
各地で再開発が行われ、日を追うごとに新たな顔を見せる渋谷。
一見すると渋谷駅前の大型再開発が目立つが、それ以外にも道玄坂やセンター街、キャットストリート周辺にはここ数カ月のあいだに注目施設が続々オープンしている。
今回は、4月から6月にかけて渋谷駅周辺で新たに生まれたばかりの大型スポットを紹介したい。

MEGAドン・キホーテ渋谷本店(5月12日開店)
いま渋谷で最も話題となっている大型スポットの1つが、この「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」(以下、メガドンキ渋谷店)。
メガドンキ渋谷店が開業したのは、東急百貨店本店近くの渋谷区道玄坂2丁目交差点前にある「三善ビルディング1・0・9」。かつてパチンコ店(マルハン)、ゲームセンター(SEGA)などが出店していた建物だ。この出店に伴い、近隣にあった旧「ドン・キホーテ渋谷店」は閉館している。
「新店舗といってもドンキなんて珍しくないじゃないか!」と思う人もいるかもしれない。しかし、実は同店舗は従来の都心で良く見られたドン・キホーテと大きく異なる点がある。それはイトーヨーカドーやイオンのような「総合スーパー業態」であるということだ。

メガドンキ渋谷店の売場は地上6階、地下1階、売場面積は5,522平方メートルで、営業時間は24時間。面積的には旧店舗の約3倍へと拡大しているほか、店舗の雰囲気も旧店舗とは大きく異なるものとなっている。
エントランスには熱帯魚が優雅に泳ぐ大きな水槽が飾られ、明るく入りやすい雰囲気。そして、入口を入ってすぐに目に入る土産品売場では、東京土産を買い求める多くの外国人の姿があった。上層階はこれまでのドン・キホーテと同様の衣料品、くすり、生活雑貨、家電製品などの売場が広がるが、これらの売場もかつての店舗よりも広い面積を活かし、以前の「非日常的」な売場中心からより「日常生活」に密着した商品が多く品揃えされている。

しかし、この店の一番の特徴は何といっても「食品売場」だ。食品売場は3フロアに分かれており、2階は菓子、酒など、1階は銘菓(土産品)など、そして地階は生鮮食品(青果、精肉、鮮魚)、惣菜、冷凍食品などの売場となる。
そのうち、とくに生鮮食品売場はこれまでの「ドン・キホーテらしいらしい売場」とは異なり、一部では百貨店のような対面販売もおこなわれている。実際に食品売場の来店客に取材してみると「これまでスーパーマーケットに寄って帰るということは考えられなかった」との答えが。実は、道玄坂周辺にはこれまでスーパーマーケットが1店舗も無かったのだ。惣菜やおつまみの品揃えも充実しているとあって、食品売場は早くも仕事帰りのサラリーマン、OL達から人気の立ち寄りスポットとなっているようだ。

ヒューリックアンニュー渋谷(5月24日開店)
渋谷センター街を歩いていると、突如現れた特徴的なガラス張りのビルに目を奪われる。
この建物は5月24日に開店した複合商業ビル「ヒューリックアンニュー渋谷」(HULIC&New SHIBUYA)だ。

ヒューリックアンニュー渋谷は不動産会社「ヒューリック」が建設した複合商業ビルで、特徴的な地上10階、地下2階の建物のなかには11店舗が出店。その多くの店舗が「新業態」や「渋谷初出店」の店舗となっている。
物販店としては1~2階には核としてメガネチェーン「JINS」の旗艦店が出店するほか、地階には「イシバシ楽器」の管楽器専門店「イシバシ楽器 渋谷EAST 管楽器専門店」が出店。

また、上層階にはバンコク発のタイスキ(タイ風しゃぶしゃぶ)「MKレストラン」、京風もつ鍋店「もつ吉」、鹿児島黒毛和牛を使った焼肉店「薩摩 牛の蔵」をはじめ、タイ料理、イタリアン、和食など多彩な飲食店が出店。これまでセンター街付近での大型レストラン街といえば渋谷パルコ内だったが、現在パルコは建替えのため閉館中。各店舗ともセンター街にしては比較的大型でゆとりのある造りで、これまでパルコのレストラン街を利用していた人はこちらに足を運んでみては。
渋谷キャスト(4月28日開業)

