秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
6月22日にグランドオープンを迎え賑わう「ビックカメラAKIBA」

常に変化を遂げる街・秋葉原に、また新たなランドマークが誕生した。
秋葉原駅近くの中央通り沿いに大手家電量販店「ビックカメラAKIBA」が6月22日にグランドオープン。
それに合わせてビックカメラ傘下となっている周辺のソフマップ店舗もリニューアルが行われ、周辺はオープニングセールにより賑わいを見せている。


ソフマップを改装して秋葉原の一等地にビックカメラ出店


ビックカメラAKIBAが出店したのは、2007年より「ソフマップ秋葉原本館」として営業していた建物だ。
ソフマップ秋葉原本館はソフマップ本店格の店舗として2007年9月に開店。7階建てで、売場面積は4,637平方メートル。
もともとこの建物は「市川・カンブンドー・ヤマギワビル」としてヤマギワ本店が出店するために建てられたものであったが、ヤマギワ(と提携していた石丸電気)の経営不振を受けてソフマップが出店することになった経緯がある。ソフマップは当時ビックカメラとの提携直後で、店舗整理を行いつつヤマギワソフトの事業を継承するなどして再建を図っていた。
秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
旧・ソフマップ秋葉原本館

秋葉原においては規模の大きな商業ビルの1つであるため、開店より10年に亘って秋葉原の顔の1つとして親しまれており、特に1階から2階の窓全面に設置されるアニメやゲームの大型ラッピング広告はアニメ・ゲームファンにとっての記念撮影スポットの1つとなっていた。
しかし、ソフマップ秋葉原本館は5月31日をもって惜しまれつつ閉館。その後はソフマップを傘下に持つビックカメラの店舗となるべく改装を進めており、6月5日より順次一部売場での営業を開始していた。
秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
窓に掲出される大型ラッピング広告は多くのアニメファンの記念撮影スポットだった


下層階は「観光客向け」へと大きく変化 ビットコイン決済も


「ビックカメラAKIBA」の売場は1階から7階まで。ビックカメラ各店で設けられているイメージキャラクター「ビッカメ娘」は「アキバたん」で、ビッカメ娘としては柏店の「柏たん」に続く2人目の「メガネっ娘」となった。
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イメージキャラクターは「アキバたん」

ソフマップから短期間での改装となったものの、「秋葉原仕様」となったビックカメラの店内ソングを聞きつつ店内に入ると、そこにはソフマップ時代とは大きく変わった売場が広がっていた。
なかでも最も大きな変化は、かつてはスマートフォン、携帯電話やデジタルカメラなどが販売されていた下層階(おもに1階~2階)が、外国人観光客をターゲットにした薬、生活雑貨、美容家電、東京土産の売場となったことだ。
土産品売場には大量の菓子を買い求める外国人観光客の姿があり、かつての店舗との違いを実感させられる。

秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
店舗エントランス。薬、美容家電、土産品が並ぶ

高層階はデジタル家電、白物家電、自転車、おもちゃ売場など他のビックカメラ店舗と同様の売場であるが、一部の陳列には人気アニメのフィギュアが飾られるなど秋葉原らしい演出もなされている。
特徴的な点としては、IoT LED照明のフィリップス「Hue」がVR体験できるコーナーや、関東エリアのビックカメラとしては初となる「楽天モバイルコーナー」の設置などが挙げられる。さらに、全館にわたってビットコインによる決済システムも導入されたことも「秋葉原ならでは」だ。
秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
「ラブライブ!」のフィギュアが飾られるなど「秋葉原らしい演出」も


もう1つ大きな変化を上げるとすれば、1~2階に設置されていた大型広告が無くなり、ビックカメラ・ソフマップの自社広告になったことだろう。
先述した通り、この大型広告は非常に目立つ位置にあり人気の記念撮影スポットにもなっていたため、今後ビックカメラの知名度の上昇とともに再び広告枠へと戻される可能性もある。
秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
大型広告はビックカメラの看板に。
なお、下層階にあるマクドナルドなどのテナントは継続して出店する


ソフマップ各店も改装で「ビックマップ」形成 イベント開催は継続


ビックカメラ開店に合わせて秋葉原地区のソフマップ5店も「AKIBAビックマップ」となるべく改装を実施。それにちなんで「ビックマック」などが当たる開店記念キャンペーンも開催されている。
秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
「AKIBAビックマップ」を形成する

