脚本:渡辺千穂 演出: 新田真三

「ものごとはまっすぐに見るもんです。
(麻田/市村正親)
はい、ドラマもまっすぐ見たいと思います。
まずは25回はこんな話
主人公すみれ(芳根京子)と友人三人(百田夏菜子、土村芳、谷村美月)がはじめたベビーショップあさや。お客様第一号はすみれのお父さん五十八(生瀬勝久)だった。
だが、せっかくお客さんが来たにもかかわらず値段を考えていなかった。考えるが、最初は開店記念のプレゼントということに。
順調な滑り出しを迎えたすみれの元に、姉のゆり(蓮佛美沙子)がやって来た。夫の潔(高良健吾)が警察に捕まってしまったのだ。
ヒロインは学習しない
すみれは最初にあさやで自分の手作りを置いてもらったとき(16回)と同じように、値段を考えてなかったことに対してぽかーんとした顔になる。
お父さんに怒られて値段を考えるも考えつかず、今日だけ特別にプレゼントすることに。喜んだお客さんは口々にみんなに宣伝すると言う。
ゆるい状況に目を剥くお父さんだが、商売は信用大事と思ってきた昔の自分にすみれはそっくりと内心にんまり。
主人公が学習しないのも朝ドラの定番。エキレビ!では「まれ」「あさが来た」「とと姉ちゃん」と毎日レビューを続けているが、彼女たちが学習せず、同じところをぐるぐるまわっていることについて必ず書いている。「とと姉」では、町で勝手に店開きしているとそのあたりを仕切ってる人に所場代を請求されることを2回体験する。
150回以上ある、女の子の人生を描くシリーズであるから、同じ失敗をしてしまいながらもちょっとずつ進んでいく。「3歩進んで2歩下がる」くらいがいい塩梅ということだろう。
ただし、すみれが成長している部分もある。しゃべりが得手でない彼女が、お客さんに懸命に言葉で説明しようと努力している。それを見ていると微笑ましい。
演出は「あさが来た」もやっていた人
明美がショーウインドウを見つめ、お金持ちのお嬢様たちと使用人の自分が同じ立ち位置で仕事することに迷いを口にするとき、話を聞いている麻田(市村正親)は明美と反対のほうを見ている。奥行きある通りの手前に市村、後方に谷村が違う方向を向いて立っている姿はリアルじゃないけど画になる。見た目を単調にしないように気を使って、舞台的な様式美を採っているのが良い。
5週の演出の新田真三は「あさが来た」でも明快な演出をしていた。
(木俣冬)