Twitterフォロワー20万人超のラブホスタッフ上野さんによる「空想恋愛読本」。本連載では、マンガ・ドラマ・アニメ等の登場人物が現実にいたらモテるのか分析。
そこから女性にモテるためのアドバイスを導き出します。

ノートに名前を書かれた人間は死ぬ。

仮に私たちがそんなノートを拾ったとしても、できることはせいぜい「嫌いな人」を殺す程度でしょう。どう頑張ったって世界を大きく動かす事件を起こすことは出来ません。
しかし、もしそのノートを類まれなる天才が拾ってしまったら、そしてその者と肩を並べる天才が真っ向勝負を仕掛けてきたら。それは頭脳戦漫画として漫画史に名を刻む名作へと昇華します。

というわけで今回のテーマは「DEATH NOTE(デスノート)」より「夜神月(ライト)」と「L」で御座います。世界でもトップレベルの頭脳を持つ2人で御座いますが、果たしてこの2人が現実世界にいた場合、果たしてどちらの方がモテるでしょうか?

スペック的には最強 そんなライトのさらなる魅力


『デスノート』L対ライト モテ度で対決したらどちらが勝つ?【ラブホの上野さんの空想恋愛読本】
画像出典:Amazon.co.jp「DEATH NOTE デスノート(1)

頭脳明晰、運動神経抜群、演技とは言え好青年らしい性格、世界すらも手玉に取る高いコミュニケーション能力。これだけの要素が揃っているライトがモテない理由など御座いません。

確かに彼は「女性」のことを「利用しやすいコマ」くらいにしか思っていない場面が多く見受けられますが、そこは完璧超人・夜神月。死神リュークの言葉を借りるならば「キャッチセールスの世界でも神になれる男」であり、凡百の一般人を騙すことなど造作も御座いません。
もちろん結婚して長い間一緒に生活をしていれば、彼の演技の下に隠れる本性も次第にバレていくことでしょうが、恋人関係や、それより以前の段階であれば、彼の本性に気が付く人などほとんどいないことでしょう。彼は結婚にはあまり向いていないものの、恋愛においては最強レベルの存在であると言えます。


さて、そんなライトで御座いますが、今回は彼のモテ要素としてあまり注目されていないポイントに着目してみましょう。私が着目したポイント、それは「歯の浮くようなセリフを平然と言える」で御座います。

弥海砂と高田清美を筆頭に、何だかんだ言って多くの女性から慕われているライトで御座いますが、彼の口説き方の特徴として「最後は歯の浮くようなキザなセリフを“平然と”言う」というところが御座います。
彼を象徴するセリフといえば「僕は新世界の神になる」でしょうが、彼が女性を口説くときも「僕は新世界の神に、君は女神になるんだ」と言っております。他にも「二人で世界を」とか「運命」とか、とにかく色々と歯の浮くセリフが多い彼で御座いますが、こういった「歯の浮くようなセリフを平然と言う」というスキルはモテるうえで重要であると言わざるを得ません。

このことには異論がある方も多いことでしょう。ですので、歯の浮くようなセリフが何故有効なのかということをご説明させて頂きます。

なぜキザなセリフを言う人はモテるのか?


『デスノート』L対ライト モテ度で対決したらどちらが勝つ?【ラブホの上野さんの空想恋愛読本】
画像出典:Amazon.co.jp「DEATH NOTE (6)

例えば、キザなセリフの代名詞「君の瞳に乾杯」がアリかナシかという質問を街中ですれば、まず間違いなく90%以上の女性が「ナシ」と回答することでしょう。
ですので、このようなアンケートを参考にすれば「キザなセリフはダメなんだ」と思うようになるのですが、一つ大きな落とし穴が御座います。