今回の改装に伴いソフマップ各店の店舗名称も変更され、「アキバ☆ソフマップ 1号店」は「ソフマップ AKIBA1号店 サブカル・モバイル館」に、「リユース総合館」は「ソフマップ AKIBA2号店 パソコン総合館」に、「Mac Collection」は「ソフマップ AKIBA3号店 Mac Collection」に、「アミューズメント館」は「ソフマップ AKIBA4号店 アミューズメント館」に、「中古パソコン駅前店」は「ソフマップ AKIBA5号店 中古デジタル館 買取センター」へと改称。それぞれの店舗の取り扱い商品は大きく変わらない予定だ。なお、これに先駆けて「モバイル館」、旧「買取センター」、「コンピュータクリニック」の3館は2月に、「アキバ☆ソフマップ 2号店」は6月4日に閉店している。
秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
各館の新名称一覧(ニュースリリースより)

秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
「AKIBAビックマップ」配置図(ニュースリリースより)

「ソフマップといえばアイドルイベント」というイメージを持つ人もいるかもしれないが、改装後も1号館と4号館のイベントスペース、8階の「マップ劇場」も存続されており、グラビアアイドルやライブアイドル、声優などのイベントもこれまで通り開催される。
秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
オリジナルキャラ「まぷ子」も以前と変わらず迎えてくれる

秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
大きく改装された2号館エントランス。各店には新たにビックマークも設置された


ヨドバシAKIBAの7分の1の規模…ビックに勝算はあるか?


秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
ヨドバシカメラマルチメディアAKIBA

満を持しての「秋葉原初出店」となったビックカメラであるが、今後は厳しい戦いが待ち受けている。
かつて数多くの家電量販店が軒を連ねていた秋葉原であるが、その状況を大きく変えたのが2005年の「ヨドバシカメラマルチメディアAKIBA」(以下、ヨドバシAKIBA)開店であった。

ヨドバシAKIBAは同社の旗艦店の1つとして秋葉原駅に隣接する日通などの跡地に誕生。3万平方メートルを超える売場面積に専門店街、レストラン街、大規模な地下駐車場を備え、都内のみならず関東一円から広く集客する「国内有数の家電量販店」となった。
その後、秋葉原で白物家電を販売する店舗は大きく減り、「ヤマギワ」「サトームセン」「石丸電気」などといった長年親しまれた屋号も姿を消した。
秋葉原の一等地にビックカメラ誕生! ソフマップ時代とどう変わった?
秋葉原に店舗を構える主な大型家電量販店

現在、秋葉原駅周辺で白物家電を販売する目立った大型店舗はヨドバシAKIBAのほかには「エディオンAKIBA」(旧石丸電気)、「オノデン」のみとなっており、各店ともにインバウンド客をメインターゲットに据え、かつての姿とは大きく変化している。

それだけに、ここにきて「ビックカメラ」の秋葉原進出を意外に思った人も多いだろう。
このビックカメラ進出の背景には「白物家電の需要増」などではなく、傘下企業であるソフマップの経営不振があったと考えられる。
ソフマップは主力であったパソコン販売の売上減に加え、オンラインゲーム・スマホゲームの流行によるゲームソフト・ハードの売上減、アニメグッズやフィギュアなどサブカル系商品の競合店増加なども影響し、近年は赤字となっていた。
そこで、一番の大型店である秋葉原本館を知名度のあるビックカメラに転換することでソフマップの売場を集約するとともに、国内外の観光客を取り込むことも狙ったのであろう。それは、下層階が従来とは大きく異なるインバウンド客向けの売場となったことでも伺える。
その一方で、ビックカメラAKIBAの売場面積は約4,600平方メートルほどしかなく、ヨドバシAKIBAの面積の7分の1程度しかない。
ビックカメラでは、「ソフマップ5館とともに売場面積約10,000平方メートルの『ビックマップ』を形成する」として、そのスケールメリットと取り扱い商品の広さを前面に押し出しているものの、ソフマップ秋葉原本館時代も販売不振により白物家電の売場を大幅縮小するに至った過去があるほか、ソフマップのメイン商材の1つであるアニメ系・サブカル系商品の販売店舗は郊外地域にも増え続けており、その成否は不透明だ。
家電量販店業界の雄・ビックカメラ初の秋葉原出店。
秋葉原駅前で最大のライバル・ヨドバシカメラやヤマダ電機などがしのぎを削るなか、今後は他店の客をビックカメラ・ソフマップへと向かわせるような「社運を賭けた店づくり」が求められることになるであろう。
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