9月1日からは電子書籍配信される。
中に書かれている浪費話は明るいものが多い。借金話はない。
お金めっちゃ使ったよー報告は、推しとの蜜月(一方的だけど)の、のろけ話だ。
形のないものにお金を使う楽しみ
若手俳優に熱を入れる女性。たまたま「プレゼントBOX(イベントとかで設置されている)」に入れたマフラーを、その俳優がつけてブログに写真をアップして以来、彼をコーディネートするかのごとく高いプレゼントをするように。「美少年を愛する老いたパトロン」のような気持ちとのこと。
乃木坂46に浪費する女性は、握手会にお金をかける。推しが自分のために時間をくれるから、というのもあるが、彼女は推しの子の夢を応援するために握手会にお金を注ぐ。その子の未来に、幸せの補助のために課金する、もっといえば「ほぼ母親」のような気持ち。
「何かが物が欲しい」から浪費しているだけではない。
お金を好きな相手・キャラ・ジャンルのために使うこと自体が楽しいのだ。
「推し」がいるから生きていける
「ホストクラブは現実逃避できる空間であり、私にとっては大好きな人に会える場所。恋愛感情なのかはわからないが、彼のことが好きという事実には変わりない。」「バイトでつらいとき、学校がだるいとき、彼からの連絡や彼と撮った写真、今までの思い出がわたしのお守りとなっている。」
ホストクラブに通う彼女は、担当を支えるためにお金をつぎこむ、というムチャはしていない。
楽しい時間をすごしてくれた感謝の気持ちとして、彼に還元する、という考え方。
恋愛や依存というより、お布施のようだ。
この本ではお金を使って好きなものを全力で愛する人たちは、楽しい人生を送っていると、伝えている。
ほっといても無くなるお金。好きなものを見つけて全力で意識して浪費し、お金をさらに稼ぐほうが人生楽しい。
ぶっちゃけ、使った金額が「正当な代価」と思っている人は、少ないだろう。
けれども「全くの無駄だった」とも、考えていない。
時間が経てば変わるもの
地下声優で浪費していた女性は、一回の朗読劇参加のためにトータル10万円、チェキ撮影のためBD8000円を3ループなど、すごい勢いで追いかけていた。
ところが、ちょっとしたきっかけで虚しさを感じ、現場に通うのをやめる。
「自分はお金を払って何を得たかったのだろう。形のないものにこそお金を払うのが楽しかったのに、その形のなさに、虚しさしか感じなくなった」
浪費は華やかで楽しい。一方、時がすぎると儚いブルース感も漂う。
ここまで極端に折れなくても、浪費生活から静かに足を洗った人は多い。
体力が持たないと気づいたり。結婚や仕事の関係で変えざるをえなくなったり。推しが辞めてしまったり。
もったいなかったと思うのか、今の糧となったと考えるのか。浪費に対しての姿勢で、意見が変わってくる部分だ。
時間をかけて、趣味のためにどうお金を使うか、冷静に模索する人もいる。
「触ってほしい一心で浪費する女」の項目では、優しく触られたいが一心でマッサージ店に月10万つかっていた女性の話が出ている。
お金を注ぐ推しはそこにはいない。生活を維持しながら、安くて最善の「優しく触ってくれる場所」を探す。
にしてもこれは浪費なんだろうか?
日常的に心を満たすための必要経費のように見えるが、ここは本人独自の考え方があるので、是非読んでみてほしい。浪費哲学のようなものが見えてくる。
男性版「浪費図鑑」はどうなるのか?
もしこの形式の「浪費」を、男性版で作ったらどうなるのだろう?
アニメやアイドルファンは、あんまり変わらないかも。
聖地巡礼だと「ユーリ!!!on ICE」にはまってロシア遠征する女性と、「ガルパン」の戦車を見るために世界をまわる男性の心理は、多分同じ。
異なるのは、おそらく3つ。
「コレクション」への執念は、男性の方が強い傾向にある。なんでも鑑定団に出てくる骨董おじさんみたいな感じ。
また、男性は性的要素を含んだサービスに対して、財布がゆるみやすい。
そして、アイドルにしろ俳優にしろ、女性は現地に行く際、自分の服や化粧や髪のセットにお金がかかる。
改めて表紙を見る。
彼女たちは好きなことにお金を使って、とても楽しそうだ。
同時に、洋服、化粧、美容院と、自分の容姿を整えている。本文でも容姿を「平均基準を保つ」話は出て来る。
生活費、身だしなみ、そして推しにお金を注ぐために、浪費女子たちは働き、経済を回す。
(たまごまご)