見た後で「ひっさしぶりに韓国の戦争アクションっぽいものを見たな〜〜!」と嬉しい気分になれる。そんな濃〜い味付けを堪能できる作品が『オペレーション・クロマイト』である。


タイトルにもなっている「クロマイト作戦」は、朝鮮戦争真っ最中の1950年9月15日に決行された仁川上陸作戦の作戦名だ。
「オペレーションクロマイト」の熱さと濃さとベタさ加減、これぞ韓国の戦争映画

戦争映画っていうより、スパイ映画です


朝鮮戦争は名前の通り朝鮮半島を戦場にして戦われた戦争だが、なんせ朝鮮半島というのはそう広くない。なので、1950年6月25日に不意を突いて南下した北朝鮮軍は猛烈な勢いで進撃を続け、韓国軍および米軍を中心とした国連軍を半島南東部の狭いエリアまで追い詰めていた。一方仁川は朝鮮半島の西側、ちょうど真ん中あたりにある港湾都市で、ソウルにほど近い。マッカーサーはこの仁川に大軍を上陸させ、さらに南東部の自軍にもタイミングを合わせて反撃させることで北朝鮮軍を挟み撃ちにし、一気に戦況を巻き返すことを狙ったのだった。

前置きが長くなっちゃったけど、映画『オペレーション・クロマイト』は、正確にはこの仁川上陸作戦の映画ではない。この作戦には主力部隊が上陸する前に情報収集や地元住民への工作、現地の地形の調査などを遂行した韓国軍兵士による諜報部隊が存在しており、映画の元になっているのはこのスパイたちの方だ。


主人公はマッカーサーの密命を受け、北朝鮮軍の将校とその配下の兵士として仁川の守備部隊に潜入したチャン・ハクス大尉と仲間達。彼らの目的は仁川港周辺の機雷配置図を入手することだった。北朝鮮軍の仁川守備部隊の責任者であるリム・ゲジンに接触し、仁川防衛部隊の作戦計画を探るチャンらだが、最高機密である機雷配置図を持ち出す作戦は失敗。リムの部下である将校リュ・ジャンチュンを拉致する作戦に切り替える。韓国側への協力者など多くの犠牲を払いつつ、リュの拉致に成功する諜報部隊。しかし彼らは、上陸作戦本番に備えてさらに過酷な任務を言い渡される。


実際には本国のいうことを全然聞かないハチャメチャなおじさんだったマッカーサーがやたら志の高い名将軍みたいに描かれていたり、韓国側スパイ達が恣意的に有利な情報ばかり報告していたところはカットされていたりと、いろいろ「?」となる部分もある。だけどまあ、なんせ朝鮮戦争はまだ終わっていないわけで、そんな戦争の映画を当事国が作ったら多少はまあそういうこともあるわな、という程度のラインには収まっている。

プロパガンダ放送が鳴り響く占領下の仁川の風景や国連軍の艦艇で埋め尽くされた東京湾など、軍事オタク的に面白い映像もちょいちょい挟まっているので、そのあたりも見所のひとつ。そしてさらに大きなポイントが、『オペレーション・クロマイト』の盛り上げ方のベッタベタ感である。

"ベタな盛り上げ"のありがたみを思い知れ


スパイたちはチームで仁川に乗り込むのだが、重要な情報を強奪しようとしてどんどん死ぬ。単に撃たれて死ぬだけならまだしも、見せしめに処刑されたり高いところから落ちたり、もう大変である。
そしてそれらのシーンではいちいちエモい音楽が鳴ったりスローモーションになったりして、「どうですかお客さん!」と盛り上がるのだ!

人が死ぬシーンばかりではない。仁川に住む家族を作戦中のトラックに呼び寄せるシーンでは、なんとスパイの奥さんが赤ちゃんをおぶっているのである。「おれに似て男前だ」「おれにも抱かせてくれ」とかいいながら赤ちゃんをあやすスパイ達! そして後ろに流れるエモい音楽! さらにチャン隊長も自分の母親に会いに行くが作戦中でもあり、どうしても声をかけることができずにそっとその場を立ち去ったりするのである! やっぱり後ろに流れるエモい音楽!!

という感じでこの映画は終始、最近の戦争アクション映画のトレンドである「サラッと実録風に、煽りすぎないようにリアルめに撮る」という路線の逆を行く。まるで『博士と助手 〜細かすぎて伝わらないモノマネ選手権〜』でみょーちゃんがやってた「韓国の軍隊」シリーズそのままの熱さである。いやまあ、韓国の軍隊の映画なんで、似てるのは当たり前なんですけども。

こういう内容なので、『プライベート・ライアン』みたいなすごい上陸作戦の映像が見られるぞ!と思って見にいくと肩透かしを食った気分になるかもしれない。
しかし、今時珍しいクドめな味付けの戦争映画がそれはそれで楽しいのもまた事実。やっぱりエモい演出はド正面から、照れも迷いもなくやってほしい。そんな意味でも、『オペレーション・クロマイト』は今時の戦争映画らしからぬ熱さが楽しめる作品なのだ。
(「しげる)