それは、アンケートに回答したとき、女性は酔っていないということ。
この「酔う」というのはアルコールの問題ではなく「空気に酔う」という意味で御座います。

断言しますが、現実世界で実際に使用され、成功した口説き文句のほとんどは、酔っていないときに言われたらドン引きなセリフで御座います。

例えば先ほどのセリフと比較すれば比較的キザではない「君ともっと一緒にいたい、だから今夜は君を離したくないんだ」的なセリフで女性をホテルに誘ったとしましょう。

このセリフ、それなりにムードを作っているのであればかなり優秀な誘い文句であると私は思います。ですがこのセリフですら、街行く女性に「アリかナシか」と質問をすれば過半数の女性が「ナシ」と答えることでしょうし、突然何の前振りもなくこのセリフを言えば、良くてドン引き、学校ならクラス中の笑いものになり、会社であればセクハラで訴えられる可能性すらあることでしょう。

女性を口説くときというのは良くも悪くも「空気に酔っている」ので御座います。そして、そんな状態であれば「酔ってないときに言われたら引く」くらいのキザなセリフの方がうまくいくことも少なくありません。

街行く女性は「空気に酔っていない」ので、キザなセリフを高確率で「ナシ」と回答しますが、そんな女性だって空気に酔った状態であれば、さきほど「ナシ」と言ったセリフで口説かれるもの。逆に「空気に酔っていない女性」が「アリ」というセリフは、「空気に酔っている女性」にとっては物足りないものであることが多いのです。

そして、これはおそらく生物学的な問題なのでしょうが、女性と比較して男性は「空気に酔いにくい」という特徴があると思います。別にこれはどちらが優れているという問題ではないのですが、男性という生き物は、女性がめっちゃ空気に酔っていて、キザなセリフを欲しているときであっても、自分があまり酔っていないばっかりに「じゃあ……行かない?」みたいなまったくもってキザではないセリフしか言えないことが非常に多いと言わざるを得ません。

当然ムードはぶち壊し、それまで空気に酔っていた女性の酔いも一瞬で冷めてしまします。

もちろん日ごろからキザなセリフを言いまわっているだけでは、ただの「痛い人」で御座いますが、ここぞという場面でキザなセリフを平然と言えるというのは間違いなくモテる男の要素の一つであると言えるでしょう。

スペックではライトにも負けないL しかしモテ度で言えば……


『デスノート』L対ライト モテ度で対決したらどちらが勝つ?【ラブホの上野さんの空想恋愛読本】
画像出典:Amazon.co.jp「DEATH NOTE デスノート(2)

一方でスペック的にはライトに決して引けをとらないLはどうでしょうか?

頭脳は世界でもトップレベル。その頭脳で稼いだお金による経済力もある。さらに中学生大会で日本一になったライトと張り合うだけの運動神経。
決して頭でっかちなもやしっ子ではないLで御座いますが、彼にはライトと比較して致命的な欠点が一つ御座います。

それは「社会性が皆無」ということ。

過去、このコラムで登場したリヴァイなどにも共通する特徴で御座いますが、彼は基本的に「実利」を取り「人の評価」を気にしません。

さらに、ライトがその善悪はともかくとして、「自身の信念」でデスノートを使用しているのに対して、Lは実は「信念」と呼べるものがほとんどないのです。この点はリヴァイと比較しても明確に差別化されます。負けず嫌いな性格のため、ライトと徹底的に戦いますが、本人だって使えると思えば犯罪者も捜査に活用、盗聴器に隠しカメラを頻繁に利用、死刑囚とは言えリンド・L・テイラーという生贄を使うなど法令遵守の精神などこれっぽっちも御座いません。

端的に言えば彼は「道楽者」なので御座います。謎や事件と戦うという趣味に生きる「道楽」。たまたまその道楽が世界の役に立つのでヒーローっぽくなっておりますが「正義」ということに対しての信念ではライトは勿論、夜神総一郎やニアよりもずっと少ない存在であると言えるでしょう。端的に言って「自分が楽しいから捜査をしている」と言った方が正しいような存在で御座います。

たまたま頭が良かったので漫画の主人公になれていますが、もしLが凡人レベルの頭脳しか持っていなければニートまっしぐらの存在と言えばお分かりいただけますでしょうか?

