
巨人から逃れるために人類が壁の中で生活をする。
そんな斬新で過酷な設定で大人気の漫画『進撃の巨人』。
数多くの伏線に、生きるということの厳しさ、そして立体機動装置を駆使した激しいアクションが人気の作品ですが、今回はその中でも「大人の男性」に分類される二人の男性のうちどちらがモテるかということを考察させて頂きます。
1人目は「エルヴィン・スミス」。
2人目は「リヴァイ」。
二人とも調査兵団の先輩として主人公のエレンの前に登場するキャラクターで御座いますが、果たしてこの二人が現実にいた場合、どちらの方がモテるのでしょうか?

二人に共通する魅力「目的のためなら手段を問わない」
この二人はいわゆる少年漫画の中では、非常に珍しい特徴を持っていると言わざるを得ません。
それは「目的のためなら手段を問わない」ということ。
多くの少年漫画において「目的のためなら手段を問わない」というのは「悪役」のセリフで御座います。101人を救うためならば100人を殺すことも厭わない。こんな行動は間違いなく悪役の行動理念であり、少年漫画の王道「週刊少年ジャンプ」の主人公であれば『デスノート』の夜神月くらいしかこんなことを言いません。通常の少年漫画の主人公であれば「俺は全員救ってみせる!」と言うのが普通でしょう。『ONE PIECE』のルフィは間違っても「ウソップ、悪いんだけどゾロとサンジを救うために死んでくれねえか?(ドンッ!!)」とは言いません。
ですが、現実は漫画ではありません。そして『進撃の巨人』の世界もまた普通の漫画のようにそんな理想論が通用する世界ではないのです。101人を救うために100人を殺すことを躊躇っていては、結局「201人」が死んでしまう世界。そんな世界においては「101人を救うために100人を殺す」という判断を冷徹に下せる人間でなくてはならないのです。
もちろん、201人全員が救えるのならばそれに越したことはないのですが、残念ながら人間はそんなに有能では御座いません。
自分に今できる最善を冷徹にこなす。これこそが過酷な世界において求められる能力なのかもしれません。
そして残念ながら、現実もまた『進撃の巨人』ほどではないにしても過酷な世界であることは間違いないのです。
だからと言ってモテるとはまた別問題
と、エルヴィンとリヴァイの「目的のためなら手段を問わない」という性格を評価させて頂きましたが、それが現実的にモテるかと言えば話は全くもって別問題で御座います。
というのもエルヴィンやリヴァイのように「調査兵団として外の世界を知っている人間」だからこそ「ここで100人を殺さなくてはいけない」という非情な現実を知ることが出来るのです。現実世界でも言えることですが「誰かを切らなくては、全員が死んでしまう」という非情な現実をしっかりと認識出来る人間はごく少数に過ぎません。
老若男女問わず、多くの人間はそんな非情な決断をした人間を「ただの100人殺し」としか判断しないのです。「全員を救うことが出来る魔法のような手段」が存在すると思い込んでしまう。
時には「冷徹な判断を下せずに、全員を殺してしまった無能」の方が「人間味のある人」と判断することすらあるのです。

現実ではとても頼りがいのある男性に
ですので、おそらくエルヴィンもリヴァイも、現実が過酷であればあるほど世間からは「冷徹な独裁者」のような評価を受けることでしょう。すると当然ですが多くの人からは嫌われる、つまりモテることは御座いません。
しかし、世の中というのはそこまで絶望的なものではなく、彼らが悩みに悩んで苦しみぬいて「人を切った」ということを理解できる人も少なからずいらっしゃいます。そういう大人の女性からであれば、エルヴィンもリヴァイも間違いなくモテることでしょう。
と言うのも、「目的のためなら手段を問わない」という男性が自分の夫になったとき、これほど頼りがいのある男性は他におりません。普段どれだけ冷徹に見えたとしてもいざというとき、自分のことを手段を問わず守ってくれるのです。これほど素晴らしい夫が他にいるでしょうか?
いつも優しい言葉をかけてくれるものの、いざというとき何の役にも立たない男性と、いつも冷徹なものの、いざというとき手段を問わず自分を守ってくれる男性、皆様はどちらと結婚をしたいですか?
エルヴィンもリヴァイも恋愛よりも結婚に向いているタイプ

