「履いていれば伸びますよ」は本当? きつめの革靴を買うのはアリなのか

革靴を買うとき、試し履きをした際、ちょっときついと感じることがある。そんなとき、店員さんに「革は履いているうちに伸びるので、足になじんできますから大丈夫ですよ」と言われることがあるが、本当なのだろうか? シューフィッター養成認定機関「一般社団法人 足と靴と健康協議会(FHA)」に真相を聞いてみた。


革靴の革は本当に伸びる?


「履いていれば伸びますよ」は本当? きつめの革靴を買うのはアリなのか

足と靴と健康協議会の事務局長 木村克敏さんによれば、革靴の革は、天然皮革であれば、ある程度は伸びるのだという。

「合成皮革や人工皮革は伸びることはありませんが、天然皮革の革はある程度は伸びます。
皮(革)自体は繊維が絡み合って構成されています。靴は足の体温で繊維が緩み、『ゆるみ(伸び)』が出ることがあります。ただし収縮性もありますので、一度ゆるんでもある程度は元に戻ります。
天然皮革は、合成皮革や人工皮革と違い、汗などの吸湿作用や通気性もあるため、靴に適した素材といえます。天然皮革は足になじみやすいといえます。

ただし、縦方向には伸びません。靴は構造上、“つま先”と“かかと部分”に堅い芯を入れて作られますし、靴底も伸びるような素材は通常、使われないからです」

きつめの革靴を買うのはあり?


天然皮革はある程度は横に伸びるのだそうだ。では、革が伸びるだろうと思ってきつめの革靴を買うのはありなのだろうか。

「基本的にはNGです。天然皮革はゆるむとはいえ、収縮するため、ある程度はフィットした状態で選ぶことが必要です。きつめを選ぶと足のトラブルに見舞われるリスクもあります。ただしパンプスのように足を覆う部分が少なく留め具の無いものは、若干ピッタリ目を選ぶことが必要な場合もあります」


自分に合う革靴の選び方


では、自分に合う革靴を選ぶにはどんなことに気を付けたらいいのだろうか。


「まずはご自身の足のサイズを知ることが必要です。最低でも『足長(足の長さ)』『足囲(一番幅の広い部分の周径)』『足幅(一番幅の広い部分)』を計ってもらいたいです。
日本の靴であれば、サイズ表示は足の長さ(足長)なので、例えば足の長さが23cmであれば23と表示されている靴をまず履いてみて、きつい、ゆるいという場合は前後のサイズを試履きします。ある程度フィットしているものが見つかったら、歩いてみてください。そして足のどこかが当たったり、圧迫されたりしていないかを確認し、何か違和感があるものは、あとでトラブルになりますので避けられたほうが良いでしょう。
店員さんが『なじんできますよ』と言うかもしれませんが、そういった違和感がある靴は、だいたい後で足が痛くなるものです。
一番間違いのない靴選びは『シューフィッター』のいるお店で一緒に選んでもらうことです」

店員さんの「あとからなじんできますよ」はうのみにしないほうが良さそうだ。自分の足のためにも、きちんと合ったものを選びたい。シューフィッターは人それぞれに合う靴を見立ててくれ、アフターケアもしてくれる存在だそうだ。長く履ける革靴選びの際には検討してみよう。
(石原亜香利)

シューフィッター検索
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取材協力

木村 克敏(きむら かつとし)さん
一般社団法人 足と靴と健康協議会(FHA)の事務局長。
現在はシューフィッターの養成講座の運営の傍ら一般消費者への啓蒙活動の一環として講演活動等も行っている。
上級シューフィッター(バチェラーオブシューフィッティング)の資格を有する。
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