そんな、いわゆる「お仕事ドラマ」と言われるジャンルは、テレビドラマでは定番だが、お仕事ドラマの中でも1990年代の金字塔ともいうべきなのが、TBS系で放送された「HOTEL(ホテル)」シリーズだろう。
高嶋政伸の知名度を上げた「HOTEL」
ドラマの主人公には、いまやベテラン俳優のポジションになっている高嶋政伸。当時は若手の新人俳優としての起用だったが、このドラマを機に大きく飛躍したのは言うまでもない。ドラマの原作は、数々の名作で知られる漫画家・石ノ森章太郎だった。
ドラマシリーズ中では、毎回テーマとなる騒動に「姉さん、事件です!」という主人公の語り口からはじまるスタイルが名物にもなって、その知名度を一気に広げたともいえる。
しかしながら、この長期シリーズとなっていったドラマ「HOTEL」には、その放送中から、終了後にいたるまで偶然とは思えぬほどの関連した不幸のトラブルに見舞われて、不穏な呪いがあると囁かれる事態までになってしまう。
「HOTEL」関係者を襲ったトラブル
メインキャストであった松方弘樹が愛人問題で離婚、同じく菊池桃子がプロゴルファーの夫だった西川哲氏の借金トラブルで離婚。
放送間もなく「HOTEL」社長役であった丹波哲郎、天ぷら屋主人役の名古屋章がともに肺炎で死去してしまう。さらには1999年に、フロント役で出演していた俳優・沖田浩之が自殺をはかり、死去(満36歳没)。
そのほかにも、ベルボーイ役として出演していた元光ゲンジの赤坂晃が、覚せい剤取締法違反で逮捕されたため、続編が不可能になったなどというエピソードもある。
そしてトラブルと無縁とも思われていた、主人公の赤川一平役・高島政伸も、モデル美元とのスピード婚するも、数年経たずに美元の金銭問題などが問題となり「芸能生活を投げ打ってでも離婚したい」と訴えながら泥沼裁判を経て、2012年に離婚するに至っている。
実はこれらトラブルの連鎖は、その他の関係者スタッフにも広がっていたようで、左遷や急病・急死などが続いたようだ。原作者であった石ノ森章太郎も1998年に心不全により、満60歳で死去している。
長期間でドラマ制作を続けていけば、俳優やスタッフにも様々なことが起こるのが当たり前かもしれないが、「姉さん、事件です!」とメッセージを打ち出して、現実でもこれだけのトラブルに見舞われた作品もなかったのではないだろうか。
ちなみにこのドラマでの語りで有名な「姉さん」は、たった一度だけ出演した、沢口靖子が演じたそうだ。
(空町餡子)
※イメージ画像はamazonよりHOTEL(1) (石ノ森章太郎デジタル大全) Kindle版