連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第23週「乙女たちに花束を」第134回 9月5日(火)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出: 堀内裕介 松木健祐
「ひよっこ」134話。みね子は、世津子を助けに向かう。
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」134話はこんな話


みね子(有村架純)は、窮地に追い込まれているらしい世津子(菅野美穂)を助けようと立ち上がる。

かわいい昔の由香


子供の頃の由香(島崎遥香)は、すずふり亭のお手伝いをしていた。
その回想シーンがかわいい。
「ありがとうございませんでした」と言葉がごっちゃになってしまうところのかわいさといったらなかった。
当時の彼女は、「わあ美味しそう」と、お父さん省吾(佐々木蔵之介)のつくった料理に目を輝かせていた。
久しぶりに、お店を手伝った由香も、思わず「わあ美味しそう」と口に出す。
照れくさい由香。嬉しそうな省吾。
なんかいい感じだった。
でも、この日は「家族のことはまた今度」と、すぐに融解しない。
富(白石加代子)の付き添いで、葬儀と蕎麦屋に行って帰ってきた鈴子(宮本信子)も、すぐに距離を縮めようとするが、止められ、「ありがとうございました」「ご苦労様」と少々硬い調子で頭を下げる。
宮本信子が、感情を押し殺すと不機嫌ぽく見えてしまうという、どうにも不自然にならざるを得ない人間心理を明快に演じていて、すばらしい。

あとで、みねこがぽろっと、柏木堂にいることを漏らしてしまい、省吾と鈴子は、「あの子、柏木堂まで戻ってきてくれたんだねえ」としんみり。
わかりにくくて、面倒くさいのは、牧野家の血らしく、由香も、いちいち言動が他人にわかりにくい(「へそまがり」のくだりとか)。うまく表現できない、一度は離れてしまいながら、元に戻りたい家族のもどかしい心の距離感を、物理的な距離で表していくところが見事だ。


イチコに「またね」と笑いかける、島崎遥香の素直な表情(これが由香の本当の気持ちなのだろう)も良かった。

おかわりした富さんは大丈夫


葬儀の後、蕎麦屋に寄った富を、鈴子は「大丈夫、お蕎麦をおかわりしてたから」と言う。それを受けて、省吾は「そうおかわりしてた」と反芻する。
この「おかわり」が大事。
「泣きながらご飯食べたことのある人は生きていけます」(坂元裕二「カルテット」)ではないが、おかわりするってことは生命力があるってことの現れだ。
そして、富は、翌日(?)、鮮やかなワンピースに着替えて、共同炊事場に登場する。
そうめんの準備をしていた、みね子たちは、美空ひばりの「真っ赤な太陽」を合唱する。
この歌は、情熱的な恋の歌だけれど、「いつかは沈む 太陽だから」という歌詞があって、「ゴンドラの歌」の「命短し、恋せよ乙女」とも同じ、刹那の歌なのだ。

みね子、立つ


富の姿を見たみね子は、「ひとってこんなにも変われるんですね」と感激し、世津子を助け出そうと考え、彼女のマンションに向かう。
雑誌によると「育ての親(叔父叔母らしい)との骨肉の争い」があったとされる世津子。本名は「節子」だという。省吾の亡き妻も「節子」。もともと、同じSETSUKO がふたり出て来ることがトゥーマッチなので、
何かありそうに思うが、これもミスリードの仕掛けなのか。



この日の「あさイチ」に、白石加代子が、劇中衣裳(ワンピ)で登場(ふくらはぎがきれい!)。
もうひとりのゲストは、宗男(峯田和伸)で、「ひよっこ」ファンは大喜びだった。
ドラマの中で、最初、宗男の外国かぶれの格好が理解できなかった富が、ちょうど洋装になったところで、宗男と番組に一緒に出るという流れは、なんだかいい感じだ。
(木俣冬)
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