
■森山直太朗/New Album『大傑作撰』インタビュー全文(1/2)
その名の通りどこを切っても傑作ばかり!
リード:
昨年、突如“小休止”と称して、半年ほど音楽活動から離れて世間を驚かせた森山直太朗。復帰後はすぐさまアルバム『嗚呼』をリリースしたほか、以前にも増してメディアへ積極的に出演するなど、休みを取り返しても余りあるほど八面六臂の活躍を見せている。そんな、懸命に、もはや命がけで音楽活動を続ける男・森山直太朗がデビュー15周年を記念してオールタイムベスト『大傑作撰』をリリース。初回限定盤にはタイムレスな名曲ぞろいの“花盤”に加え、森山のコアな魅力が詰まった“土盤”も併せて収められるほか、映像集として珠玉の名曲たちをライブでセッションし新たな命が吹き込まれている。魅力満載のベスト盤に込めた思いや休息によって何を得たのか、節目を迎えた今何を思うか……まで、ユーモアを交えて本音をたっぷり語ってくれた。
(取材・文/橘川有子)
ひと言では語り尽くせない、とても貴重な時間
――復帰後は目覚ましいご活躍ですが、今改めて“小休止”は森山さんご自身にとってどんな時間でしたか?
森山直太朗(以下、森山):それはもう、ひと言では語り尽くせない、とても貴重な時間でした。……って、ひと言で言えてるじゃん(笑)。
――あははは(笑)。小休止前の森山さんそのままでホッとしました。
森山:(笑)。語り尽くせない、ということですね。休みの間には念願だった山小屋を手に入れて、そこに籠ったりもしていました。今年でデビュー15周年を迎えるんですが、山荘に居る時はデビュー当初の“考えすぎる”自分に近い感覚がありましたね。
――“考えすぎる”とは?
森山:そこまでシリアスなものではなかったですが、やはり時間があるので「お前、何したいんだよ」みたいに自分に問いかけることが多かったし、その問いかけはこの先もずっと続いていくものだと思います。一方で、休み中は過去の整理ができました。今まで(多忙のため)どこかないがしろにしたり、問題をスライドしていたこと。または、忙しさにかまけたり、対人関係を理由に後回しにしてきたことなどなど……、何が自分自身との関係なのかといったことに向き合えた。山小屋ではひとりの時間が圧倒的に多くなり、情報量は少なくなりますからね。その中で、過去の自分を振り返るような時間がたくさんありました。それで、「オレ、こんなことにモヤモヤしてたんだ」ってちょっとおかしく思えてきたり、「あのことを未だに気にしてるんだな」とか、いろんなことが明らかになる感覚がありました。
――見ないようにしていたことが、目の前にまざまざと浮かび上がってくるような?
森山:そうですね。そうなるとある種、情けなくもなってくる。休み明けにいろんな方から「成長は?」「変化は?」と聞かれますが、おしなべて思うのはよりシンプルになったなと。無駄なものが削がれて、そこにあるものが見えた。その感覚は感応的なもので。
――感応的とはどういうことですか?
森山:「本来自分はこんなものが感覚として好きだったよな」とか。それについて誰かに馬鹿にされたり、否定されてもいいやって思えた。きっとこれまではどこか怖かったんでしょうね。でも、それが休むことでよりシンプルに立ち返れたし、それが『嗚呼』というアルバムになった。その流れの中で、1つ区切りをつけるようなオールタイムベストを作ったわけなんです。

僕らの楽曲には2面性がある
――奇しくも、今回のベスト盤でもこの15年を振り返り、自分と向き合うことになったのでは?
森山:そうですね。今回は通常盤として“花盤”を作り、初回限定盤として“土盤”の2枚組のセットという形になったんですが、それにも結構紆余曲折があって(笑)。
――何に手間取ったり、悩んだのでしょう?
森山:“花盤”の曲順だけでも御徒町(凧)とああだこうだと結構話しながら決めていきましたし、今回は基本的には一枚で完結させるというのに落ち着くまでも、スタッフを交えて話し合ったりもしたんですよ。
――なるほど。そもそも今回のベスト盤はどんなところからスタートしたのですか?
森山:僕も御徒町も最初は2枚組にするつもりでスタートしたんです。御徒町なんかは“油盤”vs“水盤”みたいなのも面白そうだねって、イメージを膨らませていたんですが……レーベルのスタッフとの話し合いで「ベスト盤はやはり多くの方に親しまれている森山直太朗の代表曲を集めたものが筋だと思います」と言われて。今はそれが真っ当な考え方なんだと思うんですが、その時は「ええ!? そうなの~」って感じで(笑)。
――代表楽曲を集めたのが“花盤”ですね。
森山:自分で言うのははばかられますが、普遍性のある、王道感のあるナンバー。「さくら(独唱)」のような結果的に間口が広がってたくさんの方の耳に届いた楽曲や、年月を経ても季節が巡ると毎年のように歌っていただけるような楽曲を集めたものです。ただ、僕らの楽曲には2面性があると思っているんですよ。
――森山直太朗の2面性とはどういう意味ですか?