「渋谷キャスト」は渋谷駅から歩いて5分ほどのキャットストリート入口に生まれた大型再開発ビルだ。
同ビルは渋谷駅周辺で東急電鉄が主導して進める7つの大型再開発事業によって生まれた建物の1つで、そのコンセプトは「住む、働く、くつろぐ。多様性を受け入れ、創造性を誘発する空間」。もともとこの場所には都営住宅の「宮下町アパート」があった。
渋谷キャストは地上16階建、地下2階建ててで、下層階は商業施設となるほか、1階の一部と2階はシェアオフィス、2階から12階は事務所、13階から16階は80戸の都市型賃貸住宅「渋谷キャスト アパートメント」となる。このアパートには、クリエイターやアーティストなどが入居するのに適した部屋が設けられていることも特徴で、室内には自分の作品を投影できるようなスペースが設けられるなど、アーティストが創作活動を行いやすい空間が提供されるという。
さらに、エントランスには緑に囲まれたオープンカフェのようなガーデン広場があり、取材時にも多くの人で賑わう空間となっていた。この広場にはオブジェなども飾られており、アーティストにとってはクリエイティブを刺激してくれる空間となろう。

また、下層階の商業ゾーンには、ジェンダーニュートラルをテーマとしたアパレルセレクトショップ「PULP 417 EDIFICE」、スパニッシュイタリアン「THE RIGOLETTO」、マイスタイルデリがテーマの「PULP Deli&Cafe」などといった飲食店に加え、食品スーパーの「東急ストアフードステーション」も出店。
けものフレンズカフェ(旧ジャパリカフェ)(4月29日開店/6月28日全面リニューアル)
渋谷キャストからキャットストリートに向かって進むと、4月に登場した大人気スポット「ジャパリカフェ」へと辿りつく。
この店は人気アニメ「けものフレンズ」をテーマとしたコンセプトカフェで、作品のなかで登場した食べ物やキャラクターをイメージしたデザートが楽しめるとあって、連日“どったんばったん大騒ぎ”の大人気となっていた。
筆者が来店した日は残念ながら入居するビルの耐震工事のため休業中。それに合わせて全面リニューアルを行ない、現在は「けものフレンズカフェ」して営業を再開している。
改装後の店内は以前の「さばんなちほー」から「こうざん・さばくちほー」をテーマにした内装へと一新、メニューもリニューアルされている。
なお、けものフレンズカフェの営業期間は2018年春ごろまでの予定。

6月末に全面リニューアルが行われて営業を再開した(写真はリニューアル工事中のようす)
ニトリ渋谷公園通り店(6月30日開店)

宮下公園や山手線から真新しい「ニトリ」の看板を見て、その規模に驚いた人も多いのでは。あのニトリが渋谷に旗艦店!?と大きな話題となったこの店舗。地下1階、地上9階建てで、まさに旗艦店と呼ぶにふさわしい規模だ。
もともとこの建物は1991年3月にファッションビル・百貨店を運営する丸井(中野区)が「マルイ・イン・ザ・ルーム渋谷」として建設したもので、かつてはインテリア店だった。インザルームは1998年に「マルイワン渋谷」に業態転換したのち、2004年1月に閉店。その後、同年にシダックスが建物を購入、カラオケ店とシダックス本社、イベントホールなどが入居する建物「シダックスビレッジクラブ」となり、シダックス旗艦店の1つとして親しまれてきた。しかし、近年シダックスは業績不振に陥っており、シダックスはカラオケ店を閉鎖したうえでビルの借主を探していた。
一方で、渋谷駅から徒歩10分ほどで大型駐車場も設置されておらず、大型家具を扱う店としては利便性に欠ける印象も受ける。今後は周辺のニトリ小型店(デコホーム)との連携や、配送サービスの更なる充実も課題となるだろう。
取材時は開業直前であり実際に入店することはできなかったものの、店内には真新しい什器が来店客を待ち構えている様子が伺えた。
北海道生まれのニトリにとって初の東京都心における単独大型店舗だけに、その経営手腕が試されることになる。
再開発が続く渋谷、変わり続ける街の姿

今後も数多くの注目施設が開業する予定だ。
ここまで渋谷で4月から6月までの間に開業したおもな施設を集めてみたが、わずか3カ月のあいだにこれほど多くの注目店が開業している。
現在、渋谷駅周辺では各地で東急グループなどによる大型再開発が進行中であり、街の姿は今後も大きく変わり続けていくことになる。
早くも人気となっているニューオープンの各店舗。いち早くチェックして、変化し続ける渋谷の「歴史の証人」となってみよう。
(都市商業研究所)