすのか、それとも美奈&信次たちの方が問題を起こすのか? ……楽しみです。
(イラストと文・北村ヂン)