
京都のシンボル三条大橋とパリを象徴するエッフェル塔
かつて永谷園のお茶づけ商品におまけで入っていた浮世絵カードが復活した。今の20歳より若い世代は馴染みがないかもしれないが、1965年から97年までの約30年間、永谷園のお茶づけ商品には浮世絵や海外の名画を印刷したカードが、おまけとして封入されていた。「東海道五拾三次」、「喜多川歌麿」「東洲斎写楽」「富嶽三十六景」「ルノワール」「ゴッホ・ゴーギャン」「印象派(マネ、セザンヌ、ドガ、スーラ)」「シルクロード・中国編」「竹久夢二」「日本の祭」の全10種類を展開していた。
今回、歌川広重の「東海道五拾三次」のカードが復刻。各宿の浮世絵が商品に1枚ずつ付いてくる。

全55種ある「東海道五拾三次」フルセット
浮世絵は海外での評価も高い。特に19世紀後半のフランスでは、モネやゴッホなど多くの画家が、当時開国により日本から流入した浮世絵の作風に影響を受け、ジャポニスム(日本趣味)という呼ばれる流れが起きた。現在でもしばしば浮世絵の企画展が開かれ、人々の関心を集めている。そんな歴史的にも接点があるフランスで、同じ浮世絵でも永谷園のお茶づけに付く浮世絵カードはどのような感想を持たれるのか。実際に聞いてみた。

以前パリで開かれた「HOKUSAI」展の様子
「フランスでも発売するの?」と興味
実際のカードをフランス人に見せつつ周囲で聞き込んでみた結果、評価は総じて前向きだった。
「浮世絵? 好きだよ、綺麗だよね」「とても美しいね」「少しでも教養あるフランス人であれば、浮世絵は誰でも知っているよ」「これ北斎? 違うの? ああ広重ね」「浮世絵はフランス人にとても人気さ。近年パリでも何度か大規模な展覧会が開かれて、長蛇の列になったのは知っているだろ」「北斎や広重はフランスでいうピカソみたいな存在なんでしょ?」等々。
お茶づけに対してはフランスでは馴染みのない食べ物であるため「ブイヨン?」と問われるなど、説明に少し時間を要したが、浮世絵カードについては「各1枚がこの食品に封入されているのね、いいアイディアね」「フランスでも発売するの?」と興味を持っていた。

五街道の始まり日本橋とパリから各地への距離の起点となるノートルダム大聖堂
発端は検品用の紙だった
そもそも、なぜ名画が印刷されたカードを、お茶づけに入れることになったのだろうか?
永谷園ホールディングス広報によれば、1952年に発売された「お茶づけ海苔」は、現在では生産工程の大部分が機械化されているものの、50年ほど前までは人の手による生産を行なっていたそうだ。その際、商品を検査確認した証として、確認印を押した検印紙を封入していた。どうせ検印紙を入れるなら、伝統的・文化的価値の高い絵画カードにしようということで、このような形になった。
検印紙の役目を果たせ、お茶づけという身近な商品に名画カードを封入することにより文化普及の一翼も担える一石二鳥の試み。それが今回再び行われることになったのはなぜか?
同広報によると、和食のユネスコ無形文化遺産登録や2020年東京五輪・パラリンピック開催に伴い、以前に増して日本文化が国内外から注目されている。これら再認識されている日本文化を、身近などころから感じられる機会になればと思い、今回の決定に至ったそうだ。東海道五拾三次を選んだ理由は、以前実施していたプレゼントキャンペーンでもっとも応募が多かったシリーズであり、かつ近年浮世絵の人気が高まっていることから、日本文化を象徴するものとして採用した。

カードが封入されている商品は、お茶づけ海苔(4袋入・8袋入)、さけ茶づけ(3袋入・6袋入)、梅干茶づけ(3袋入・6袋入)、わさび茶づけ(3袋入・6袋入)、たらこ茶づけ(3袋入・6袋入)の5商品。あわせてパッケージに付いている応募マークを集めて送れば、「東海道五拾三次」フルセットがもらえるプレゼントキャンペーン(2016年11月~2019年1月31日)もやっている。今月11月から順次、カード入り商品に切り替わっていくそうなので、以前のカードを知っている人も、そうでない人も、購入しみてはいかがだろうか。
(加藤亨延)
【永谷園】