クラミジア、淋病に、今も一定数の感染者が報告され続けているHIV、そして急増中の梅毒。このような性感染症(性病)については、誰もが一度は保健の授業で習ったことがあるはずだ。


だが、大半の人はその知識はうろ覚え。「もしかして……」と感じる症状が現れたときは、まずはスマホやパソコンで検索する人が大半だろう。

「僕も疑わしい症状が出たときは、やっぱりネットで検索をして、色んなサイトの情報を調べていました」と話すのは、ウェブサイト『性病検査NAVI』の運営者・サイトウさん。サイトウさんはクラミジア10回、咽頭クラミジア1回、淋病2回、ヘルペス1回、ケジラミ1回という恐るべき感染歴を持っており、その経験から性病検査の啓発サイトを立ち上げた……という異色の経歴の持ち主だ。
クラミジア感染11回 性病にかかりすぎて性病検査啓発サイトを始めた男
現在は中国在住のサイトウさん(34歳)。2015年の6月にウェブサイト『性病検査NAVI』を立ち上げた。

「本当に情けないことですが、僕は何度か性感染症を経験する中で、『クラミジアや淋菌などの性感染症は想像以上に簡単に感染する』『こういう行為ではこの性感染症のリスクがある』ということが分かってきました。また、性感染症に対する正しい知識を持っている人も少ないことに気づいたので、自分でサイトを立ち上げることにしたんです」

コンドームを着用してたのにクラミジアに感染したことも


そこまで多く性感染症にかかってしまったのは、サイトウさんがいわゆる風俗遊びが好きだから。結婚をしたことや、「一時の快楽のために性病予防を行わないのは男性のエゴではないか」と気づいたことにより、28歳の頃からはコンドーム着用を徹底しているが、それでもクラミジアに感染したことも。その体験を綴った『【悲報】性病サイトの管理人がクラミジアに感染しましたのでご報告』という記事はネット上でも大きな話題となった。
クラミジア感染11回 性病にかかりすぎて性病検査啓発サイトを始めた男
『性病検査NAVI』のトップページ。「咽頭クラミジア」などの項目は女性にも多く見られているそうだ。

「ちゃんとコンドームを着用して、粘膜接触を徹底的に避けているつもりでも、性感染症に感染してしまうことはあるんです。ちなみに海外の風俗店では、アジアでもヨーロッパでも性感染症に対する意識が高く、オーラルでのプレイ時もコンドームの使用率が高い。その点は日本は危機意識が薄いと感じますね」


現在は郵送で簡易検査ができる性病検査キットも複数アリ


『性病検査NAVI』では、「咽頭クラミジア」という喉の性感染症が存在し、ディープキス等を介して男性の感染リスクもあること、現在は複数の性病検査キットがネットで購入可能なことなど、一般の人はあまり知らない性感染症の情報が数多く掲載されている。その情報の大半が、サイトウさんの実体験に基づいているのもこのサイトの特徴だ。なお自身も、以前は性感染症の検査に行くのが怖かったそうだ。

「特にHIVなどの場合は、すぐに目に見えた症状が出るわけではないので、『もし検査で陽性だと分かったら……』と考えると恐ろしかった。
それで1~2年ほど検査を受けずにウダウダしている時期もありました。僕は彼女ができたタイミングで『万が一でも何かを移すことがあってはいけない』と検査を受けましたが、今はブライダルチェックといって、結婚前に性病検査を受ける人も増えています。大事なパートナーのため、過去を精算するため、安心を買うためにも検査は受けてみるべきだと思います」
クラミジア感染11回 性病にかかりすぎて性病検査啓発サイトを始めた男
サイトウさんが実際に利用した性病検査キット。郵送で性感染症の有無を簡易的にチェック可能で、Amazon等でも数千円~1万円代で複数のものが現在は販売されている。



風俗店で遊ぶときも「コンドームを使おう」と男性から話すべき


……と性病検査の伝道師のように語っているサイトウさんだが、いまだに風俗遊びは継続中。ちょっとした不幸から感染歴を積み重ねてしまったこともある。

「海外で風俗に行ったときに、いきなりコンドームなしでオーラルセックスをされてしまったことがあって。とっさに『No!!』と言って止めてもらいましたが、たった2秒ほどの粘膜接触でクラミジアに感染してしまい衝撃でした。その経験以降は、服を脱ぐ前に『ちゃんとコンドームを使って下さい!』とお願いするようになりましたね(笑)」

なお現在ウェブサイトには1日約1万人の訪問者がおり、検索されたキーワードを調べると、やはり「この症状はもしや……」という不安からサイトに辿り着く人が多いそうだ。

「『この症状だったら性病ではないので安心してください』と書くことはできず、『こういう感染症の可能性がある』と危機意識を煽るところで終わってしまうのはもどかしくはあります。ただ、その危機意識が、検査キットの購入や、保健所や病院に検査に行く行動につながっていれば嬉しいですね。検査に多少お金はかかりますけど、それで感染していないことが分かって安心でき、『次から気をつけよう』と思えれば、それは大きな成長だと思います」

今後は感染症関連の学術論文のリサーチ、性病検査業者への取材等を重ねて、サイトの信頼性を高めていきたいというサイトウさん。どんな情報も「とりあえずネットで検索」が当たり前になっている今の時代。『性病検査NAVI』のようなサイトは、不安から検索を行う人々と、検査キットや医療機関をつなげる大事な架け橋になっている。

(古澤誠一郎)

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