森山:僕らのやってることってあくまでもカウンター。メインストリームではないと思っているんです。会社でいえば中小企業、『下町ロケット』なんですよ(笑)。王道はもちろん意識しつつも、自分たちがやっていて楽しいインタレスティングなもの……たとえば、今回やってる“感謝状贈呈式”みたいなものもそうなんですけど。それをやり続けないと聴き手に対しても失礼になるという話になりました。
――求めに応じるだけでなく、自分自身が面白いと胸を張れる作品でなければ、届ける意味がないと。
森山:ええ。なので今回は“花盤”と“土盤”を軸に制作しました。前者で先程言ったような曲を集めましたが、土台となる土や根っこがなければ花も咲かなかったんだよというのが“土盤”です。そこにはより僕らのアイデンティティが色濃く映し出されていると思いますね。さっき撮った動画コメントで「土盤は誰も知らないだろう曲ばかり」って言いましたが(笑)、僕らにとってはとても大事な楽曲だし、選ぶべき曲たちなんです。
――ひとくちにベストアルバムと言っても、いろんなこだわりがあるのですね。
森山:今回の『大傑作撰』を作る大きな意義として、僕は2つあると思っているんです。1つは“感謝”。こんな機会でもないと「ありがとう」なんて改めて言えませんからね。だから“感謝状贈呈式”をするし、ごく近しいスタッフにも言える。(すかさず、隣に座るマネージャーに「ありがとうな」と謝意を述べる森山。それに対して、苦笑いするだけのマネージャーという光景が実に微笑ましい)
――スタッフといい関係なんですね(笑)。
森山:15周年の期間中は、のべつまくなし「ありがとう」って言えるのが楽しくて(笑)。で、もう1つの意義ですが、記憶の塗り替えをすることです。これまでに僕の歌を聴いてくださった人の中には、たとえば「夏の終わり」で止まってしまっている人もいらっしゃるかもしれない。逆に「若者たち」で知ってくださった人がいるかもしれません。そんな方々に、この作品を聴いていただくことによって「他にもこんなに面白い曲があるんだ」と思っていただけるんじゃないかなと。この作品はツアーへと繋がっていくので、ライブはまさにリアルタイムに行われることですから、曲の世界観を含めて森山直太朗のリアルが伝わればいいなという思いがあります。
――インタビュー2へ
≪リリース情報≫
Best Album
『大傑作撰』
2016.09.21リリース
【初回限定盤】(CD+DVD)
UPCH-29225 / ¥4,536(税込)
【通常盤】(CD)
UPCH-20426 / ¥3,024(税込)
[収録曲]
●花盤
1. 夏の終わり
2. 生きてることが辛いなら
3. どこもかしこも駐車場
4. 花
5. 若者たち
6. 風花
7. 愛し君へ
8. フォークは僕に優しく語りかけてくる友達
9. 嗚呼
10. 小さな恋の夕間暮れ
11. 太陽
12. さくら(独唱)
13. 日々
14. 生きとし生ける物へ
15. 虹(2016 ver.) ※新録
●土盤 ※初回限定盤ボーナスディスク
1. レスター
2. さなぎの時代
3. 今が人生
4. 君は五番目の季節
5. シルビア
6. 坂の途中の病院
7. 夕暮れの代弁者
8. 僕らは死んでゆくのだけれど ※初CD化
9. 優しさ
10. うんこ
11. よく虫が死んでいる
12. コンビニの趙さん
13. 魂、それはあいつからの贈り物
14. 12月(2016 ver.) ※新録
<DVD> ※初回限定盤特典
●Studio Session 2016 ~直太朗的録音箱集友楽~
1. 夏の終わり
2. ラクダのラッパ
3. どうしてそのシャツ選んだの
4. 明けない夜はないってことを明けない夜に考えていた
5. 涙
6. どこもかしこも駐車場
7. 未来 ~風の強い午後に生まれたソネット~
8. 声
●Interview 「森山直太朗ってなんだろう」
~15年をめぐる、あるひとつの考察~
≪ライブ情報≫
【森山直太朗 15thアニバーサリーツアー『絶対、大丈夫』】
<前半> ※後半は後日発表予定。
2017年1月27日(金) 埼玉・川口総合文化センター リリア メインホール
2017年1月28日(土) 埼玉・川口総合文化センター リリア メインホール
2017年2月4日(土) 山梨・コラニー文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
2017年2月5日(日) 群馬・ベイシア文化ホール 大ホール
2017年2月15日(水) 山形・酒田市民会館 希望ホール
2017年2月19日(日) 和歌山・和歌山市民会館 大ホール
2017年2月25日(土) 千葉・市原市市民会館
2017年2月26日(日) 栃木・佐野市文化会館 大ホール
2017年3月4日(土) 神奈川・神奈川県民ホール大ホール
2017年3月10日(金) 愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
2017年3月12日(日) 山口・防府市公会堂 大ホール
2017年3月19日(日) 大阪・フェスティバルホール
2017年3月20日(月・祝) 大阪・フェスティバルホール
2017年3月25日(土) 福岡・福岡サンパレス
2017年3月26日(日) 大分・日田市民文化会館 パトリア日田
2017年4月1日(土) 高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール
2017年4月2日(日) 岡山・倉敷市民会館
2017年4月8日(土) 石川・ 北陸電力会館 本多の森ホール
2017年4月9日(日) 福井・越前市文化センター
2017年4月15日(土) 秋田・秋田市文化会館
2017年4月16日(日) 岩手・盛岡市民文化ホール
2017年4月20日(木) 北海道・だて歴史の杜カルチャーセンター 大ホール
2017年4月21日(金) 北海道・札幌市教育文化会館 大ホール
2017年4月23日(日) 北海道・函館市民会館
2017年4月27日(木) 東京・中野サンプラザ
2017年4月28日(金) 東京・中野サンプラザ
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