73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

2016年1月、エクセルを使ってLINEのスタンプを制作する72歳(現在は73歳になられた)のおじいちゃん・田澤誠司さんにインタビューをした。

職場で安全管理用の資料を作成することになり、そこに添えるためのイラストをマイクロソフト社のエクセルで描き始めたところから徐々にイラスト制作の技術が身につき、趣味で有名人の似顔絵などを描いていたところ、お孫さんにLINEスタンプ作りを薦められた、という流れで、独特のセンスを持つ大ヒットスタンプができあがったとのことだった。


田澤さんは年明け以降、様々なメディアに取り上げられ、LINE株式会社が運営する「LINE Creators Festa 2016 -スタンプの祭典-」というスタンプアーティストの集うイベントで講義を行うなど、IT系おじいちゃんとして一躍有名になられた。筆者はその後も田澤さんと連絡を取り合い、新しいスタンプが出るとお知らせしていただいたりしているのだが(特に「甚大な自然災害から身を守る」というスタンプはすごい)、実は直接本人にお会いしたことがなかった。
73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

ようやくお会いすることができたのは、7月のこと。国産にんにくのPRイベント「国産にんにくフェス2016」のイベント公式キャラクターを田澤さんが制作していて、会場にいらっしゃると言うのでその場にお邪魔して対面が叶った。
73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

田澤さんはお住いのある茨城県からお一人で電車に乗っていらしていて、颯爽と歩く姿も大変お元気そうだった。短い時間だったが、ここ最近のご活躍について色々と聞かせてもらうことができ、その中で「先日、絵本を作ったんですよ」という話を聞いた。


詳しく聞いてみるとその絵本というのは、10歳の少年がみた夢を田澤さんがイラスト化するという形で制作されたものだという。“63も歳が離れたコラボ”ということなのだが、今回はその内容を紹介するとともに、この絵本に込められた田澤さんの思いなどについて話を伺ってみたい。

まずは早速、本の中身を見ていこう。
73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

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73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

独創的な夢の内容と田澤さんのエクセル画のタッチの相性が素晴らしい。この夢を見たのは「武村真将(たけむらまお)」君。田澤さんの活動をサポートしている方の息子さんだという。
まお君は「自分の見た夢の話をお父さんにしたら、すごく面白いからちゃんと文章にして残したらどうか?と言われた」ことをきっかけに毎日“夢日記”をつけているそうだ。今回の絵本はその夢日記の中からいくつかの夢を抜粋したものを原作にしているという。
73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

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73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

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この絵本について田澤さんにお話を伺ってみた。

――まお君の夢の展開にも田澤さんの絵にも少しシュールな雰囲気があり、二人の相性がピッタリだと思いました。そもそも、この絵本を作るきっかけは何だったのですか?
田澤さん 私のサポートをしてくださっている方から『田澤さんのイラストは絵本向きだと思う』と言われ、まずはその方の考えたストーリーに絵をつけてみたんです。それがうまくいったので、今度はまお君の夢を原作にしてみようという話になりました。

73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

――まお君の独創的な夢を絵にしていくのは大変ではなかったですか?
田澤さん 大変さは感じませんでした。10歳も73歳も夢の内容には変わりがないと、思いながら楽しんで描くことができました。

――田澤さんもこういう夢を見るんですか!?
田澤さん 見ますよ。夢は、不安や不満の表れだそうです。したがって、楽しい夢は見た経験がありません(笑)

――どちらかというと嫌な夢ばかりなんですね。今回の絵本の中で特に気に入っているシーンはありますか?
田澤さん 空を飛ぶ夢ですね!子供も大人も、やはり空を飛ぶのはロマンだと思います。

73歳のLINEスタンプおじいちゃん、今度はシュールな絵本出版に意欲

――絵本を作るのは以前からの目標だったそうですね。
田澤さん 絵本は空想の世界を表現することもできるし、それを通じて子どもたちに未来に想像力を伸ばしてもらうことができます。子どもたちに夢を持って日々を生きていってもらいたいと願っています。

――「ぼくのみたゆめ」は文字通り、夜眠っている間に見る方の夢を題材にしていますが、田澤さんがさっき夢は不安や不満の表れとおっしゃったように現実を反映している部分もありますね。まお君の夢からも「未知なもの」への不安に対して勇気を出して立ち向かう気持ちや、家族を守らなきゃ!という意志などを読み取ることができます。目を引っこ抜かれる恐怖ですとか(笑)
田澤さん そうです! 子どもたちが自分の目標に向かって日々を大切に生きられる世の中になれば、夜に見る夢も面白くなるはずです。
そういう未来を目指して描きました。

――田澤さんは10歳の頃どんなお子さんでしたか?
田澤さん 楽天的で、余り細かいことにこだわらなかったと思います。絵本は好きで、図書館や親に買ってもらったものでなく、従妹の持っている本を読んでいました。私の従妹は父親がおらず、母親の手で育てられたため、母親が働いている間の寂しさを埋めるために本が与えられていました。従妹にとっては絵本がかけがえのないものだったようです。当時の絵本は今のものより、正義や道徳を説くような内容が多くて、それが私の70余年の礎になっていると思います。
絵本はいつまでも宝物として残ります。

――この絵本をどんなお子さんに読んで欲しいですか?
田澤さん どんな子どもにも幅広く読んでもらって、自分の夢に向かってどんどん挑戦していって欲しいです。未来に視線を向けて読んでもらえれば幸いです。そして平和に暮らせる世の中が続くことを願っています。

――と、こうしてお話を伺ってきたこの本ですが、制作はされたものの出版社等は決まっていないんだそうですね。
田澤さん  そうなんです。興味のある方はぜひ公式サイトからご連絡ください。大手でなくても構いません(笑)NHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」に登場するような心ある出版社でも歓迎です。

――ぜひ実際にできあがった本を手に取ってみたいと思います。頑張ってください!
田澤さん 私自身、茨城県ひたちなか市にこんな有名人がいる。誇りだと言われるように頑張ります!残された一度の人生を悔い残らぬよう気合い入れて、まずは、個展を実現したいです。

73歳のおじいちゃんと10歳の男の子のコラボレーション、年齢差を感じさせないほど二人とも元気に夢を見続けている姿勢が素晴らしかった。まお君に田澤さんに対しての印象を聞いてみたところ、「すごく面白い絵を描く優しいおじいちゃん。おじいちゃんの描いたカッパとどんぐりが特に面白い。自分の本当のおじいちゃんも大好きだけど、田澤のおじいちゃんも大好き。おじいちゃんが一人増えたみたいで嬉しい」とのこと。ちなみにまお君が見た夢と田澤さんの描いた絵は「全然似てない。けどカラフルですごく面白い」のだとか。

二人が夢の世界を通じて気持ちを通わせた記録「ぼくのみたゆめ」の完成版、ぜひ読んでみたいと思った。心ある出版社の方どうか現れますようにと祈らずにいられない。
(ズズキナオ)


サイト情報:「73歳 田澤誠司おじいちゃんの夢をかなえるサイト