外国人タレントは本名で芸能活動すべき? “勘違い”でバッシング続く水原希子さん
『サントリーザ・プレミアム・モルツ』公式サイトより

出演CMにヘイトが殺到している女優でモデルの水原希子さんが、今度は「日本人ではないのに日本人のような芸名を使っている」として批判が寄せられている。とはいえ、活動する国に合わせた名義で活動するのは、世界中の芸能界で行われていることなのだが……。


都合よく立場を使い分けている?


水原さんをCMキャラクターに起用したサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」の公式Twitterアカウントには、アメリカ人の父親を持ち、在日韓国人の母親を持つ水原さんに対する、聞くに堪えないヘイト発言が数多く寄せられている。

その騒ぎを受けてか、水原さんは9月15日に「LOVE & PEACE」としてメッセージを投稿。「みんな地球人である事には変わりません」「一日も早く、この世の中の人種や性別などへの偏見がなくなってほしい」という自身の考えをつづった。

当然、水原さんにヘイトをぶつける人々も批判されている。しかし、彼らの言い分は、「水原さんは言動に問題があるので叩かれるのは仕方ない」というもの。どうやら水原さんが日本人的な芸名を使って活動しているのを、日本の視聴者層をだます卑怯な行為としてとらえているらしい。彼らは、水原さんに対して、都合よく日本人と外国人の立場を使い分けているような印象を抱いているようだ。


「本名で活動する方が素敵」?


有名人の中にも、水原さんは本名で活動すべきとの考えを持っている人々がいる。実業家で作家の山本一郎さんは、「水原希子が『人種や差別などの偏見がなくなってほしい』と語るのはごもっともだし、その通りなんだろうけど、ではなんで父親がアメリカ人、母親が韓国人で神戸に住んでいただけなのに日本人の芸名で仕事をしているんだろう。偏見どころか、日本人を名乗ったほうが日本では有利だと思ったからじゃ?」と水原さんが本名で活動しないことに疑問を投げかけている。

また、エジプト出身タレントのフィフィさんも、「頑張って!」とあくまで水原さんにエールを送る立場ではあるが、「偏見がなくなって欲しいと願うなら、彼女の場合は分からないけど、例えば生まれ持った名前で活動する方が素敵だと思う。それを躊躇することこそ偏見って思われちゃうからね」と本名で活動することを勧めている。

差別ある中で出自をオープンにする難しさ


しかし、それらの意見に真っ向から反論しているのが、元在日韓国人である映画評論家の町山智浩さんだ。町山さんは「おれは18歳で帰化するまでずっと韓国名だったけど、高校まで学校に韓国・朝鮮籍でも日本名の友達が何人もいた。おれは知っていたけど黙っていた。
彼らなりの理由があるから。そんな子の一人にみんなの前で韓国人なら日本名を名乗るなと叫ぶ奴を想像してみてほしい。それが山本一郎のやったことさ」と、差別がある環境の中で出自をオープンにする難しさを説いている。

また他にもネット上では、芸能人が元々の人種以外の芸名を名乗ることは別に珍しくないという指摘が多く上がっている。ウディ・アレンもボブ・ディランもユダヤ系だが、水原さんを非難する人々は、彼らも卑怯と呼ぶのだろうか?

また、俳優の千葉真一さんは、ハリウッドでは“サニー・チバ”の名前で知られている。こちらは差別を避けるというよりも、活動する国の人々に親しみやすく感じてもらうことが目的だろう。“外国人”という属性にばかり注目されないように、逆に“外国人”として注目してもらえるように、ハーフのタレントが日本風の名前を名乗ったり、逆に外国風の名前を名乗ったりする例だって少なくない。それらは「視聴者をだましている」というより、単なるイメージ戦略でしかない。


「日本人じゃないから許して」発言はしていない


「立場を都合よく使い分けている」と批判する人々の中には、水原さんは過去に中国で炎上した際、「私は日本人じゃないから許してほしい」と釈明したとの主張もある。しかし、これはまったくの誤解だ。水原さんは昨夏、現代美術家のアイ・ウェイウェイによる中国・天安門に向けて中指を立てた写真作品にInstagramで「いいね!」をつけたため、多くの中国人から批判される事態となった。その際、水原さんは謝罪動画をアップして、自身の出自を説明した上で、「自分はいろいろな文化的背景を持っていることで、いろいろな国の人と仲良くなれた。
誰も攻撃するつもりがなく、中国の人を傷つけるつもりもなかった」と語っていた。

自身が差別感情の持ち主ではないことをバックグラウンドにも触れて説明する流れだったのだが、なぜかこれが今、「水原希子は中国で炎上した際に『日本人じゃないから許して』と釈明した」として拡散されている。発言の要約にしても大雑把すぎるのだが、一次ソースを確認しない人々は、ネット上に流布するデマを事実と受け止めてしまっている。

要するに水原さんが批判されるのは「自業自得」とされているものの、実際はヘイターたちの勘違いでしかなのだ。現在「日本人じゃないから許して」発言はねつ造だという指摘が続々と上がっているが、それによってバッシングは止むのか、それともまた新たな“批判されても仕方ない理由”が持ち出されるのか――。

(HEW)
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