傑作の呼び声が高いアニメ「カードキャプターさくら」が復活した。漫画は2016年に「クリアカード編」がスタートし、アニメ版も2018年1月よりNHK-BSプレミアムにて放送開始。
それに先立ち、地上波のNHK-Eテレにて初期シリーズから選出した「セレクション」が2017年9月より放送されている。

あの頃さくらを見ていた子供たちも、今や20~30代。社会人として忙しい日々を送る人も多いはずだ。でも大丈夫。新作アニメ「クリアカード編」は、今年4月からEテレでも放送が開始される。Blu-ray&DVDも5月に発売予定だ。
うろ覚えの人も、はじめましての人も、4月の地上波放送からついていけるように「カードキャプターさくら」の基本情報と魅力を振り返る。


1990年代を代表する魔法少女


小学4年生の木之本桜(きのもと・さくら)は、考古学者の父・藤隆(ふじたか)と高校生の兄・桃也(とうや)との3人暮らし。ある日さくらは、父の書庫で不思議な本を発見。それはこの世に災いをもたらす「クロウカード」を収めた本だったが、何も知らないさくらはカードを解き放ってしまう。
このままでは街が大変なことになる。というわけで、封印の獣ケルベロスことケロちゃんの指示により、さくらはカードキャプターとしてクロウカードを回収することになるのだった。

こうして始まる魔法と恋と友情の物語が「カードキャプターさくら」だ。


CLAMP作の漫画は「月刊なかよし」にて、1996年6月号から連載開始。すぐに小さなお友達はもちろん、大きなお友達の心をつかみ大ヒットとなった。

1998年にアニメ版がNHKで放送開始されると、これも大ヒット。そして連載開始20周年となる2016年に16年ぶりとなる新編が始まり、大反響を呼んでいる。


変身しない魔法少女


「カードキャプターさくら」のストーリーは、一見普通の女の子が魔法で事件を解決するという、魔法少女もののフォーマットに当てはまる。「魔法使いサリー」「ひみつのアッコちゃん」から脈々と続くジャンルだ。魔法のステッキや可愛いマスコットも登場。さらに「美少女戦士セーラームーン」に始まり「プリキュア」シリーズへと受け継がれる「戦う魔法少女」の要素も含んでいる。

そんな「ザ・魔法少女」といえる本作には、斬新な特徴があった。それは“変身しない”魔法少女であることだ。

さくらはカードを封印するために魔法の力を操る。その時バトルスーツを装着したり、別の人物に変身したりする必要はなかった。つまり、光に包まれクルクルまわって変身!という、定番の変身シーンがないのだ。


「さくらっていろんな格好してたよね」と首をかしげる人もいるだろう。そう、さくらは毎回違う衣装を身につけていた。しかしそれは、さくらの親友・大道寺知代(だいどうじ・ともよ)のお手製。変身するのでなく着替えていたのだ。

知世は、さくらのカードキャプター活動に積極的に協力、毎回新しい衣装を用意していた。そしてさくらファンである知世は、ビデオカメラでさくらの活躍を記録するのだった。
「着替える魔法少女」という、お約束を逆手に取った設定は、コミカルであると同時にファンの目を楽しませる名物シーンとなった。これが王道でありながら斬新な魔法少女「カードキャプターさくら」の魅力の1つとなったのだ。


自然に描かれた、さまざまな愛の形


劇中ではさくらを中心にいくつかの恋が描かれる。そこに浮かび上がるのは多様な愛の形だった。さくらの初恋の相手は、兄の親友である男子高校生・雪兎(ゆきと)。物静かで優しい雪兎への憧れが初々しく描かれていた。

しかし、あるキャラクターがさくらの恋模様をかき回す。
さくらのライバルとなるカードキャプターの少年・小狼(シャオラン)が作品途中から登場するのだが、彼はなんと同性の雪兎に一目惚れするのだ。2人は恋と魔法の2つの面で競うことになる。
少年が少年に恋をするという驚きの展開だが、ことさら特殊なこととしては描かれない。また雪兎をめぐっては、シリーズ後半に兄との特別な関係も描かれることになる。
「カードキャプターさくら」新作が放送中 変身しない魔法少女が描くさまざまな愛の形
画像出典:Amazon.co.jp「カードキャプターさくら Blu-ray BOX

一方、知世のさくらへの愛着と献身は、どこか友達の領域を超えている。恋にも似ているが、それを通り越した無償の愛といえるものだ。しかし、ただ犠牲的なだけではない。知世は映像を残したいという欲求を満たしているし、2人は対等な関係であった。

この他にも教師と生徒など、現実の社会では批判されかねない恋も描かれた。子供の頃、ドキドキしながら見た人もいるだろう。大人になってから見てもいろんな意味でドキドキする展開だ。

しかし、性別や年齢の垣根を超えた恋も扇情的には描かれない。
恋の楽しさや切なさ、愛の美しさは描かれるが、偏った目線ではない。日常の一部として、さまざまな愛の形が描かれる。このさりげなさも本作の特徴だ。


しっかり子供向けに作られたからこそ、全世代に愛された


「セーラームーン」以降、魔法少女ものは男性ファンからも人気を集めるようになる。ピュアで可愛らしいさくらも、いわゆる大きなお友達の心をキャッチした。

しかし「さくら」がメガヒット作品となった要因はそれだけではない。あくまでも本来のターゲットである小学生児童に向けて、作品の土台が作られたところにポイントがある。ささやかな日常の積み重ねを、きちんと子供の目線で描いていたのだ。

さくらが感嘆詞として発する「はにゃ~ん」は、誰しもが素直に愛せる可愛らしさだ。この作品は母親世代の心もつかんでいたという。また魔法少女ものを見るのは女の子だけではない。同年代の男の子にも一定の人気があった。

誰もが共感と憧れを抱けるバランスの取れた作品だからこそ、幅広い世代に愛されたのだ。


女の子も男の子も、大人になったあなたにも


話題を集めている新作ではさくらは中学生になった。かつての子供たちは時の流れに愕然とするかもしれない。アニメキャラは年をとらなくてズルいと思うかもしれない。
しかし見始めればすぐに、特有のふんわり優しい空気に包まれるだろう。
さくらは、大人になったあなたの心を癒やしてくれるはずだ。
(いとこ)
編集部おすすめ