立命館大学の論文が炎上 pixivのR-18小説を「有害な情報」の分析対象に
画像は、論文が公開されていた「人工知能学会全国大会」サイトのスクリーンショット

立命館大学の学生が書いた論文の中で、投稿サイト「pixiv」で公開しているR-18小説を有害な情報の研究対象にしていたことが判明。これに対しSNSなどネット上で批判が殺到している。サイトを運営するピクシブ株式会社は、5月25日に、立命館大学に対して経緯と事実関係の確認と、対象ユーザーとの問題解決を要請したことを発表した。


未成年閲覧不可のR-18小説を「青少年に有害な情報」の研究対象に


問題となっている論文は、立命館大学の学生が人工知能学会全国大会で発表した「ドメインにより意味が変化する単語に着目した猥褻な表現のフィルタリング」。
研究概要によると、web上に投稿される青少年にとって有害な情報、特に暗喩で表現されることが多い猥褻な意味を持つ言葉に対してフィルタリングを行なうことを目的としている。フィルタリングの分析対象として用いられたのが、投稿サイト「pixiv」に投稿されている「R-18」ジャンルの小説10本だった。
論文内では小説のURLと作者名も記載されており、人工知能学会のサイトから論文データをダウンロードできるようになっていた(現在は閲覧不可で、「例外的に発表原稿を非公開としました」と注釈がついている)。

この論文に対しては、会員登録が必要なpixiv内で、なおかつ未成年が閲覧できないように設定しているR-18ジャンルの小説を「有害な情報」の分析対象としてあえて取り上げていることに「見たい人しか見れないのにアダルト広告みたいに有害情報扱いされるのか」「こういう人たちってコミケとかまで凸してR18のエロ本とか発掘した挙句、有害だ! とか叫びそう」といった批判があがっている。
また、今回の論文にURLと作者名が記載され、自作小説が分析対象とされたことを知った投稿者のなかには、作品を非公開設定や作品自体を削除した人もいた。そのため、論文の執筆者の倫理観を疑う声もある。


著名人たちも批判


この論文には多くの著名人も苦言を呈しており、やおい・BL・同人誌研究家の金田淳子さんはTwitterで「他者が趣味の範囲で書いたものを実名でなくともその人と特定できる形で了承を得ず公表するのはまずいと思いますね。商業作品でもできる内容だし。そもそも研究の目的と対象選定がかみあってないと思う」とコメント。



作家の森奈津子さんは「pixivという会員登録が必要な、なかばクローズドの場で、ちゃんとR-18タグをつけてゾーニングするという、作者による配慮がされた小説をフィルタリングの分析に使い、タイトルや作者名を晒すとは、あまりにも無神経すぎる」などと疑問を投げかけた。



批評家・編集者・作家の永山薫さんは「立命館大学の人工知能学会発表論文で驚いたのは、そこで『猥褻』または『有害』な表現として挙げているのが小説である点です。四畳半襖の下張事件の頃じゃあるまいし、今時、テキストを猥褻表現と断ずるのはゴリゴリの表現規制論者だけだと思っていましたよ」と綴っている。