“あいたい~ あいたい~”あの泣き歌を歌う林部智史ってどんな人? ロングヒットの秘訣とは?

■林部智史/Single『あいたい』レビュー

TVから流れてくる“あいたい~ あいたい~”という透明感ある歌声に「?」と思ったのが第一印象、そして、画面を観て「意外と若い?」と思ったのが次の印象(笑)。“林部智史”というその名前は知らなかったが、その歌声には何気なくTVをつけていただけの私を画面に向き直させるくらいのインパクトがあった。


そして、ちょっとインターネットで調べてみたところ、“EXILE ATSUSHI等を輩出した、ESPミュージカルアカデミーヴォーカルコースを首席で卒業。しかしどこからも声がかからず、ディズニーシーでツアーガイドとして働く。そんな中、『THE カラオケ★バトル』への出場がきっかけで再度アーティストへの道を歩み始める。圧倒的な歌唱力が高く評価され、2015年10月に放送された年間チャンピオン決定戦では、番組史上初となる予選・決勝共に連続100点を記録し、2015年年間チャンピオンを獲得”となっていた。私はこのカラオケ番組を観たことはなかったが、さらに調べてみると、まだデビューをしていなかった番組出演時から、その抜群の歌唱力に容姿も相まって、熱狂的なファンが続出。番組出演終了後の今年2月に「あいたい」で晴れてデビューすることになったそうだ。そして、その「あいたい」がロングセールスを記録し、私の耳にも彼の歌声が届くことになった。では、「あいたい」にはどんな魅力があるのだろうか? 音楽ライターの松浦靖恵氏に分析してもらった。

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ロングセールスを記録している林部智史のデビュー曲「あいたい」が、“今、一番泣ける歌”として注目されているのだという。なぜ「あいたい」がこんなにも多くの人の感情を揺さぶってしまうのか。それは林部智史が「あいたい」の中に描かれた主人公の心情や人生を丁寧に紡ぎ、この歌を自分の手のひらで優しくそっと包みこむようにして聴き手の日々に差し出しているからだろう。彼の歌声は会いたくても会えなくなってしまった人と共にいた大切な日々を静かに蘇らせ、その人が自分の人生の中に存在していた事実を記憶の底から優しく包みながらすくい上げてくれる。
昨日と同じように今日が当たり前のようにやって来るわけじゃない。会いたくても会いないのは、何かしらの理由がそこには存在する。生きていれば誰にでもいつかは訪れる永遠の別れがある。そんなことは頭の中ではわかっていても、その運命や真実を突きつけられた時、人は会いたいという切なる思いと背中合わせにあるひとつの後悔を心の中に抱えるのだろう。会いたかったけれど会えなかった理由や言い訳を自分に何度も言い聞かせている人もいるだろう。もう二度と会えないとわかっていたら、もっと会っておけばよかったと自分を責めてしまう人もいるだろう。“会いたい“という言葉はこんなにもシンプルな言葉なのに、そこにどれほどの思いや傷や深い愛情が刻まれているのかは、その本人にしかわからないからこそ、林部の繊細でありながらも芯を持ったまっすぐな声で何度も繰り返される“あいたい”という言葉が、聴いた人たちのそれぞれの“会いたい”という切なる願い、心の奥底にしまいこんでいた思いにまっすぐに届き、自分たちが歩いてきた人生の様々な出会いや別れと重なり合い、思わず感情を揺さぶられてしまうのだろう。そう、「あいたい」はこの歌で泣きたいのではなく、泣きたくても泣けなかった人が、泣くつもりもなかったのに泣いてしまった“泣ける歌”なんだと思う。

林部智史自身のこれまでの人生にも“あいたい”と思う人が何人もいるだろう。彼にとってもこの歌は自分の心の奥底にしまった思いを浮上させることのできた歌であり、歌手デビューという夢を叶えたその先を生きていく彼の日々に光を射してくれた歌になった。
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この分析を読んで、少しでも“林部智史”に興味がわいたようであれば、とにかく一度、その歌声を聴いてみてほしい。聴いてみたら、その意味がすぐにわかるはずだ。


林部智史 「あいたい」

≪リリース情報≫
Single
『あいたい』
2016.10.12リリース

【スペシャル盤】(CD)
AVCD-83703 / ¥1,000 (税抜)

[収録曲]
1. あいたい
2. 糸
3. 木蘭の涙
4. あいたい(Instrumental)

【デラックス盤】(CD)
AVCD-83704 / ¥2,000 (税抜)

[収録曲]
1. あいたい
2. 憂いうた
3. ヒーロー
4. あいたい(Instrumental)

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