ああ。
モンスター全員が全員、自分のスタイルを貫いて立ちはだかり、
晋平太は晋平太のスタイルで、それに対峙する。
対戦に関しても、あれこれ語られて、凄い盛りあがりだ。
ZEEBRAさんも、漢VS晋平太について、
―ストリートの事情を組んで漢に勝ってほしかったが、
裏側にある事情を審査員が知ってる必要もない、
バトルにそんなことを持ち込む必要はないと思ってる―
といった発言をしたり、いろいろうねりにうねっているフリースタイルダンジョンである。
(「フリースタイルダンジョン」因縁の対決。晋平太と漢は何と戦い、握手したのか)
(「フリースタイルダンジョン」T-Pablow胸ぐら掴んで喧嘩かラップか、ゆらがず睨んで晋平太)
そしてR-指定の登場。
R-指定と晋平太の対決だ。

R-指定「お待たせ ラップオタクの出番だ」
と、UMB2010でのバトルと同じフレーズでスタートする粋。
ここから、R-指定の花尽くしが見事だった。
まるで完成されたソネット(ソネットとはなんぞやを知らず、雰囲気で使ってます)。
サイプレス上野とのバトルで「俺死ぬのかな? これいるのかな? この菊の花」と言いながら菊の花を蹴った晋平太(「フリースタイルダンジョン」晋平太、葬いの菊の花束を蹴って因縁の進撃開始)。
そのことをR-指定が語る。
「ただな、もらった菊の花 蹴っちまった」
ここから、花尽くしだ。
「ボタンの掛け違いでバラバラになっちまった筋。
でもサクラはいないだろ? 分かるか。
でもお前みたいなMC 死人に口無しだ」
ボタンは、もちろん牡丹。
バラバラは、薔薇。
偽客(サクラ)は、桜。
口無しは、梔子。
菊の花から、牡丹、薔薇、桜、梔子、と花を詰め込んだ。
R-指定は、ストリートの事情を排して、この場のバトル、ラップのスキルだけの戦いに挑んだ。
バトルの後にR-指定は語った。
「シンプルにラップの勝負にようと思った」
それは、バトル中も一貫していた。
「俺は別にアンタも恨みも何もねぇよ」
「俺はなアンタにいじめっ子みたいな事は七面倒だからしたくないし」
「そんな宗教まがいの話なんて今日はする気はない」
「ラップやりに来たから ボディタッチも熱くなる事もしねぇでやってんだろうが他の3人と違う戦い方」
ストリートの事情なんて関係ない。
ラップの勝負なんだ。
今までとはまったく違う戦いにしたいという熱い思い。
それに対して、晋平太は、「もっと熱い情熱が見てぇよ」と返す。
「お前がバトル嫌いでどうすんだよ。これは気合の勝負だろう」
ストリートの事情を持ち出されると不利な状況下にいるにもかかわらず、晋平太は、ぶち当たっていく。
R-指定の「熱いことよりも上手いこと言って、座布団を1枚みたいなやり合いしてるから」というバトルスタンスを
「もうちょい冷静じゃなく熱くなってくれ」と焚き付ける晋平太。
しかも、ROUND2の最後、晋平太は
「俺はアーティスト お前はサディスト。なんか寂しそう まるでキリスト」
と何とも言えない感情を乗せてくる。
ROUND3で、晋平太は
「お前クソみてぇにかっけぇな お前に全部負けた」と敗北宣言のようなフレーズを吐き出す。
だが、呂布カルマのように華々しく切腹して散るのではなく(神回「フリースタイルダンジョン」呂布カルマ×R−指定、審査員驚愕、会場騒然、壮絶な幕切れ)、前に進んでぶつかっていく。
「お前と比べりゃ俺は上出来じゃねぇ マジでマリオで道化師だよ」
という最後のフレーズからも「だが」という反転する気持ちが見え隠れする。
それは、その前の導火線のフレーズが重しとして効いていたからだろう。
「導火線の話に戻そうか
導火線なら真っ赤っか 最初からケツに火ついてんだ
決意持ってMIC握ってんだ」
最終ROUNDまでもつれにもつれたバトルは、チャレンジャー晋平太の勝利。
頭を掻き、空を見上げるR-指定。
モンスタールームのDOTAMA、天を仰ぐ。
ついに、次回、ラスボス般若の登場だ。(テキスト/米光一成 イラスト/小西りえこ)