朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第20週「1993-1994」
第95回〈3月16日(水)放送 作:藤本有紀、演出:安達もじり〉

※本文にネタバレを含みます
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大月家、岡山へ
商店街を花道にダンスした算太(濱田岳)が倒れ、そのまま大月家で亡くなる。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜95回掲載中)
るい(深津絵里)に残したクリスマスプレゼントは「たちばな」再建資金用にこの10年に貯めていた通帳。それらが入った紙袋を布団のなかからごそごそと出したが、算太は倒れて大月家に運ばれたあと、どうやって布団に紙袋を持ち込んだのか。
算太と清子と吉右衛門の会話にるいが若干眼を丸くしているのが印象的。そりゃあ驚愕するだろう。すぐそばに幼い頃の岡山と因縁ある家族が住んでいたなんて。岡山を捨ててきたはずがこんなにも身近に岡山があったなんて鳥肌が立つような出来事であろう。
歌舞伎だったらこういう因縁話は、ねっとり、じっくりと俳優が演じる、いわゆるやりどころだが、テレビドラマだとそうもいかない。アヴァンで済まされ、タイトルバック明けはるいの喪服姿。岡山編から大阪編に移行するときのるいの喪服を思い出す。
身近にあった岡山と算太の死はるいを岡山に戻る気にさせるきっかけには十分過ぎる。算太の納骨のためにもるいは岡山へ30年以上ぶりに戻る。ちなみに、2022年3月15日、山陽新幹線の新大阪―岡山間が開業から50周年を迎え、記念式典が行われていた。
雉真家には勇(目黒祐樹)と雪衣(多岐川裕美)がふたりで暮らしていた。息子家族は別居している。驚いたのが、勇と雪衣に若い頃の面影がものすごくあったことだ。雪衣のくりっとした瞳が似ているし、勇は喋り方がそっくり。「るいは野球の塁からとった名前」という言い方なんて若い頃のままだ。
推測するに、岡山弁指導の方の話し方を村上虹郎も目黒祐樹も正確にしゃべっているのだろう。台本に書かれたセリフを余計なことをしないで正確に読むと作家の意図したニュアンスが再現できるもので、でも意外と誰でもできることではなく、芝居のうまい俳優だからできることなのだ。
それにしても同じ人物を年代別に演じてこんなにも違和感のないことも珍しい。勇と雪衣のおかげで岡山時代が鮮やかに蘇った。
勇は相変わらず野球好きで、桃太郎と意気投合。幸衣は算太の失踪が自分のせいだとるいに打ち明ける。
『あさイチ』でも話題になっていたことで、ロバートについては詳しく知る人がいない。けっきょく、安子しか真実を知らないのだ。どこかで安子本人が再登場するか、安子をよく知る者が現れるか、はたまた安子の手紙や日記などが出てくるか。謎のまま終わるパターンもあるが、やっぱりすっきりさせてほしい。
(木俣冬)
【前回の朝ドラ】『おかえりモネ』の全レビューを見る
番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時00分~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時00分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時00分~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時00分(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時00分~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami