突然だが下の写真は、ある女性が撮った写真である。

スマホで何気なく撮った写真がお小遣いに 五輪を前に東京の風景、海外から需要増
Rieko Honma/ Getty Images


この方は今後、写真のプロとして生きる道も考え始めたという。
以前から趣味で撮っていた写真が売れるようになり、新天地へ飛び込む自信がついたのだとか。販売元は「ゲッティイメージズ」という。


「イエス・キリストの写真はないか」


この「ゲッティイメージズ」は、知る人ぞ知る世界最大のフォトエージェンシー。

去年のリオ五輪。競泳男子400メートル個人メドレーで優勝した萩野公介選手が、水中でガッツポーズをしたときの写真が国内のいくつかのスポーツ紙の一面を飾ったことがあるが、あれはゲッティイメージズの写真である。


スマホで何気なく撮った写真がお小遣いに 五輪を前に東京の風景、海外から需要増
Richard Heathcote/Getty Images



フォトエージェンシーとは、世界各国のあらゆる報道写真を保有し、そして配信している会社。

報道写真をはじめ、CMや広告などで使われるクリエイティブ写真や動画も扱っており、すべての保有点数を合わせると合計2億点(そのうち1.2億点がデジタル化されている)。
時には「イエス・キリストの写真はないか」といった、とんでもない写真提供のオファーも舞い込むのだとか。それも、「もしかしたら、ゲッティイメージズならあるかもしれない」という信頼の証ゆえ。

そうした写真や動画は、ニュース番組やクイズ番組、動物番組などさまざまなテレビ番組の中でも使われているという。ちなみに民放に限らずあのNHKでさえも借りに来るとか。アメリカのテレビドラマで、オープニングで何気ない街並みの風景が映ることがあるが、ああいったシーンでも使われることがある。


写真1枚で家を建てた男


撮影するのは世界各国100名以上の専属カメラマンと、20万人以上のフリーカメラマン。専属の中には「写真長者」とでも言うべきか、かなり儲けている人もいる。
下の、金魚鉢から金魚が飛び出た写真を撮ったフォトグラファーは、この写真1枚で家を建てたそうだ。

スマホで何気なく撮った写真がお小遣いに 五輪を前に東京の風景、海外から需要増
Gandee Vasan/ Getty Images

 

今回お話を聞いたのは「ゲッティイメージズ」の日本法人で「ゲッティイメージズ ジャパン」島本久美子社長。

スマホで何気なく撮った写真がお小遣いに 五輪を前に東京の風景、海外から需要増
島本久美子社長



あなたの撮った写真を世界中の人が見てくれる、そして買ってくれる


ゲッティイメージズでは、姉妹サイト「iStock」(アイストック)を開設。ここではプロ・アマ問わず、既定の審査に通過すれば誰でも写真を売ることができる。

会社員や学生、主婦、さらには子どもといった未成年も親の承諾があれば審査を受けることができるのだ。スマホで撮った写真もOK。

販売金額はいくつかのメニューがあるが、1クレジットで1枚の写真を購入できるというわかりやすい価格設定で例をあげると、1枚の販売価格は1,200円。
手元に入るロイヤリティはそのうちの15%なので1枚売れると180円が入ってくる計算になる。決して高くはないがスマホに眠っているよりはいいだろう。

島本社長が語る。
「私の知り合いの17歳(高校2年生)の男の子が、都会のビルをバックに写っているカマキリの写真をFacebookにアップしていたんです。これは面白いと思って『応募してみたら』と提案すると、さっそく応募。見事審査に通って、販売者となりました」


スマホで何気なく撮った写真がお小遣いに 五輪を前に東京の風景、海外から需要増
hiro-tomo/ Getty Images


もちろんこの男子高校生には、写真が売れればロイヤリティが支払われることになる。
アマチュアながらこれを副業にしている人も多く、冒頭の女性も、そんな1人というわけだったのだ。

売れる写真の法則


「写真や動画の買い手は、自分が欲しい写真の関連キーワードを検索します。つまり逆に考えれば、キーワードがいくつも連想できるような写真が売れるということです。先ほどの金魚鉢から金魚が出る写真は『群れ』『チャレンジ』『リーダーシップ』『発展』など。ビルの前のカマキリは『環境問題』『自然と人工物』といった言葉が浮かびます。

そういったキーワードをあらかじめ考えて撮るのがプロなのです。対して一般の人はそこまでは意識して撮っている人は少ないとは思いますが、時々偶然が重なって、プロも狙えない、その場にいないと撮れない写真を送ってくることもある。
また最近は、スタジオでの照明より自然光でナチュラルなビジュアルが受けています」(島本社長)

また、子どもの写真を撮って送ってくる親もいるという。やはり身近な人に許す表情というのは、プロでもなかなか撮れないからだとか。

2020東京五輪に向けて写真を募集中


さて東京オリンピックが3年後と迫ったわけだが、実はこのタイミング、写真に興味のある人にとっては絶好のチャンスなのだという。

「リオ五輪のときもそうでしたが、海外のメディアの関心はがぜん開催国に集まり、どんな国かを自分たちの国で紹介するため、いろいろな写真や映像を手に入れようとします。ゲッティでもその需要にこたえて会期前からブラジルの写真を増やしてきました。

それは今度の東京五輪も同じで、日本、そして東京の写真や動画の所有、追加に力を入れています。
みなさんも、これだというものがあったら応募してみてください。プラットフォームは整っているのでぜひチャレンジしてほしいです」(島本社長)

スマホで撮って、何気なく保存してある写真や動画。それらは日本人にとってはごく当たり前の風景でも、海外の人が見ると「クール」だと思ってくれるモノがあるかもしれない。いずれにしてもスマホの中の写真が売れる時代がやってきたということである。

ちなみにゲッティイメージズのサイトに載っている写真は、購入目的とは別に「共有」というボタンを押せば、FacebookやTwitterを通じてほかの友達と共有できるそうだ。