朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第20週「1993-1994」

第96回〈3月17日(木)放送 作:藤本有紀、演出:安達もじり〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第96回 るい、懐かしき岡山のジャズ喫茶でまた過去の真実に近づいていく
写真提供/NHK

※本文にネタバレを含みます

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算太に似ている桃太郎

雉真家の食卓、勇(目黒祐樹)の背後に桃太郎の鬼退治の掛け軸がある。なかなかにおどろおどろしい絵である。ベタだが、岡山、雉真、桃太郎、きびだんごと繋がっている。

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掛け軸の並びには写真が飾ってあり、ひなた(川栄李奈)は自分の先祖を知る。祖父・稔(松村北斗)のかっこよさを実感するも、なぜか祖母・安子(上白石萌音)の写真がない。そこに悲しい雉真家の秘密がある。

悲しい秘密の要因のひとつとなった算太(濱田岳)はもういない。はっきりしたことを言わず、貯金通帳だけ残して逝った算太のことを錠一郎(オダギリジョー)は「最後に家族と過ごす時間が欲しかったんじゃないかな」と想像する。

不器用で間の悪い人物だった算太。雪衣(岡田結実/多岐川裕美)にフラれ傷つき、「たちばな」を再建しないで姿をくらまして、住所不定のまま50年。なんとかダンスを生業にできたから良かったものの、罪の意識に苛まれながら孤独に生きてきたのだろう。

「最後に家族と過ごす時間が欲しかったんじゃないかな」と錠一郎が言うように、算太がクリスマスにるいを訪ねてきたのは、贖罪よりも本能的に孤独を紛らわしたい欲望のほうが勝っていたのかもしれない。理性より感情優先のほうが算太らしい。

失恋して万引きするような激情型の桃太郎(青木柚)は算太に似ている。桃太郎は野球好きの勇(村上虹郎/目黒祐樹)にも似ている。キャッチボールしながら、勇から人生の教訓を聞く。ふたりとも、野球にアイデンティティーを託し過ぎて恋を失った。とはいえ、どちらもたとえ野球で大成しても恋は実らなかったであろう。そういうちょっと勘違いしているところも桃太郎と勇は似ている。

算太と勇と桃太郎。これまでまったく会ったことのない、ともすれば生涯会わなかった人物と似た人生を歩んでいるという不思議。

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写真提供/NHK

一方、ひなたはるい(深津絵里)が少女時代に暮らしていた部屋に入る。この流れには『あまちゃん』(2013年度前期)を思い出す。『あまちゃん』にも主人公のアキが田舎で、母の青春時代を過ごした部屋を見る場面がある。そこは思い出がいっぱい詰まったタイムマシーンのようだった。

『カムカム』では折しも、終戦から49年、戦争で亡くなった人たちの50周忌。るいたちは勇の提案でお盆まで岡山にいることにする。お盆――それぞれが亡くなった人たち、過去に出会う時期。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第96回 るい、懐かしき岡山のジャズ喫茶でまた過去の真実に近づいていく
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健一が世良公則

何かに導かれるように錠一郎は恩人・定一(世良公則)の店・「Dippermouth Blues(ディッパーマウス・ブルース)」と同じ名前の店が岡山にあると聞いて訪ねてみる。そこには定一に生き写しの健一(世良公則ふた役)がいた。健一の孫の慎一(前野朋哉)は昔の健一とそっくり。まるで過去が蘇ったようである。

あの頃、錠一郎とるいは小さな子どもで、岡山の元祖「Dippermouth Blues」でお互いに気づかないまま過ごしていた。それが今、るいの迷子になった過去の真実の断片を語る場になる。


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