もちろん、私は別にそんなLの存在が「悪」と言っているわけでは御座いません。ですが、彼はライトと比較するとモテる対象が非常に狭いと言わざるを得ないのです。


圧倒的な能力を持った道楽者というのは確かに一般人と比較すればモテますが、圧倒的な能力を持っているうえに、社会性も高いライトと比較すると、どうしてもモテ度の面では劣ると言わざるを得ません。

モテるために必要な“酔い”


『デスノート』L対ライト モテ度で対決したらどちらが勝つ?【ラブホの上野さんの空想恋愛読本】
画像出典:Amazon.co.jp「DEATH NOTE (13)

さて、今回はL対ライトということで対決をさせて頂きましたが、この2人の雌雄を決したのは端的に言って「社会性」で御座います。

Lのように常軌を逸脱した能力を持つものであったとしても、その能力を活用するためにはある程度の社会性が必要である、ということはLのような天才ではない我々が「社会性」などを無視したら言うまでもないでしょう。

そして、今回のもう一つのポイントとして、ライトの「演技力」ということが挙げられます。つまり「キザで口にするのも恥ずかしいようなセリフ」を平然と言うことが出来るかどうかということ。

ライトのように演技がうまい人であれば「うわ、すげえダサいけど、今この子はそんなキザなセリフを望んでいるのだから、言ってあげるか」というような「ものすごく上から目線」の演技でも問題ないかもしれません。ですが、そんな演技などほとんどの場合においてはバレるのです。一番良いのは「自分も一緒に空気に酔う」ということ。

ライトはある意味で「理性的に自分を酔わせることが出来る人間」であったと言えるでしょう。

そもそも、よく考えてみれば「恋愛」など、男女問わずある程度空気に酔っていなくてはやってられるものでは御座いません。女性が「てか、本当にこの男でいいのかな」と冷静に物事を考えたら、男性が「ていうか何でこの女にこんなに頑張る必要があるのか」なんて冷静に考えでもしたら、絶対に恋愛になど発展いたしません。どこかで「狂気」が、「冷静ではない判断」が、「空気酔い」がなくてはこんなコスパの悪いことを一体誰が好き好んでするというのでしょうか?

そう、恋愛においては、時には「冷静さ」は邪魔者以外の何物でもないことが御座います。

利益で理屈で考えていたら、恋愛など割の合わないギャンブルでしかない。

ですが、冷静でクールなだけの人生が楽しいか、と聞かれればこれは少なくとも私はNOと答えましょう。

洋服? そんなもん防寒になればいいじゃん。
食事? サプリでも食ってればいいじゃん。
車? そんなもん電車で事足りるじゃん。
家? 食って寝れるだけのスペースがあればいいじゃん。
給料? 最低限生活できるだけあればいいじゃん。

合理的で冷静な人間はこのようになりがちで御座います。それが必ずしも悪いことだとは言いませんが、それじゃあ人生なんてあまり面白くもありません。

欲に溺れ、羽目を外し、無駄を欲する。
そういう人生の「贅肉」のようなものをそぎ落とした先にあるものは、それは恐らくライトが望んだ世界でしょう。

ライトがL、メロ、ニアに勝ってしまった世界。

善人だけが、倫理的に、善良に、清貧に生きる世界。
悪人は駆逐され、贅沢は許されず、非道徳的な道楽など存在しない世界。
そんなものが、この欲深い人間の社会においては成立しないということは歴史が何度も証明してくれているではありませんか。

禁酒法、天保の改革、クメールルージュ、ファシズム、共産主義。スパルタだってある意味でそうでしたね。
共産主義と独裁主義なんて「継続が現実的に不可能」という致命的な欠点さえ除けば、論理的に最高の制度だとすら思います。

殺人は決して許されませんが、70億人も人間がいて犯罪者が0人の世界は、それはそれで恐ろしい。こんなことを言うと批判が集まりそうですが、私は間違いなくこう考えております。

もちろん何事にも「限度」というものが御座いますが、言い換えれば「冷静すぎる」ということにもまた「限度」が御座います。

男女問わず、恋愛においては時に「狂気」になれる人。
実はこんな反社会的で非道徳的なこともモテるためには必要な要素であると私は思います。

決して忘れてはいけません、そして自分を過信してはいけません。
我々はどこまで行っても欲深き一匹の生物にすぎないのです。
(上野)
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