落合博満すらも笑顔にさせた広末涼子
4月に発売されたデビュー曲『MajiでKoiする5秒前』が球場に流れる中、グラウンドに登場した広末は、キャッチャー古田敦也(ヤクルト)のサインに向かって何度か首を振るジャスチャー。それに対して打席を外し、巻きのポーズで「早く投げろよ」と突っ込む落合。2016年のマスコミに対して口を閉ざすオレ竜GMの姿からは、想像のつかない笑顔とサービス精神。
そう、97年当時の広末涼子は、あの落合すらも笑顔にするスーパーアイドルだった。ちなみに、この試合の全パ4番はイチロー(オリックス)、MVPは清原和博(巨人)である。早いもので、あれから19年が経つ。
ところで、90年代後半に立て続けに制作され、今も一部マニアの間で「広末3部作」と語り継がれる映画がある。『20世紀ノスタルジア』97年7月26日公開 、『鉄道員』99年6月5日公開、『秘密』99年9月25日公開の3本だ。
トンデモ設定だった広末涼子の初主演作

初主演作となった『20世紀ノスタルジア』は、自称宇宙人の少年と広末演じる女子高生が夏休みにビデオカメラ片手に街に出て、高層ビルや東京タワーの20世紀遺産を撮影する……というなんだかよく分からない内容。なんだけど、このトンデモ設定映画で広末は第21回日本アカデミー賞の新人俳優賞を獲得している。
あの有名なドコモのポケベルCMの翌年に公開されただけあって、飛ぶ鳥を落とす勢いの広末が歌う「ニューロンバチバチィ~爆発するぅ~」というクレイジーな一節から始まる主題歌『ニューロンシティの夜』は、今聴いても凄まじい破壊力である。
高倉健の娘役を好演した『鉄道員(ぽっぽや)』

18歳から19歳というアイドルとしてはピークの年齢で迎えた翌99年、原作が直木賞作家の浅田次郎、主演は泣く子も黙る高倉健、主題歌は坂本龍一の娘・美雨というガチンコ映画『鉄道員(ぽっぽや)』では、高倉健の娘役(幽霊設定だけど)を好演。
原作小説は100万部を突破、第23回日本アカデミー賞の最優秀作品賞や最優秀男優賞を獲得し、広末本人も思い出の一作として今も挙げることの多い本作。
広末の濡れ場がある? 話題になった『秘密』

そして、鉄道員からわずか3カ月後の99年9月に公開されたのが、東野圭吾原作の『秘密』だ。「事故で仮死状態になった女子高生の娘の身体に、妻の魂が宿り夫と生活する」という無茶苦茶な設定で主演に抜擢されたのはまたも広末。
小林薫との濡れ場シーンがあると話題になり、映画館には東野圭吾ファンを差し置いて、東野幸治しか知らないような若い男達がこぞって駆け付けた。
リアリティがない役が多かった広末涼子
どういうわけか、これら「広末三部作」で広末の演じる役柄はすべて、リアリティがないキャラだ。自称宇宙人と街をフラつく女子高生、10数年前に死んだ娘の幽霊、母に身体を貸す自分は仮死状態の女子高生……。
それでも不可能を可能に、そのすべてを強引に形にしてみせ、なんと第23回日本アカデミー賞では、『秘密』で優秀主演女優賞、『鉄道員』で優秀助演女優賞をダブル獲得。
今テレビをつければ、そこに広瀬すずがいるように、あの頃は広末涼子が世紀末の日本映画界を席巻していた。21世紀に入ると、広末は奇行やできちゃった婚で世の中を賑わすことになるが、それはまた別の話だ。
ちなみに広末が入学した早大は、99年の男子受験者が前年比2,785人増。いつの時代もアイドルは男達を狂わせる。
『20世紀ノスタルジア』
監督:原将人 出演:広末涼子、圓島努、余貴美子、根岸吉太郎
キネマ懺悔ポイント:25点(100点満点)
隙あらば広末。とにかく広末。
(死亡遊戯)
(参考資料)
東スポ創刊50周年企画「時空自在」広末涼子入学騒動
※イメージ画像はamazonより20世紀ノスタルジア
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