脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり
8話はざっとこんな感じ
潔(高良健吾)と姉のゆり(蓮佛美沙子)が結婚。
「こうしてすみれ(芳根京子)の初恋は終わりました」(ナレーション/菅野美穂)
展開、速っ
7話で恋を意識して、8話で終了。
だがすみれはすぐに、のちの夫(1話ですみれの横にいるのが永山絢斗だから見てる人はすぐわかるだろう)になるもうひとりの幼馴染・紀夫(永山)くんに出会ってしまう。
姉ゆりも言ってる「ここまで早かったわー」(自分の結婚のことだが)。うんうん、本当に。
潔が養子だったことも、25年間秘密になっていて、ようやく明かされるのだ。いったいなぜこんなに展開が速いのか。
そのわけは、モデルになっているファミリアの創設者・坂野惇子について書かれた資料がほとんどないからだと想像する。
「べっぴんさん」がはじまる数ヶ月前まで、予習しようにも、資料らしい資料は株式会社ファミリア編の「上品な上質」(ダイヤモンド社)しかなかった。
その本も、坂野のことはほぼ書かれていなくて、商品の話ばかり(ただ掲載された商品写真はどれもかわいらしく眼福)。それが9月になると、一気に数冊関連書籍が発売された。
中央公論社からノンフィクション作家・中野明による『ファミリア創業者坂野惇子 「皇室御用達」をつくった主婦のソーレツ人生』、KADOKAWAからは青山誠による『坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」』が出た。あとムック本で、メディアソフトから坂野惇子の人生「べっぴんさん」の波乱なる生涯と真実』と「べっぴんさん 坂野惇子の生」(三栄書房)が出た。
この中で、一番、詳しく調べて書いてあるのは「ファミリア創業者坂野惇子」だが、245ページある本文中、29ページめにすでにのちの夫との出会いが書いてあり、36ページで結婚している。ムック本の年表でも誕生のあとはすぐ結婚になっている。
視聴率がいきなり10%台に
ドラマのモデルになっているファミリアは神戸発の子供服メーカーで、ちょっと高価な子供服として知られている。スヌーピーのライセンスを最初にとった会社でもあり、銀座にも店舗があって、知る人ぞ知る存在ではあるが、これだけ資料が出ていないということは、商品は知っていても、創立者に興味をもつ人は多くないと見た。
そのせいか、ドラマの視聴率も初回は21・6%だったが、7日に放送された第5話18・3%、8日の6話も18・7%。週明けの7話も18・7%と20%を切ってしまっている。前作「とと姉ちゃん」がほぼ20%以上だったことに比べるとトーンダウンしてしまったことは否めない。
展開は速いとはいえ、ストーリーや人物の心情は丁寧に描かれているのでもったいない。
例えば、ゆりに結婚したいと言われた潔が招集されたことを理由に断るが、お父さん野上正蔵(名倉潤)は「だからこそ見えるものもある」と言って結婚をすすめる。
潔が養子だったことをずっとすみれたちに言わないできたのも、五十八の思いやりとも考えられなくもない。
そして、紀夫がすみれと再会したとき、目を伏せるのは、7話ですみれが友達と恋の話をして「恋したらね、相手の顔がまっすぐ見られなくなるの」と言っていたこととリンクしている。子供の頃に、すみれに恋したとき本を落とした紀夫は、再会したときも本を落とす。展開は速いけれど、抑えるところは抑えているのだ。
8話は、中村玉緒に本田博太郎と、濃いメンツも続々と登場した。
少ない資料からどんな物語を生み出すのか。これからに期待している。
(木俣冬)