
このドラマの売りはなんなのだろうか?契約結婚という特殊な設定、主演・新垣結衣の人気、散りばめられた小ネタ、様々な理由はあると思うが、第2話では津崎平匡(星野源)が醸し出す“童貞感”について注目してみたい。
第1話での津崎は、ハッキリとした物言いや、偏った思考から童貞というより変人という印象の方が強かった。家事代行サービスでやってきたみくりが、あまりにも若いことに驚き数秒間固まってしまうなど“童貞”らしい行動も確かに取っているのだが、いかんせん見た目が星野源。童貞より変人の印象が勝って当然。
星野源が演じる童貞
しかし、第2話は“プロの独身”と呼び方を変えた津崎の童貞感が随所に見られた回となった。まず、お互いを名前で呼ぶ練習をするシーン。普通、童貞の役を与えられたら「みみみ、みくみく、み、みくりん!」など、ドモッてしまうキャラクターを作りがちだが、星野源演じる津崎は違う。呼ぶ時は「みく・・・さん付けでもいいですか?」ぐらいに留め、みくりに「平匡さん!」と呼ばれた時に変な間を作ってしまうという部分で童貞感を演出している。
これは、津崎が女性と喋りなれていないタイプの童貞ではないということだ。自分の意見はしっかり伝えれるし、もしかしたら嫌われてしまうかもしれない様な事も平気で言える。なんなら一般的な男性よりもかなり弁が立つタイプと言ってもいいだろう。
しかし、それは恋愛という要素が一切入っていない時の話。
夢を見ない童貞
両親との顔合わせを経て、みくりは少し罪悪感を感じていた。結婚を喜ぶ両親を騙してしまったことが理由だ。しかし、津崎の意見はまるで逆だった。嘘を吐いてでも両親を安心させる事が出来た事を有意義に感じているというのだ。ハンガリーの諺「逃げるは恥だが役に立つ」を引用して、みくりを前向きにしようと励ますのだが、これはとても悲しい事。
なぜなら、津崎は一生彼女が出来る訳がないと確信していたという事に他ならないからだ。「あ〜このまま一生彼女出来ないのかなぁ?いつか結婚してみたいなぁ」ではない。「俺は一生彼女できないから平穏な生活を心がけよう」なのだ。彼女を作る努力をせず、彼女が出来ない前提で生活をしていたのだ。もう一度言う。
壊れ始める平穏。良い意味で。
ある日、温厚で明るく比較的騙しやすい日野(藤井隆)を招いたはずが、勘の鋭い沼田(古田新太)と風見(大谷亮平)が家に遊びにきてしまう。このせいで冷静沈着なエリートサラリーマンの顔はいとも簡単に剥がれ落ちる。ちょっとした事で慌てふためき、声はすぐに裏返ってしまう。
しかし、これはとても前向きな事。なぜなら、今まで平穏に暮らすことだけを考えて生きてきた津崎が、無縁だった恋愛に関しての刺激を受けたからだ。沼田から牽制のように女性関係の話を振られるのも、冗談で「一緒に寝ます?」とみくりにからかわれるのも、みくりの匂いが染み付いたベッドで寝るのも、津崎が恋愛というものを意識する良いきっかけになる。「逃げるは恥だが役に立つ」という言葉を盲信して避けてきた部分と、やっと向き合うことが出来るのだ。よかったよかった。
そして本日25日の第3話。
(沢野奈津夫)