日曜ドラマ「フランケンシュタインの恋」(日本テレビ 日よる10時30分〜)
脚本:大森寿美男 演出:狩山俊輔  

1話を見て、今期ナンバー1の傑作だと豪語したところ、2話の視聴率は低く、世間的には不評らしい。
ネットで散見される理由の最たるものは「キノコが気持ち悪い」。

120年生きていて、人間ではないらしい綾野剛のカラダは不思議な機能があって、触れたものからキノコが生えてくる。そのせいで、過去、ある女性(二階堂ふみ二役)を殺めてしまったらしい。

確かに、綾野剛と二階堂ふみの「シザーハンズ」的なラブストーリーかと思って見たら、「男おいどん」だった・・・となれば、若干、引く。
「フランケンシュタインの恋」2話。キノコ大不評、斎藤工と綾野剛の父子愛がヤバい
「男おいどん」1巻

「男おいどん」とは、松本零士の代表作のひとつで、貧しい主人公の生活を描いた漫画だ。
貧しさゆえ、不潔にならざるを得ない主人公の下着にはサルマタケというキノコが生えて、ときにはそれを食すこともあるという、これまた「銀河鉄道999」のイメージで手を出すと、ショックを受ける。おおよそ女子向けではないお話だ。

「フランケンシュタインの恋」2話では、1話で描かれた、綾野剛(深志研と名付けられた怪物役)が寝ていた布団にしめじが群生したエピソードを受けて、それを発見した、綾野剛が住み込む工務店の従業員(大西礼芳)が調理してみんなにふるまう、冷静に考えたらちょっと気持ち悪いエピソードが描かれた。

かつて、土曜9時で「銭ゲバ」をドラマ化した河野裕英プロデューサー、まさか、今回、再び、貧困層のために「男おいどん」をやろうとして、さすがに直接的には厳しいから、異形の恋もの(美女と野獣も流行っているし)というロマンチックなパッケージで包んでみたが、包みきれなかったか(あくまで妄想です)。

でも、そこが面白いと思うのだ。

2話で傑作だったのはここだ。
柄本明扮する国立富獄大学農学部生命科学研究室の担当教授が、ヒロイン・二階堂ふみと、たぶん噛ませ犬役の柳楽優弥に言う。
「彼の存在は新種のキノコそのものだといえそうだ」
なんて衝撃的なセリフなんだ! 

そのあと、カットは、二階堂ふみのきょとんとした顔を経て、綾野剛に切り替わる。

二階堂ふみの姉(田島ゆみか)を生死の境を彷徨わせてしまったため、山に逃げ帰った綾野剛。だが、まず、映るのは折れた枝に生えたキノコ。キノコの向こうに、綾野剛がしょんぼりしゃがんでいる。
ああ、もう、綾野剛がキノコにしか見えなくなってきた!

確かに、キノコのポン酢和えみたいなさっぱりした顔ではある。
キノコ・・・。アニメ(かいぶつが、生まれた日)では確かに、マッシュルームカットだったが。まさかのキノコ。
キノコヘアなら、ひよっこの峯田さんか、CMで綾野の妻役をやってる近藤春菜の髪型のほうがキノコっぽい。

ともあれ、綾野剛が、人間とは一緒に生きられないと孤独に悩む“キノコ”だと思うと、なんだかかわいいではないか。以後、勝手に彼を「キノコ」と呼んでいきたい。

綾野剛がキノコだったおかげで、瀕死のお姉ちゃんの特効薬ができる。
彼が保持するある種のキノコがお姉ちゃんに感染したのなら、それを中和する菌ももっているであろうという、柄本明教授の冴えた考えが的中した。


お姉ちゃんの命はこれで解決。あとは、キノコに対して不信感を抱いてしまった二階堂ふみ(役名:津軽継実)の心をどうするか。

キノコは、大好きなラジオ番組、「天草に訊け!」からヒントをもらう。
おりしも、番組では、友人を怒らせてしまったが、どうしたら許してもらえるかという悩みが相談されていた。
天草(新井浩文)は「謝るってことは罰を前提にして謝ることだと思う」と説き、キノコは継実に「ぼくに罰をください」と迫る。

「なにを言ってるのかわかりません」と継実。そりゃそーだ。
「どうすれば罰することができるんですか?」「罰ってなんですか?」などと問答が続き、最後にすばらしいセリフがある。
 継実の大学の先輩役・柳楽優弥のセリフだ。

「誰かと一緒に生きることはもう人間の罰みたいなものですから」

深志! と叫びたくなった。
アダムとイブ的な話になってきましたよ。

この深い命題に関して、2話の中盤でも、キノコの回想で、重要なやりとりが描かれている。

息子をキノコにしてしまったお父さん(斎藤工がカツラと髭で老けて登場!!)が、
「人間じゃなくても生きていられる」
「(たとえば森の木は)名前なんかなくても、人間と触れ合わずとも、ここで幸せに生きている」
「人間だけが生命のありかただと思ったら大間違いだ」
 と目を爛々とさせて自論を語るのだ。

誰とも触れ合わないで自生できるほうが穏やかで幸福な生活ができる。
誰かと共生することは「罰」のようなもの。
でも、その「罰」をあえて選びますか? というように問われている気がしてドキドキしてしまった。

だが、最もドキドキしたのは、斎藤工(演じる父)の綾野剛(演じるキノコ)への愛だ。
息子への愛というか、自分が彼を蘇らせたという成果に対してのようにも見えなくもないが、どっちも混ざっているのだろう。とにかく、斎藤工の喜びに満ちた瞳。唇をひげで隠すことによって、彼の純粋な瞳が際立った。

「おまえは植物だ」
「そうだ、考える植物だ」
「考えるという辛い機能を残してしまったことは謝る」

このセリフ群も最高だった。「考える葦だ」みたいなことか、お父さん! 
それと、「考えるという辛い機能を残してしまったことは謝る」。
「謝る」って・・・。お父さんの謝るは、それこそ自分が赦されたいだけなんでは? 罰を受ける気がないのでは? 

このように、「フランケンシュタインの恋」は“異形の恋”では片付けられない、さらに歪な世界観がクセになるひとにはクセになるドラマだ。

消費される商品ではない、心に残る物語をつくろうとする意欲が感じられる。
最後までこの調子で突き進んでほしい。

再び、人間と生活をはじめるキノコはどうなる? 継実の病気は? お父さん(斎藤工)はこれからも出るのか?
5月7日(日)、第3話放送!
(木俣冬)
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