脚本:渡辺千穂 演出:新田真三

102話はこんな話
102話はこのナレーションに尽きる。
「さくら(井頭愛海)が心に秘めた思いを知ってしまったすみれ(芳根京子)なのでした」(語り・はな/菅野美穂)
なるようになるのか?
「ケセラセラ〜」と正太(吉田陽登)が能天気に歌う(扇風機で声震わす遊び、あったあった)様子と、不穏な劇伴が重なる102話のはじまり。
「ケ・セラ・セラ」はヒッチコック監督のサスペンス映画「知りすぎていた男」(昭和31年)に意味深な劇中歌として登場し、日本でもペギー葉山の歌でヒット、紅白歌合戦でも披露された。
「案外近くにおったんやな」(龍一/森永悠希)
「あ・・・そないな近い所におった」(すず/江波杏子)
ふたりも言うくらい、やっぱり、誰もがそう思う。でもまあ、五月はすみれと大急のことを知らなかっただろうから、ちょっとご都合主義的ではあるが、そこは、まあいい。問題は、五月が事務所の裏のソファで寝泊まりしていたことだ。栄輔(松下優也)、住むとこも手配してやってあげてー。戦後間もなくは、子供が花売ったり靴磨いたりして自活していた時代で、それを知っている栄輔は甘やかさない方針なのだろうか。
おかげで、みかねたすみれが家に泊まらせ、五月はすみれによって、知らなかった家庭の愛情に触れてしまう。さくらが感じられないというのに、というなんとも皮肉な流れができあがった。ドラマとしてはいい感じだ。
こうしてさくらと五月の立場が逆転。このまま、五月が坂東家でシングルマザーとして子育てして、さくらが東京で二郎(林遣都)と暮らして苦労したら、「入れ替わりもの」としてちょっとおもしろい気もするが、まさか、まさかね。
健太郎(古川雄輝)に東京の話をして、止められてしまったさくらが「健ちゃんだから話したのに」と理不尽に彼を責める。「どうせ誰もわかってくれない」と言うさくら。さくらも栄輔も、すみれに気持ちをわかってほしくて苦しんでいる。すみれ、早く、わかってあげて。
(木俣冬)