以上のことから、私はエルヴィンもリヴァイも恋愛よりも結婚に向いているタイプの男性であると思います。不特定多数の女性からめちゃくちゃモテるというタイプではなく「酸いも甘いも噛み分けた大人の女性」から本気で好かれる。彼らが現実にいたらおそらくはそんな人物になることでしょう。
しかし、このコラムは「この2人のうちどちらがモテるか」ということを解説するコラム。どこかでこの2人を差別化しなければなりません。そう考えるとエルヴィンとリヴァイの「組織力」の違いを考える必要があるでしょう。
ご存知の方も多いと思いますが、エルヴィンは調査兵団の「団長」であり、リヴァイは調査兵団の「兵士長」で御座います。それでは何かの拍子にエルヴィンが団長ではなくなったとして、リヴァイが団長になるかと言えばかなり疑問が残ります。
そう、エルヴィンが「政治力」で団長という地位にいるのに対して、リヴァイは「人類最強の戦闘力」という能力で兵士長というポジションにいるのです。作中でもエルヴィンはエレンの処遇を決める裁判などで「大人の政治力」を見せつける場面が御座いますが、リヴァイはあくまでも現場の人間。仲間思いですし、部下からの信頼も厚いリヴァイではあるものの、対外的な評価などは少しも気にしていない。どうしても人間関係を構築する能力で圧倒的にエルヴィンに軍配が上がります。
これは別にリヴァイが無能と言っているのでは御座いません。スポーツ選手で考えると分かりやすいと思いますが、リヴァイが「現役最高のプレイヤー」であるのならばエルヴィンは「有能な監督」なのです。
お互いに求められている能力が違うのです。組織の一員として最高の兵隊になることが求められるリヴァイと、組織の代表として作戦の立案や運用手段を考えなければならないエルヴィンでは、そのスキルに差が出るのは当然でしょう。
しかし、先ほども申し上げた通りこの2人はどちらも「目的のためなら手段を問わない」という実利面での強さでモテるタイプの男性で御座います。ということは「目的のためなら、自分以外の組織にいくらでもいい顔をしそうなエルヴィン」と「知れば知るほど彼の魅力が伝わってくるものの、よく知らない人からは『不愛想な冷徹人間』と言われていそうなリヴァイ」では、とっかかりの良さやしたたかさに大きな違いが生まれます。
ですので、ある意味「目的のためなら手段を問わない」という「したたかさ」でモテている以上、よりしたたかなエルヴィンに軍配が上がるのではないかと推測します。
切った後の態度が最大の違い

例えば誰か一人をクビにしなければ会社が倒産するとき、エルヴィンもリヴァイも間違いなく誰かを冷酷にクビにすることでしょう。
しかし、クビにした後、ほかの社員から「なんでオルオ(仮名)さんをクビにしたんですか!?」と言及されたとき、リヴァイは「そうしなければ全員無職になってたからだ」と「真実」を言ってしまうタイプではないでしょうか。一方でエルヴィンは絶対にばれないと思えば、今後のマネジメントのために「オルオ(仮名)が自ら辞表を出してきた。引き留めたが彼の会社を思う気持ちは強かった」と嘘を平気な顔してつくタイプ。
リヴァイはエルヴィンと比較すると不器用なのです。不器用は言い換えれば真面目とも言えるので必ずしもデメリットではないのですが、したたかさでモテている彼らのことを考えるとデメリットの方が大きいでしょう。
エルヴィンとリヴァイから学ぶべきこと
さて、今回のエルヴィン対リヴァイはいかがだったでしょうか?
今回、私が皆様にお伝えしたい点は2つ御座います。
1つ目は「目的のためなら手段を問わない」という強い心は「酸いも甘いも噛み分けた大人の女性」からはものすごくモテるということ。恋愛のゴールを結婚に置いているのであれば、ときには手段を問わない強さも必要なので御座います。
2つ目は「そうそう理解されない」ということ。
先ほど私は「冷徹な決断をした人間を、『ただの冷徹な人』と多くの人が判断してしまう」、と言いましたがこれは私も皆様も含まれるのです。
リヴァイが、エルヴィンが、「目的のために苦難のすえ冷徹な判断を下しているキャラクター」であるということを私たちが知っているのは、それは『進撃の巨人』が漫画だからなので御座います。
彼らのように生きたとしても、決して多くの人からは理解はされません。側近のごく一部の人間を除けば、誰も自分の苦悩を読み取ってはくれない。
とは言え私は何も「だから無駄なことをするな」と言っているのではありません。モテるためとか、そんな小さな話ではなく、人間として生きる上で「彼らが何故冷徹な判断を下したのか」ということに思いを馳せることに意味がある、とお伝えしたいのです。
そしてそんな決断を下した人間と、そんな決断を下した人間を世間がなんと言おうとも思い図ることが出来る人間は、少数かもしれませんが必ず深く愛されるということを今回のコラムの終わりに変えたいと思います。
(上野)