学園亜人コメディアニメ『亜人ちゃんは語りたい』が、はじまった。
第二話は14日土曜日24時から。
Amazonビデオでも同時配信中。
亜人と書いて「デミ」と読みます。
「亜人ちゃんは語りたい」が描くバリアフリー。バンパイアに国が月1で血液パックを支給
「亜人ちゃんは語りたい」は、デミヒューマンが人間社会でどう暮らしていくかを、先生とじっくり語り合って、考察していく作品

亜人・デミヒューマンを題材に扱う作品の目的は、主に3つ。
「1:異世界ファンタジーらしさを出すため」「2:萌えキャラクターとして」「3:種の生態の表現・文化論」
1は『ロード・オブ・ザ・リング』や『ドリフターズ』のエルフやホビットやオークなど、人間と異なる集団組織として描かれる。
2は『モンスター娘の日常』『波打ち際のむろみさん』のように、ラミアやハーピーってかわいいよね、というキャラ性重視。
3は、別の人種の進化や文化の流れを描いた、現実風刺を含む作品。『ガリバー旅行記』『セントールの悩み』など。

『亜人ちゃん〜』はというと、2と3の間。
4人の亜人女子の悩みや考え事を描くことで、現実の「マイノリティ」「バリアフリー」問題を間接的に考える作品だ。
エンディングで多様性を表すレインボーカラーのクレヨンを出しているあたり、意気込みが見える。

高橋先生と4人の亜人


主人公・高橋鉄男は、亜人に興味がある教員。
亜人は基本人間に近い姿をしているものの、ちょっと性質が違う。昔話や伝説の存在とも少々異なる。

突然変異的に生まれるらしい。だから双子の片方だけが亜人になることもある。
日本でも見られるようになった、とはいっても本当にごく少数。彼は会ったことがない。

ところが赴任先で、一日に一気に4人の亜人に出会う。
バンパイアの小鳥遊ひかり。デュラハン(首が取れる亜人)の町京子。雪女の日下部雪。サキュバスの佐藤早紀絵。
急に4人もの亜人に出会ったことに驚きつつ、彼は亜人たちと直接話したい、と考えるようになった。

鉄男の考え方はシンプルだ。「話したい」「知りたい」。

ざっくり言えば興味本位。
「この世に亜人として生を受けた者たちが、どう生き、他人とどう接し、何を思うか。そういうことに興味があった」

ひかりは最初、高橋に「亜人嫌いなの?」と複雑な顔をする。
「亜人に会えてうれしい」という素直な鉄男の言葉を聞いて、「エヘヘ!」と喜ぶ。
海外で「日本の人に会えてうれしい」と言われるとほっとする感覚に、ちょっと似ている。

亜人をとりまく社会


一話では亜人をとりまく社会環境、法律や学校教育について、ほんの触りだけ出てくる。
たとえばひかりはバンパイアのため、ある程度血が必要。
なので国は月1で血液パックを支給。
生活保障制度が整備され、「個性」として亜人が認られるようになっている。

一方でサキュバスは、催淫能力による痴漢問題・冤罪問題が複雑すぎて、満員電車に乗れず苦労している。
線引がしづらいため、どうしても法律で決められない穴が、たくさんある。

一般の人間の意識は、学校教育でそこそこ育まれているようだ。
学校の生徒達は、亜人だからと珍獣扱いするようなことはない。

もっとも人間同士でいじめがあるように、偏見がゼロなわけではない。ここは今後描かれていくはず。

力になりたい、相談にのってあげたい、という優しい生徒は多い。
ただ、亜人たちにはそっちの方がちょっとつらい。

気を使われる息苦しさ


1話で目立つのは、デュラハンの京子の動きだ。
彼女は首が外れているので、いつも手で頭を持っている。
友達と話す時は、視線をずらす度に手で向きを変える。
話を聞いている時は、うなづく反応を見せるために、手で頭を縦に揺らす。
彼女なりの、コミュニケーション術だ。

友達は京子の首の話になると、口ごもってしまい、すぐに話題を変える。
彼女たちが、親切だからだ。
これが、ものすごく気まずい。


悩ましいのは「どこまで踏み込んでいいか」。
あけっぴろげに触れるのは「デリカシーにかける」と感じさせてしまう。
「腫れ物に触る扱い」は、マイノリティの違いばかり気にしているように見えてしまう。

一話時点では、バンパイアのひかりだけは同じような境遇ということもあって、京子にデュラハンのことをぐいぐい話していけた。
生徒たちは、教員の鉄男ですらも、どういう距離を亜人と保つのがいいか、今はまだ悩んでいる。

タイトルの「語りたい」というのは「あなたのことが知りたい」という自身の願望。
「助けてあげたい」とか「聞いてあげたい」とかではない。
「私(鉄男も亜人も)が聞きたい・話したい」。

ひかりが「血を吸いたい」と思うのはなぜか。養分が必要なら他で取ればいいはずだ。
そこを、なぜなのかと語り合う。科学的・論理的にじっくり探れば、相互理解を深められる。


亜人が産まれた家庭環境、学校での指導体制、独立した大人の亜人の生活の様子、亜人と犯罪、「亜人種の一般的性質」と「個性」の違い。
語りあう、一緒に考える、そしてまた語りあう、を繰り返す。
もっとも、小鳥遊ひかりがそこぬけに明るくて前向きだったり、京子の恋愛話が出てきたりするので、全体の空気はコメディタッチの楽しいものになってくれるはず!

(たまごまご)
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