秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

■秦 基博/【HATA MOTOHIRO 10th Anniversary ARENA TOUR “All The Pieces”】ライブレポート
2016.11.01(TUE) at 横浜アリーナ
(※画像18点)

「今回のツアーにはすべての“ピース”を詰め込みました」

今年11月8日でデビュー満10周年を迎えた秦 基博。それを記念した『HATA MOTOHIRO 10th Anniversary ARENA TOUR“All The Pieces”』は、自身初のアリーナツアーとして全国6か所7公演が行われた。
初日は11月1日、秦の地元・横浜にある横浜アリーナ。超満員の1万2000人が駆けつけた。

まず最初に定位置についた佐藤帆乃佳率いる8人編成の“All The Pieces Strings”が奏でる演奏をバックに、バンドメンバーのあらきゆうこ(Dr)、鈴木正人(Ba)、皆川真人(Key)、弓木英梨乃(Gt)が登場。最後に秦が姿を現すと、観客の拍手がひと際大きくなった。そして一瞬の静寂を挟み、スッと小さく息を吸い込んだ彼の口から放たれたのは、3rdシングル「青い蝶」。初めはじっくりと聴き入るように着席していた観客も、続く「キミ、メグル、ボク」では総立ちに。「ヨコハマー!」と呼び掛ける秦の表情も笑顔だ。
秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

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秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

その後も「色彩」「フォーエバーソング」「赤が沈む」など初期の楽曲が披露されるが、今年春に開催された全国ツアー『HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2016 ―青の光景―』を一緒に廻ったメンバーとの演奏は、その息もバッチリ。また、ステージに数百本と立ち並んだV-TUBEというLED電飾が楽曲ごとにその彩りを変え、絶妙な演出を添える。前半ではとくに、下から立ち上がるような虹色がポップで華やかな「色彩」や、水面が揺らめくような照明で、まるで水中にいるかのような錯覚にとらわれた「ディープブルー」が印象的だった。

10周年のアニバーサリーということで、本ツアーではMCもいつもとは趣向の異なる企画がいくつか登場。まずはバンドメンバーに「10年間で一番印象的だった秦 基博について」を振り返ってもらうコーナーで、初日のこの日はあらきゆうこが担当。
事務所の先輩でもあり、デビュー当時からずっと秦を見てきた彼女が挙げたのは、今年行われた『Augusta Camp 2016 ~produced by 秦 基博~』。「それぞれのアーティストに合ったアレンジで、すごくよかった!」と大絶賛したのに対し、秦は「10年知ってるのに意外と近々のことだった(笑)」と返し、観客を笑わせた。
秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

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秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

また、中盤のMCでは『GREEN MIND 2014』で登場したコーナー“みどりの窓口”をアレンジした“ピースの窓口”を開設。これは本人曰く「10年間で築き上げたコネクションをすべて使って(笑)」、各公演1組ずつ、秦とゆかりのある著名人が質問メッセージを寄せるもので、初日は同じ神奈川県出身のいきものがかりがスクリーンに映し出された。彼らからの質問は「厚木・海老名の魅力についてプレゼンしてください」というもの。「ん~……」と頭を悩ませつつ、「とにかく人がいい」「空気がおいしい」「電話帳に登録すると最初のほうにくるからすぐに連絡が取れる」など、絶妙な(?)プレゼンを披露した。

実は“ピースの窓口”コーナーの前に、アリーナの観客席を歩いてセンターステージへと移動していた秦。360度を観客に囲まれたスペースで一人ギターを持ち、歌い始めたのは「アイ」。イントロの1音が鳴っただけで、客席のあちこちから静かな喜びの声が漏れるこの楽曲は、紛れもなく秦 基博を代表する1曲だ。最近発表されたニュースによると、「アイ(弾き語りVersion)」が2017年3月公開の映画『しゃぼん玉』の主題歌に決定したとのこと。リリースから6年が経っているにも関わらず、このような吉報が届くのは、この曲が普遍的なメロディとメッセージを持っているからに他ならない。誰もができることではない、類い稀な才能の現れに思えるが、それでも彼はいつも通り丁寧に、そして優しく、「アイ」を歌い上げるのだった。
その後、日替わり曲として「Sally」を選んだ秦は、歌い終えるとそれまで着ていたジャケットを脱ぎ、再び客席の間を通ってステージへと戻って行った。
秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

