
モラル・ハラスメント、通称「モラハラ」。最近はセクハラやパワハラと並んで、一般的に認知されるようになった「精神的な暴力」「言葉による人格否定」などのことを指します。
先日お笑いコンビ・ココリコの田中直樹さんが、妻でタレントの小日向しえさんとの離婚を発表しました。お子さんたちの親権は田中さんが持つそうですが、田中さんから小日向さんに対するモラハラがあったという記事を週刊文春が掲載したため、離婚の原因はモラハラだったのではないか、という噂がネットを駆け巡っています。
真実がどうなのかは別として、一般的に男性から女性へのモラハラというと、大声や汚い言葉を使ってパートナーを罵り、精神的に疲弊させる行為を想像しがちです。
しかし実際におきているモラハラの多くは、意外と陰湿で陰険。言葉もザクザクと胸を刺すような鋭い毒を吐くのではなく、なんとか耐えられるくらいの人格否定を、細い針を刺すように、地味に突かれ続ける感じなのだとか。
また、モラハラを行う男性の多くが無自覚なうえ(むしろそれが正しいことだと思っている)、外ではまっとうな夫を演じていることが多いといわれています。こういった巧妙なモラハラの仕組みは、“身内の弱者いじめ”を、周りにも気付かせないようにしているそうです。
「自分は関係ない話」と思うかもしれませんが、あなた自身も無自覚にモラハラを働いている可能性が十二分にあるということ(もちろん女性が行う場合もあります)。
言葉を切り取り「モラハラだ!」と指摘したいわけではありませんが、精神的な暴力や人格否定は思っている以上に身近であるという意味も込めて、今回「モラハラ」について、実際の事例を交えてご紹介します。
想像するより一言が軽いモラハラ
先ほどもご紹介したように、一般的に男性から女性へのモラハラは「馬鹿野郎!」などと口調を強めて人格否定をするイメージを持たれますが、多くのモラハラはもっと陰湿。
女性が何か失敗したとき「本当に〇〇は何にもできない奴だな」とか「〇〇は黙って見ていればいいんだよ!」と、口調は穏やかでも存在自体を否定するような言葉もモラハラに含まれます。
また「女って本当に楽でいいよな」などと女性軽視の発言を浴びせたり「家事は女の仕事だろう」と、家事分担などの願いに反発して、役割に縛りつけようとするのもよくあることです。
いかがでしょう、意外と聞いたことがありそうな一言だと思いませんか?
この一言でモラハラ認定ができるわけでもありませんが、世の中で「モラハラ」と相手に感じさせる言葉というのは、本当に些細な一言である。
「プチモラハラ」に耐えられなくなった妻
続いては、結婚当時は気付かなかったけど、振り返れば「プチモラハラ」くらいの仕打ちをうけていたと話す、妻側のエピソードをご紹介します。
「結婚当初温厚だと思っていた旦那は、一緒に生活をしてみると、ただの自己中で、自分の常識の中から出られない人間だってことがわかりました」
そう話す元妻。夫のモラハラが原因で、結婚生活中はストレスから生理が止まったり情緒不安定になったりと、身体的な悩みもあったといいます。
「1番言われてショックだったのは喧嘩した際『お前といると、性欲も食欲も全部満たされない』と言い捨てられたことです。毎日ご飯は作っていましたが、クオリティが満足いかなかったみたいで……」
喧嘩をし合えるだけ、まだ一方的なモラハラと言えない部分はありますが、彼女は他にも「(お互い正社員フルタイム共働きなのに)収入が低いなら、妻が家事を頑張って家庭の不足をまかなうべき」や、洋服や家具を選んでも「その感覚はセンスがない」と事あるごとに自分の尺度から反することに対し、人格否定ともとれる言葉を、柔らかく浴びせたそうです。
モラハラはDV(ドメスティックバイオレンス)と異なり、目に見えないため判断が難しいものですが、「精神の殺人」などとたとえられることがあるくらい、自分の立場やプライドを誇示したい側が、精神的なダメージを与え、相手を責め、否定し、支配する行為です。
またモラハラ男の多くは無自覚であるだけでなく、改善されるケースが稀なのだそうです。
本人が気付き、歪んだ支配欲を改善させて欲しいとは思いますが、そういった希望を求めるのも難しい。この問題は言葉やシチュエーションがキーワードのため、内情を深く掘り下げられることは少ないものの、DVと比較しても、精神的に辛い問題である。まずはそういった認識が、深く世間に知れ渡ることが、モラハラ防止の第一歩なのかもしれません。
(おおしまりえ)