連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第15週「恋、しちゃったのよ」第89回 7月14日(金)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:渡辺哲也
「ひよっこ」89話。いよいよ「女」の話になってきた
イラスト/小西りえこ

89話はこんな話


みね子(有村架純)は島谷(竹内涼真)の大学で、学友たちに「恋人」と紹介してもらう。

「おれが好きなのは、谷田部みね子さんだよ」(島谷)


「恥ずかしくなかったですか」
「私みたいな人 つまりなんていうか 住む世界が違うっていうと大げさだけど」
「島谷さんみたいな人にはふさわしい女の子が」
・・・などと、島谷の友達を前に、みね子は、自分が、高卒で、食堂で働いていることに引け目を感じる。
だが、そんなみね子に、島谷は毅然と言う。

「俺みたいな人ってどういう人」
「金をもってるのは俺じゃないよ 親父だよ」
「俺はお金もちの大学生っていう名前の人間じゃない」
「行方不明になったお父さんのせいで東京に働きに来ている、可哀そうな女の子? 違うだろう、君は谷田部みね子だろう」
「おれが好きなのは、谷田部みね子さんだよ」
……と矢継ぎ早に素敵なことを言って、みね子を幸せな気持ちにさせる島谷。

彼の主張は、フィクションにおけるキャラクター論にもつながりそう。単純化したキャラ描写批判のようにも思えてしまう。ひいては、現実の世界における、人にレッテルを貼ることへの批判のようでもある。
島谷が、こういうことにこだわるのは、親を超えられないことへのコンプレックスの表れだろう。
高いところが苦手なのは、お父さん(高いところにいる人)が苦手というふうにも思えて面白い。

「幸せってこわいです」(みね子)


今のみね子は、島谷のコンプレックスはわからず、ただただすばらしくよくできた人とだけ思えている。
でも、みね子は、「なんだかこわいです。幸せってこわいです」と、本能的に何かを感じてしまう。
ひさしぶりに、「こわい」という言葉を使ったみね子の、不安を察するように、さっそく、お母さん美代子(木村佳乃)から手紙が来る。
すでに、恋人ができたという手紙を受け取っていて、その返事だ。
「自分の好きになった人を信じることが 一番大事な気持ちです。それは自分を信じるということだから」
と書く美代子。

これは、美代子が自分に言い聞かせていることでもある。
「自分に自信をもってね」というのも、7話で、夫・実(沢村一樹)のいる「東京には私なんかよりとてもきれいな人がたくさんいる」であろうことを美代子が心配していたことを思い出させる。

いいセリフが、その場をまとめるために唐突に出てきたいいセリフではなく、登場人物の体験や内面にもとづいているものなので、説得力がある。(脚本を書こうとしている人は見習って!)

「女」の話


「これは、私だけに来ました。女だけの秘密の話です」(美代子/木村佳乃)
「いいわねえ、女が笑っているのは」(富/白石加代子)

みね子が恋をしたことがきっかけなのか、がぜん、「女」がクローズアップされてきた。

だが、男は、「(島谷が)高いとこ苦手だったの〜」などと、あっと言う間に、みんなにしゃべっている女を好きでいられるものなのか、少々疑問である。
(木俣冬)
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