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ひとあし先に始まっていたバンドの演奏に秦もギターで合流し、ソロ回しを披露すると、ライブもいよいよ後半戦へ。デビュー曲「シンクロ」を皮切りに、「Q & A」や最新シングルに収録されている「終わりのない空」など、新旧を織り交ぜた楽曲で観客を盛り上げていく。また、途中には秦のリクエストで観客のウェーブが客席をぐるりと1周したり、「スミレ」ではMVでおなじみのダンスを観客も一緒になって踊るなど、会場の一体感もより強固なものに。

そこに投入したのが、彼自身「10年の中でも一番歌ったんじゃないかと思う」と話す「鱗(うろこ)」。彼が「一番歌った」ということは、私たち観客も「一番聴いた」と言っても過言ではないだろう。それなのに、イントロのピアノを聴いた瞬間、徐々に重なっていくストリングスとバンドサウンド、サビで一段と伸びやかに響く声、後半に入るギターソロ、終盤に向け増していくグルーヴ――その一つひとつに今も心を打たれる。それはなぜだろうと考えたとき、ここでもまた「普遍性」という言葉が思い浮かぶと同時に、彼自身が歌うたびに想いを重ね、人生を重ねて、楽曲を成長させ続けているからだろうという考えに達した。
秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

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そんななか、ステージから放たれたのは本編最後を締めくくる「70億のピース」。秦が10年続けてきた今だから書くことができたという“平和”がテーマになっているこの曲は、今年10月にリリースされたばかりの新曲だが、「鱗(うろこ)」や他の楽曲と同じように、5年後、10年後と時を経ても変わらずに、むしろ今以上に、聴く人の胸を打つものになっているはず。じっとステージを見つめて聴き入る観客の姿を見て、そう思わずにはいられなかった。

アンコールではストリングスと自身のギター1本で圧巻の歌声を響かせた「朝が来る前に」。
さらに再びバンドメンバーを呼び込むと、自身最大のロングヒットを記録し、秦の名を一躍全国区に広げることになった「ひまわりの約束」を披露。まさに痒いところに手が届くセットリストで、新旧ファンを魅了した。
秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

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秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

公演ライブの冒頭で「今回のツアーにはすべての“ピース”を詰め込みました」と話した秦。その言葉、そして“All The Pieces”というタイトル通り、弾き語りやバンドスタイル、ダブルカルテットを加えた編成など、本公演では彼がこの10年間に手にしてきたものすべてが体現されていた。

さらに、来年5月4日には自身初のスタジアム公演となる横浜スタジアムでのワンマンライブを開催することが決定! 12月23日に本ツアーを完遂したばかりの彼だが、秦 基博の新しい旅はすでに始まっている。
(取材・文/片貝久美子)
秦 基博 自身初のアリーナツアーで10年の歩みのすべてを体現/レポート

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≪セットリスト≫
1. 青い蝶
2. キミ、メグル、ボク
3. 色彩
4. フォーエバーソング
5. 赤が沈む
6. ディープブルー
7. Rain
8. やわらかな午後に遅い朝食を
9. アイ
10. Sally
11. シンクロ
12. Q & A
13. 終わりのない空
14. グッバイ・アイザック
15. スミレ
16. 鱗(うろこ)
17. メトロ・フィルム
18. 70億のピース
<ENCORE>
1. 朝が来る前に
2. ひまわりの約束

≪ライブ情報≫
■2017年5月4日(木・祝)[みどりの日] 横浜スタジアムでのライブが決定!

■Daiwa Sakura Aid Dedicate to - gang451- 星屑の隙間に木村基博
2017年2月12日(日)大阪城ホール
出演:スターダスト☆レビュー、KAN、スキマスイッチ、秦 基博

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