このほど、普通の材料でつくる究極の家カレー、「ファイナルカレー」の作り方を教えてくれるイベントがあるというので行ってきました。
家カレーが日本のカレー文化をつくった
水野仁輔さんは、「東京カリ~番長」の料理主任として千種類以上のカレーを出張調理・販売してきており、カレーに関する著書も多数あるカレーのスペシャリスト。現在は、AIR SPICE代表を務め、「カレースター」の肩書でも活躍しています。

「日本のカレー文化というのは、家カレーから形成されたんです。各家庭でおいしいカレーが作られるようになって、国民食として育っていった。そこが外食文化のラーメンと違うところです」と語る水野さん。
「日本中にカレー専門店は数千軒、それに対して世帯数は数千万。つまり、家カレーがおいしくなれば、それだけたくさんの人が喜んでくれるということになります」
おいしい家カレーを広めていくことへの並々ならぬ意欲が感じられます。そんな水野さんのお話を聞くために、川口市立映像・情報センター メディアセブンにはたくさんの人が集まりました。下は10代から上は70代まで男女比もほぼ半々と、文字通り老若男女で満席の大盛況となりました。
「日本にカレーが伝わったのはいつ頃?」など軽い話題からスタートしましたが、話が熱を帯びていくにつれ専門的な話題へ。「玉ねぎを炒めるとなぜ甘くなるのか?」「旨味は本当に閉じこめられる?」といったテーマで盛り上がります。

ファイナルの先にある本当のファイナル
そして、「ファイナルカレー」の正体が徐々に明らかになってきました。欧州の料理文化を吸収し日本で成熟していった、うまみとコクが特徴の「欧風カレー」。
そして、欧風カレーとインドカレーのいいところをミックスさせて、さらにその上にある究極のおいしさを実現したのが「ファイナルカレー」とのことです。

しかし、水野さんは言います。
「100人の人がいたら最高においしいカレーは100通り。全員が最高においしいと思うカレーは存在しないんです」
それではファイナルカレーにならないのでは?と思っていると、水野さんは続けてこのように教えてくれました。
「実は、ファイナルカレーのレシピには、カレーをおいしくするテクニックがすべて詰まっているんです。そのテクニックを使って、自分だけの本当のファイナルを見つけて欲しいんです」

ファイナルの先にあるファイナルへ。禅問答のようですが、これが多様な種類と味の方向性があり、国民的な広がりを見せる日本のカレー文化へのファイナルアンサー。ファイナルカレーの本当の意味がついに分かりました。
ファイナルカレーを作ってみよう
本当に家でもおいしいカレーが作れるのか、実際にファイナルカレーを作ってみました。
<注意>
詳しいレシピは、水野さんの著書『いちばんおいしい家カレーをつくる』をぜひご覧いただきたいので、ここではあえて簡単に紹介します。
まずは下ごしらえ。「欧風の象徴・牛」「インド伝統の鶏」に対して、ファイナルカレーは豚バラ肉を採用しています。豚肉は梅酒としょう油でマリネにし、野菜は混ぜて香味ジュースを作っておきます。

みじん切りの玉ねぎを炒めるところから調理本編スタート。強火でアメ色になるまで炒めていきます。写真はまだ途中の状態。ちょっと根気が要る作業ですがかなり濃い目の色になるまで炒めます。

ここにスパイス、香味ジュース、豚肉などを加えて、水気が無くなるまでさらに炒めていきます。


コンソメスープを注いで、じっくり弱火で煮込んでいきます。最後に少しだけカレールーを足したら、1~2分ほど加熱してできあがり。

ついにできましたファイナルカレー。カレールウを放り込むだけの普通のカレーと比べれば、若干手間がかかりましたが、漂ってくるスパイスの複雑な香りだけでもちょっと報われた気分になります。
さて、お味の方は、まずは豊かなスパイスの味が舌を刺激して、少し遅れて肉や溶け込んだ野菜の味わいがわき上がってきます。

市販のカレールウで作る家カレーのストレートな味に対して、さすがファイナルカレー。豊潤で深みのある味わいが重層的に詰まっています。家カレーでこのクオリティができるのは本当に幸せ。みなさんも作ってみてはいかがでしょうか。
(山根大地/イベニア)